表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
武器召喚士  作者: どこぞの委員長
第一章~ファイント~
29/56

オブサーバーの決意


どうも、どこぞの委員長です!


前回はファイント暴走で終わりました。


その続きです、どうぞ!


  レベル測定不能ファイント、壊された安全装置、止まらない暴走、この絶望的な状況を打破する手段はあるのか?たとえあったとしても、そう簡単に見つかる物じゃないだろう。ちらりと隣のオブサーバーを見ると、何やら考え込んでいる様子だ。ただ、この状況で考え込むのは命にかかわる。俺は何かを思案するオブサーバーの肩をつかんだ。

「おい、何してる!あいつを止められないなら、一旦ここから離脱するしか無いだろう!」

 俺の言葉を聞いてもオブサーバーは反応を返さない。くそっ、こいつは何がしたいんだ。もう目の前まで迫ってきているファイントを見ながら俺がそんなことを思った時、オブサーバーがポツリと呟いた。

「なあ息子、もしアレを止められる方法があると言ったらどうする」

「はぁ、暴走したって言ったろ!止めれねえんじゃないのか!」

 俺の解答にオブサーバーは少し躊躇した後、かぶりを振った。おいおいマジかよ、さっき暴走は倒すまで止めれねえって言ったとこだぞ。あんなレベルも分かんねえファイントを倒す方法を考え付いたのか?いや、作り出した本人が強さを一番分かってるはずだ。だとすれば何を・・・まさか!

「おいお前、まさかと思うがアレをやるつもりじゃねえだろうな!そんなこと俺が許さねえぞ!」

「息子、よく聞け。あいつを倒すにはもうこれしか方法が・・・」

「馬鹿言ってんじゃねえよ!」

 俺は敵ファイントが近づいてきている事もお構いなしで、オブサーバーを思いっきりぶん殴った。それは、こいつが命を投げ出すつもりだから。安全装置は壊されたと言っていた。だが、あのファイントを吹き飛ばすつもりで作成した爆発物がそう簡単に壊されるとは考えにくい。おそらく、壊されたのは安全装置とリモコンを繋ぐ無線装置のようなものなのだろう。つまり、爆発物自体は壊されていない。それなら、爆発物を直接爆破(・・・・)すればいいのだ。しかし、簡単に触れられる位置にはついていないのも確か。もしそんなところに付ければ、俺が戦闘しているときに爆破してファイントを倒してしまうかもしれないからな。とすると、おそらくファイントの内部にあるはずの爆発物は、ファイントの中に入る、もしくは爆発物の位置を正確に測って爆発するように攻撃を仕掛けるしかない。後者は、たとえ爆発物の位置が正確に分かっていても困難な作戦だ。なら、前者を取るしかない。前者の考えで一番マズいのは、誰かが内部に侵入しなければならない事だ。そしておそらくオブサーバーは、自分がその役を買って出るつもりなのだろう。爆弾の位置を把握し、一番速い速度で動ける自分が・・・

「お前がやろうとしてることは自殺行為だ!分かってんのか!」

「ああ、分かってる・・・でもな息子、誰かがやらなきゃいけない。そして、アレを作った俺が一番適任だろ?」

 俺に殴られても、オブサーバーは意志を変えない。でも、それでも、俺はお前に死んでほしくないんだ。確かに初めて会った時、お前はファイントを生成し、俺の父さんを殺すために無関係な人たちまで殺す、とてつもない悪人だと思っていた。でもな、今は一緒に戦って助け合った戦友なんだよ。俺が自分自身を失った時だって、助けるために必死になってくれた。その結果できたのがあのファイントだ。なら、それは・・・

「オブサーバー、爆発物の位置を教えろ・・・」

 俺が呟いた言葉に、オブサーバーの顔色が変わった。おそらく俺の表情から、何をするのか察したのだろう。そう、俺はオブサーバーがやろうとしていた事をするつもりなのだ。ファイントの内部に侵入し、爆発物を再起動する。おそらく爆発や爆風で俺は死ぬだろう。だが、そんなことはどうだっていい。俺は仲間が死ぬのはもう御免なんだ。

「あれは、俺のせいで出来た化物だ。なら、俺が行くのが適任じゃねえか?」

 俺は微笑みながら、さっきのオブサーバーの発言と似たようなことを返す。オブサーバーは複雑な表情を見せた後に小さく、しかし確実に頷いた。俺はオブサーバーに手を差し伸べ、立ち上がるのを手伝う。さっきまでこちらへ近づいてきていたファイントは、俺とオブサーバーに何かあったと気付いた仲間たちが囮となり、俺たちから遠ざけてくれていた。だが、それも長くは続かないだろう。早急に事を済ませる必要があるな。

「オブサーバー、爆発物の位置は何処だ?」

「体の中央、ちょうど人間でいう心臓のあたりだ。だが、お前は行かせねえ!」

 突然、心臓の位置と高さを確認するためファイントの方を向いていた俺の体が、金属のようなものに殴られたような衝撃と共に後方へ吹き飛ばされた。地面に倒れこんだ俺は、チカチカする目を開いて状況を確認する。何に殴られたのか、その答えはすぐに分かった。俺の目が、刀を峰打ちの要領で降りぬいた姿のオブサーバーを捉えたからだ。

「おい・・・お前・・・何のつもりだ・・・」

 立ち上がろうとするが、さっきの衝撃のせいで立ち上がることのできない。オブサーバーはそんな俺を見下ろし、そして少し微笑んだ。

「すまねえな、そこでじっとしててくれ。アレを潰すのは俺の仕事だ」

「行かせねえ・・・何としてでも・・・うっ・・・」

 今度はオブサーバーの蹴りが鳩尾に入り、俺はなおさら立てなくなる。そして、オブサーバーは止めとばかりに大量の武器を召喚すると、俺が身動きがとれないよう、俺の周囲にそれを投下した。俺の動きを封じたオブサーバーは、さらに一本の剣を召喚し、俺の仲間全員に聞こえる声で叫んだ。

「おい、俺を信じたお前らが馬鹿だったな!今からこいつを殺してやろうと思うんだが、見ていくか?」

 オブサーバーの声は本気だった。だが、俺には分かる。おそらくオブサーバーがしている行為、それは俺の仲間たちをファイントから遠ざけること。爆発に巻き込まれないようにしているのだ。お前は大した奴だよ、たとえ自分が嫌われようと他人の命を優先する。人の命なんて自分の目的のためならいくら失われても構わない、そんなことを思ってた奴とは思えねえ・・・

「お前とはもっと違う形で出会いたかったな」

「それをは言わない約束だぜ、悠樹」

「---ッ!」

 オブサーバーの奴、今なんて言った。悠樹、そう言ったのか?俺のことをずっと、殺すべき対象の息子から取ったであろう呼び名で呼んできたあいつが?それは一体どういう・・・フリーズしている俺に軽く微笑みかけ、オブサーバーは前に向き直った。その顔は既に決意の固まった顔。やるつもりなのだ、ファイント内部に眠る爆発物の直接爆破というミッションを。ファイントを引き連れながらも俺を助けるために走ってくる仲間たち。おい、ファイント連れてきてどうすんだよ・・・あいつらも、俺のことになると大抵後先考えねえよな・・・一体どういうことなのか・・・

「お兄ちゃん!」

「先輩を離しなさい!」

「あなたを一度でも仲間だと思った私が馬鹿でしたわ!」

「裏切りは悪いことです!」

「悠樹を殺させはしない!」

「弟に手を出さないでもらえるかしら!」

「グオァァァァァァァ!」

 最後のは抜くとして、三者三様ならぬ六者六様で俺たちのもとへと走って来る仲間たちは、完全にオブサーバーの思い通りだ。お前ら、本当に考えてから行動しろって・・・

「本当にいくのか?」

「ああ、短い間だったけど楽しかったぜ!」

 再度意志を確認した俺に、オブサーバーは行動を開始する瞬間を見定めながら返答してくる。俺はこの状況に置かれていても、まだオブサーバーを止めに行くことを考えていた。だが、止めたとしてもどうやってアレを破壊する?俺は爆発物の位置も知らなければ、アレのそれ以外の倒し方なんて想像もつかないんだぞ?頭をよぎったそんな考えを、俺は頭を振って消し去った。そんなことはどうだっていいんだ。そう、そんなことは後で思いつけばいい。最優先すべきは、オブサーバーを止めることだ。

「じゃあな悠樹、来世があったらまた会おうぜ!」

 そんな言葉と共に、オブサーバーは武器を掴んで飛んでいった。すれ違いざまにファイントへ攻撃を浴びせ、自分に注意をむけるのも忘れていない。本当に行っちまいやがった・・・と、そんなことを言ってる場合じゃねえ。

「コレ、全部抜いてくれねえか」

 あれこれと質問したそうな仲間たちが質問してくるより先に、俺の要望を伝える。刀で殴られた痛みも蹴られた痛みも、既に引いてきている。武器を抜いてもらえさえすれば動けるはずだ。質問を後回しにして武器を抜く作業をしてくれる仲間たち。それを眺めながら、俺は一つのオブサーバー救出作戦を思いついていた。ただ、それを行うには二つの難題が残っている。一つは、直接爆破を行う際に起動から爆発までに数秒のラグがあること。もう一つは、オブサーバーが爆発物を爆破する前にファイントに近づけるだけ近づいている事だ。前者は運なのでどうとも言えないが、後者は現時点ではほぼ不可能。さて、どうしようか・・・

「なあ、オブサーバーに追いつくにはどうすればいいと思う?」

「そんな事しなくていいです!」

「あんな裏切り者、一人でやられちゃえばいいんだよ!」

 聞いた俺が馬鹿だった。こいつらはオブサーバーが裏切ってると思ってるんだ。説得しても無駄だろう、こいつらは聞く耳を持たな・・・いや、待てよ。これを逆利用したらいいんじゃないか?

「なあ、俺にこんな事をしたオブサーバーを一発ぶん殴ってやろうと思うんだけど、あいつの所に行く方法ねえかな?」

「そうだなぁ・・・」

 おいおい、皆考え出したぞ・・・さっきまで行くなと言ってただろうに。聞いてること変わってないんだけどなぁ・・・でも、良いだろう。これで妙案が出ればこっちのもんだ。説明なんて後で理解してもらえるまですればいい。俺も皆と共に考えるが、なかなか良い案は出てこない。その間にも、オブサーバーとファイントはどんどん俺たちから離れていく。畜生、何かいい案はねえのか・・・

「あ、こんな方法はどうかな?」

 一番最初に声を上げたのは雪穂だった。目をキラキラさせながらこっちへ振り向いてくる。雪穂、お前どんだけあいつをぶん殴るのに賛成してるんだよ・・・まあ、少しでも可能性があるならいいけどな・・・

「で、どんな方法なんだ?」

「ふふ、それはね、私が作った氷塊にお兄ちゃんを乗せて、それをみんなの武装解放で打ち飛ばす!」

 うわぁ、凄い物騒な案が出たよこれ・・・だが待てよ、確かにこの方法ならオブサーバーに追いつけるかもしれない。よし、ほかに案も出ないしこれで行こう。そう決めて、準備するように仲間たちへ頼むと、案外すぐに準備してくれた。だからお前ら、どんだけあいつぶん殴ってほしいんだよ・・・

 そんなこんなで完成した氷塊に俺が乗ると、雪穂は器用にそれを真上に打ち上げる。そして氷塊がちょうどいい高さになった時、仲間たちの武装解放をする声が重なった。直後、轟音と共に、俺を乗せた氷塊は崩壊しながら高速飛行を始める。ぐんぐんとファイントとの距離が縮まり、オブサーバーが目視できるぐらいになった時、氷塊が完全に崩壊した。ちょっと待て、どうやって着地するよ・・・そんなことを考えている間にも、俺の体はどんどんファイントに近づいていく。あ、これ当たるな・・・そう思った数秒後、俺の体はあっけなくファイントに激突した。とっさに黄昏の聖十字(トワイライトロザリオ)をファイントの体に刺して落ちないようにする。だが、それに気づいたファイントが攻撃してきた敵に反撃しようと、方向を180度変更した。つまり、仲間たちの方を向いた感じだ。

「マズいな・・・」

 このままでは、仲間たちの方へ再び移動してしまう。そう思った俺は、ぶら下がっている黄昏の聖十字(トワイライトロザリオ)を無理やり上に動かし、相手の背中を深く抉った。その時、何か細い糸のようなものを切る感触。一体何を切ったんだ?落下しながら、俺はその正体について考える。なんとか無事に地面に着地した俺は、隣にオブサーバーが立っているのに気付いた。うわぁ・・・めっちゃ何か言いたそうな顔してるぞ・・・とりあえず挨拶してみよう・・・

「よう!」

「なんで戻ってきやがった!」

 ファイントの反撃を避けながら、再開後初めての会話。お前と俺らしいな・・・っとそんなことしてる場合じゃねえな。俺は薄々、自分何を切ったのか分かってきていた。おそらく、あれは爆発物のコードだ。それならば、そろそろアレが起こってもおかしくない。

「だからどうして・・・」

「動くな、オブサーバー!」

「お前なんの・・・」

 オブサーバーの言葉が終わらないうちに、こちらへ向き直したファイントの心臓部分が(・・・・・)膨張を始める。それを見て察したのだろう、オブサーバーは俺の方へ走り寄って来る。作戦は順調に進行中だ。だが、爆発は1秒位じゃ収まらないだろう。それなら、できるか分からねえがやるしかない、アレの時間延長を主にした新技を。ひと際大きな膨張を目視した俺は、黄昏の聖十字(トワイライトロザリオ)を十字に重ね、新たな武双解放の技名を叫んだ。



絶対神聖守護領域ホーリーサンクチュアリ!!」



直後、俺とオブサーバーの目の前で、世界が揺れるような大爆発がファイントを中心に起こった。


はい、今回も読んでいただきありがとうございます。


やっぱり移動方法として武器を使うオブサーバー・・・


いや、確かに速そうだけどさ・・・


はい、まあそんなことは置いといて、次回もよろしくお願いします!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ