Rebel
どうも、どこぞの委員長です!
前回は悠樹君にお姉ちゃんができましたw
今回はその続きです!
どうぞ!
俺はさっき目の前の女性、アーサー王の弟になった、というより半ば強制的に向こうが姉になった。そして現在、その自称姉はニヤニヤしながら俺の名前をブツブツと呟いている。正直この状態を見る限り、あの有名な聖王とは思えない。というか、俺はどうしたらいいんだろう?この状況、はたから見たらすごい光景じゃないか?ちょっと想像してみよう。ニヤニヤしながら目の前の男の名前をちゃん付で呼ぶ美女、その前に突っ立っている一人の男・・・ああ、これは恥ずかしいぞ・・・どうしよう、逃げようにも逃げる場所がないしな・・・待てよ、ここには確か俺達二人しかいないはず・・・そうか、それならこのままでもーーーーー
「おうおう、やっと見つけたぜ!今度は覚悟しな!」
おいおいアーサーさん、ここにいるのは俺たちだけじゃなかったのかよ。完全に第三者だぞ、この声は・・・
「なんでニヤニヤしてんだ?一人でニヤニヤするとか恥ずかしくねえのか?」
突然現れた第三者は俺には目もくれず、アーサー王の方に近づいていく。そいつを表現するとするなら、黒騎士になるだろうか。全身を真っ黒な鎧で包み、背中にたなびくマントの色も黒、何もかもが黒いのだ。だが、騎士なら誰でも持っているであろう武器の類は見当たらない。それはアーサー王も同じだが、あの人はおそらく俺たちと同じ、つまり武器を召喚して取り出す類のことができるはずだ。俺をアシストして聖王最期の聖を召喚させたからな。そんなことを考えているうちに、二人の距離はどんどん詰まってゆく。相変わらずアーサー王は第三者に気付かずニヤニヤしているし、このままではマズい。そう判断した俺は行動を開始した。
「おい、お前は何者だ!」
言ってから、俺は少し後悔した。なぜかって?それは、そいつがこちらを向いたとき、そいつが誰か分かってしまったから・・・。そいつの顔は、俺のよく知る人物ーーーーー
「どうしてここにいるんだ、父さん」
俺の父親、名前は神永雄也、職業は研究者、いや、研究者だったの方がいいだろう。だって、父さんは死んだから。確かに、オブサーバーは俺の父親は生きていると言っていた。そして、それを理由に俺はオブサーバーと一戦交えている。でも正直な所、俺はその話を信じ切れていなかった。だが、その父親が俺の目の前にいる。それも、行動から考えるにアーサー王とも面識がありそうだ。
「どういうことだ・・・どうしてなんだ、父さん!」
「どういうことだ、と言いたいのはこっちの方だな。お前は、誰だ?」
「----っ」
覚えて・・・いない?どういうことだ、見た目は完全に父さん・・・
「まさか・・・中身が違うのか?」
「ああ、中身?何の話だ?」
「お前は、神永雄也じゃないのか?」
「ハッ、お前なんざに名乗る筋合いはねえな!」
本当に父さんじゃなさそうだ。父さんは厳しいところがあったが、それは俺たち兄妹に道を間違えてほしくないからであって、決して子供の名前を忘れたり、隠し事をするような人ではなかった。じゃあこいつは、俺の目の前にいる父さんそっくりな奴は誰なんだ?
「Rebel、Mordred」
一言、流暢な発音の英語が響いた。声の主はアーサー王、意味は言うまでもないだろう。まさか、あの有名な反逆者だとは思わなかった。
「ハッ、やっと復活しやがったか!」
反逆者の声が俺の頭の中に響く。俺は無意識のうちに呟いていた。
「堕聖剣カオスカリバー」
ビシッ 空間が割れるような音がした次の瞬間、俺の手には愛剣カオスカリバーが握られていた。それをゆっくりと反逆者、モードレッドに向ける。相手もそれに気づいたらしく、こちらを見るとニヤッと笑った。
「おいおい、まさかそいつで俺に挑むってのか?お前、バカだろ」
「ハッ、てめえにだけは言われたくねえな、聖王殺し!」
「俺を前にしてそこまで威勢がいいのは初めてだぜ。かかってきな、実力の差と言うもんを見せてやるよ!」
「こっちのセリフだ!」
「悠ちゃん、ダメ!」
アーサー王の必死の制止を聞き流し、俺はモードレットに切りかかった。モードレットは高速で切りかかる俺を見ながら、ゆっくりと右手を俺に向け・・・いや、あの右手は俺に向けられているものじゃない。あいつは剣の軌道上に右手を置いている!何をするつもり・・・
「乖離せよ、聖王殺しの邪剣」
「なっ・・・くっ、何をした!」
俺のヴンダーがどんどん削られていくのが体感でわかる。これは、聖王最期の聖槍の時と同じ、いや、それ以上だ。まさかと思って愛剣を見てみると、そこにあったのは愛剣ではなく、神々しい光をまとった一本の剣だった。これは・・・湖精より与えられし聖剣か。これで俺が湖精より与えられし聖剣、敵が聖王殺しの邪剣、二人が相反する剣を持った形になる。そして俺の攻撃の勢いは止まらず、光と闇が激突した。
天地が震えるような衝撃が理想郷に走り、両者は共に10mほど後方に吹き取んだ。モードレッドは綺麗に着地したようだったが、俺はヴンダー切れで受け身を取ることさえできず、背中から地面に叩き付けられた。その衝撃で手から剣が離れ、回転しながらとんで行ってしまう。俺はもう、戦えそうになかった。
「とうっ!」
そんな間抜けた声が聞こえたかと思うと、回転しながら飛んでいた湖精より与えられし聖剣を誰かが器用にキャッチした。その光景は、まるで女神が空を舞っているようで、俺は一瞬息をのむ。その人物、アーサー王は俺のもとに歩いてくると剣を掲げ何やら呟き始めた。一体、何を・・・
「我が使命はブリテンの救済!ブリテンは危機に瀕した!聖王アーサーの名の下に、我はブリテンの敵へ制裁を下す!特別解放、顕現せよ永久治癒の加護!」
アーサー王の詠唱が終わると同時に、あの美しい理想郷が天に現れた光球に吸い込まれ、アーサー王の左腰の部分に降り注いだ。あまりの光量に思わず目を覆ってしまい、次に目を開けると、アーサー王の左腰には剣の鞘が光り輝いており、美しかった理想郷は、草が一本も生えていない殺風景な丘へとその姿を変えてしまっていた。
「まさか、あなたがここへやって来るとは思わなかったわ」
「どこへ行こうとお前は俺が殺すと決めてるんだよ!だが、ここでまた戦うとはな!」
この殺風景な丘でこの二人は昔戦ったというのか?それなら、この丘は双方にとっての死に場所じゃないか。あの時、そうモードレッドの反逆があった時の・・・。
「カムランの丘、私たちが戦い、そして死んだ場所。私の理想郷はこれの上に出来上がっているの」
「いいじゃねえか!ここでなら存分に戦えるだろ!来いよ聖王、もう一度叩き潰してやる!」
「ええ、今回は相討ちにはさせない!悠ちゃん、姉としての義務を果たしてくるわね」
そう言って、アーサー王、自称姉は剣を仇敵へ向けた。それを見た相手もアーサー王へ剣を向ける。双方は相手の出方を見るためか、じわじわと近づいて行く。数秒後、さっきの倍ほどの衝撃がカムランの丘を揺るがした。重い体を起こして音の発生源を見ると、そこでは光と闇が交錯している。それはまるで、神話の中の戦いを見ているようだった。十回、二十回と打ち合わせるたびに衝撃がカムランの丘を走る。既に地面には何本もの亀裂が走り、丘も崩れ始めていた。それでも二人の勢いは一向に劣る気配はなく、何度も何度も切り結ぶ。大体五十回を超えたあたりだろうか、戦況が変わった。闇、モードレッドが一歩引いたのだ。そして次の一撃、光が闇を押し込んだ・・・いや違う、闇がこちらに向かってきている。どうやらモードレッドは、永久治癒の加護の加護で疲れを知らないように剣をふるうアーサー王ではなく、動けない俺を狙うことにしたらしい。だが、向かってくる闇を俺は避けることができない。死を覚悟して、俺は目をつぶった。
「悠ちゃん!」
そんな声がすると同時に、俺に温かい液体が降り注いだ。目を開けると、そこには聖王殺しの邪剣に体を突き刺されたアーサー王が立っていた。その手に剣はなく、腰にあった鞘も無い。どうやら先に駆けたモードレッドに追いつくため、重いものをすべて捨てて助けに来たようだ。
「悠・・・ちゃん・・・私・・・いい・・・お姉・・・ちゃんに・・・なれた・・・かな?」
「なんで!どうして俺なんか助けに来たんだ!俺はお前に、姉ちゃんに!」
「フフ・・・姉・・・ちゃん・・・って呼んで・・・くれた。私・・・嬉しい・・・な・・・」
「予想できていたぜ、お前が助けに来ることは!」
俺は、自分の中で何かが外れたような気がした。それは多分、自分の体が決めていた限界。
「許さねえ」
「あ?なんだ?おめえ、まだやんのか?」
「許さねえ、てめえだけは!神聖解放、UNKNOWN!」
俺の手の中に何かが触れた。俺はためらうことなくそれを引き抜く。目には何も映っていない、だが確かに俺の手の中に存在する。UNKNOWN、それは既に俺たち、いや神ですら把握できない何かだ。
「どうした?何もないじゃねえか!まあいい、アーサーもろとも死ね!」
振り下ろされたモードレッドの剣がひどくゆっくりに見える。俺は姉を抱えると、その一撃をかわした。そして、とりあえず姉を永久治癒の加護の近くへと投げる。悪いな、ちょっと荒っぽいが命は助かるだろ、姉ちゃん。
「かわしやがっただと?どこにそんな力が残ってやがる!」
「お前に応える義理はない!」
そう答え、俺はモードレットへと駆ける。モードレットは、何も持たずに走って来る俺に止めを刺しに向かってくる。双方の武器が触れたその瞬間、天から12本の光がモードレッドの後方へと降り注いだ。その光はだんだんと人型になってゆき、12人の騎士たちが現れる。
「遅かったじゃねえか!」
「すいません、妨害をくらいまして・・・。それで、敵はあの少年でしょうか」
「ああ、遠慮はいらねえ。全力で叩き潰せ」
「御意」
その姿、そして人数からそれが何なのかが分かった。こいつらはーーーーー円卓の騎士団だ!
はい、今回も読んでいただきありがとうございます。
これはどういう展開だ、というところで終わっときますね。
良ければ次回もよければよろしくお願いします!