カオスカリバーの真実
どうも、どこぞの委員長です!
すいません、これから大体週一更新に切り替えます。<これから本業が忙しくなりそう・・・>
この前は悠樹が理想郷にたどり着いたところで終了でした。
ということで、その続きです。
どうぞ!
俺の目の前にいる女性、その人は疑う余地もなくあの人だろう。理想郷にいる人物なんて一人しかいない。その一人とはそう、かつて聖王と呼ばれた人物、つまりアーサー王その人ではないか。たしかブリテンが再び危機に瀕したとき、理想郷で眠っているアーサー王が目覚めて助けに来る、とか言う伝説もあったような気がする。ということは、ここにいるアーサー王はブリテンの次なる危機に備えているといったところだろうか。それにしても穏やかな所だ。暖かい太陽の光、優しく吹く風、そして遠くに青く見えるのは海だろうか、こんなに穏やかな所は滅多にない。そういえば、アーサー王って女性だったんだな。俺は今更そんなこと思った。雪の様に白い肌に整った顔立ち、絹の様に風になびく腰のあたりまで伸びた銀色の髪、身長は大体雪穂と同じくらいだろうか、まあ雪穂とは体の一部が大きく異なるけど、それはまあ・・・うん・・・あれだ、気にしちゃだめだよな。それに俺はどっちかっていうと雪穂のような控えめの方が・・・おっと、危ないところに思考が行くところだったぜ。それよりもやるべきことがあるじゃないか。そう思い至った俺は、目の前の人物への質問を始めることにした。
「それで、かの有名なアーサー王が俺に何の用だ?」
「ふふ、気付いたのね私の正体に。お姉ちゃん嬉しいわ。それに、用って言っても大したことじゃないわよ。あれよ、あれ」
アーサー王が指さした方向を見ると、そこには俺の愛剣、堕聖剣カオスカリバーが地面に刺さっていた。
「あれがどうかしたのか?」
「ええ、あれの一部は昔、私の物だったの。それに、この声に聞き覚えはない?」
「声・・・ッ、俺に聖王最期の聖槍の召喚を促した時の・・・」
「やっと気づいたのね。あの時、私はその剣の中に眠る湖精より与えられし聖剣を感知しあなたを助けたの」
まさか、あの時助けてくれたのが俺の目の前にいるアーサー王だったとは・・・。あれがなければ、俺たちは間違いなく全員死んでいた。命の恩人じゃねえか、全く俺って奴はその人に用は何だとか・・・もうちょっと考えろってんだ。
「あの時は助けてくれてありがとうございました。あの時、もしあなたの助けがなければ俺たちは今頃・・・ムグ」
立って深々とお辞儀をしながら言った俺の言葉を、アーサー王は途中で止めた。それも俺の口を押さえるという強硬手段で・・・
「はい、それ以上言わないの。あと敬語も禁止、私そんなに偉く無いのよ。」
「いえ、そんなこと。命の恩人なんですからさすがに・・・ムグ」
まただ。また、口を押さえて言葉を止めてきた。でも、命の恩人に敬語を使わないなんて言うのもどうかと思うし・・・
「今度敬語使ったら口で・・・いえ、切るわよ剣で」
「そ、それはまたアグレッシブな・・・まあ、それなら仕方ないか。それで、カオスカリバーがどうかしたのか?元の目的はそれなんだろ?」
「ええ、そのカオスカリバーっていう剣、何かおかしいわ。湖精より与えられし聖剣と何かが混ざってるの。それも極めて邪悪な何かが・・・」
その話は昔聞いたことがあった。確か、前の持ち主、正確には二代前の持ち主が、死に際にこの剣を封印、それを一代前の持ち主が無理やり解除したため闇と混ざった。そして、それ以降この剣は、光でありながら闇、陽でありながら陰、という性質を持ち、双方に効力を持つ剣になったというものだったはずだ。そのことをアーサー王に話すと、アーサー王は首を横に振り、答えた。
「確かに光と闇が混ざることにより、双方に強い剣にはなったかもしれないわね。でも、光と闇が打ち消し合う力もかなり強いわ。正直に言うとね、この剣は湖精より与えられし聖剣の100分の1、いいえ下手すると1000分の1程の力しか出せていないわ」
「そんなバカな!この剣はSSランクに設定されるレベルの武器だぞ?それが1000分の1しか力を出せていないだって?」
この剣の強さはこれまでの戦闘で実証済みだ。決してどんなファイントにも引けを取らず、SSランク級武器としてずっと俺たちを守ってきてくれた。だから俺は、この話が信じられなかった。
「あなた聖王最期の聖槍の破壊力を見たんでしょう?湖精より与えられし聖剣はそれを軽く凌駕するレベルの剣なのよ?」
「聖王最期の聖槍を凌駕するだって・・・?そんな・・・まさか・・・」
それなら、あいつを倒せる。俺が最初に思ったのはそんなことだった。本当にそんな力があるのならば俺は何としてでも手に入れねばならない。あいつを倒して悲劇を終わらせるためにも。
「あら、何か思いついたって顔してるわね。でもダメ、この剣から湖精より与えられし聖剣だけ分離することは不可能よ。」
「そんな・・・何とかならねえのか?」
「ええ、それに仮にできたとしても、今のあなたじゃ扱うことはできないわ」
「なんでそんなことが分かるんだ?使ってみなくちゃ分からないじゃねえか!」
俺の反論を聞いたアーサー王は静かに首を横に振ると、最大の理由を口にした。それは----
「あなたのヴンダー保有量だと一秒も持たないのよ。聖王最期の聖槍でも五秒ほどで限界が来ていたもの、それをはるかに超える湖精より与えられし聖剣なんて使ったら、あなたの命にかかわるわ!」
もっともだった。俺はアーサー王に援助をしてもらい、聖王最期の聖槍を召喚したときのことを思い出す。そう、無数に迫りくるオブサーバーの武器をすべて弾いた後、俺は無様にもヴンダー切れで倒れてしまったじゃないか。
「でも、俺は仲間を守るために強くならないといけないんだ!」
「うーん、そうねえ・・・あ、でも、あれなら・・・いえ、あれはまだ未完成・・・」
「何かあるのか!」
「いいえ、残念だけれど、今はあの剣を分離させる方法がない。だからと言っては何だけど、これをあげるわ」
アーサー王が渡してきたもの、それは四角いカードのようなものだった。よく見ると何か書いてあるな・・・なになに、名前・アーサー=ペンドラゴン、職業・騎士、使命・ブリテンの次なる危機に備えることetc。これは・・・いわゆる名刺と言う物なのではないか。この状況での名刺はどういった意味を持つんだろうか・・・。今渡したからには何か意味が・・・。うん、聞くのが一番早い!
「これは、どういうことだ?」
「良いでしょ!頑張って作ったのよ!」
答えになっていなかった・・・。まあ、確かにこんな所で名刺を作る意味は皆無なのに、それでも作ったというのはすごいんだろうけれど、何か違うだろうよ・・・。あと、さっきとテンション違いすぎるよアーサーさん・・・。俺がこんなことを思っているとはつゆ知らず、アーサー王の話は続いた。
「それでね、見てほしいのは使命の部分なの」
「この、ブリテンの次なる危機に備える、ってやつか?」
指でその場所を指示しながらアーサー王に問うと、あー、すごい頷いてるな。だが、ブリテンの次なる危機とは何なのだろう。社会的?経済的?浮かぶ選択肢はいくらかあるが、そんなものではないような気がする。なおも考えている俺を見たのか、アーサー王は説明を始めた。
「コホン、私の使命、ブリテンの次なる危機への準備っていうのはね、ブリテンの存在そのものが消えそうになった時、救済に迎えるように様々なことを準備しておくってことなの。でも、いくら待ってもブリテンに危機が起きないのよ。そこで私は考えたの、君を私のブリテンにしようって!」
「へ・・・?」
どういうことだ、状況が全く分からない。俺をアーサー王のブリテンにする?それはつまり、俺が危機に瀕したら助けに来てくれるということでいいのだろうか。というか、ブリテンで何も起こらないから俺を助けるってことか?それは、これから危機に瀕するかもしれないブリテンとしてはどうなのだ?ああ、考えても全く理解できない・・・。
「つまりね、私はあなたのお姉ちゃんになるの!」
「・・・」
「どうしたの、黙っちゃってさ。そうだ、名前を聞いてなかったね。君の名前は?」
「神永悠樹だ・・・」
「神永悠樹、悠ちゃんだね。」
もう俺は、状況を理解することを放棄し始めていた。その頭で導き出した一つの答え・・・どうやら俺にはーーーーー姉ができたようだ。
はい、今回も読んでいただきありがとうございます。
次回もよければよろしくお願いします!