Schatzkammer im Tiefschlaf
どうも、どこぞの委員長です!
まずは謝罪を・・・すいません、一週間に一回更新するとか言って二週間開いてしまいました。
本業の方が忙しく時間が・・・
はい、気を取り直しまして、続きをどうぞ!
俺が振り向くと、そこには父親の姿はなく、代わりに一人の男がこちらへ向かって高速で接近してきていた。その男は・・・オブサーバー=リメイカー、ファイントを作り、何かをしようとしている奴だ。すれ違いざまに攻撃を仕掛けてくるつもりなのだろう、オブサーバーの手には一本の剣が握られていて、切っ先は間違いなく俺に向けられている。
「神永雄也、ここで死んでもらう!」
一声と共に俺とすれ違う軌道に入ったオブサーバーは目にもとまらぬ速さで剣を振りぬいてくる。だが、こちらもさっきの戦いで武装は展開済み、その斬撃をカオスカリバーで防ぐ。ギィィンという鈍い音と共に俺とオブサーバーの武器は交錯し、火花が散った。
「ふん、まあ予想通りだ。神永雄也、どうしてさっさと死んでくれない?」
今、オブサーバーは確かに神永雄也と言った。こんな、ファイントを作って何かを企んでいるようなやつが、どうして俺の父さんを知っているのだろう。そもそも、どうしてこいつは俺の父さんを狙ってるんだ?
「オブサーバー=リメイカーだったか、お前は何で神永雄也を探してる?何が目的なんだ?」
「ハッ、神永雄也本気で言ってるのか?お前が俺をどう扱ってきたか、忘れたとは言わせない!」
「残念だけど、俺は神永雄也じゃない。お前の探してるやつは・・・とっくに死んだよ」
そう、父さんは母さんと一緒に、俺と雪穂が子供の時に事故で死んでいる。だから、こいつが探している神永雄也はもうこの世に存在しないのだ。それに、俺は半人半ファイントになってるからここまで生きてるけど、父さんは普通の人間だった、事故にあってなくても寿命で死んでいただろう。
「ほざけ、お前が神永雄也でないなら誰なんだ」
「そいつの息子だよ、オブサーバー=リメイカー」
「息子、息子だと?そんな嘘が俺に通用するとでも?」
「嘘じゃないさ、お前と父さんの間に何があったか知らないけど、父さんは事故で死んだんだ。西暦2020年の3月30日にな・・・」
西暦2020年3月30日、それは俺の両親が帰ってこなくなった日。留守番をさせた俺たちに何も告げず、いなくなってしまった日。車は山の斜面を滑り落ちて爆発炎上、中に乗っていた人がいれば決して助かることがないものだったという。だが、両親の死体は見つかっていない、だからあの時の俺たちの散歩は両親探しも兼ねていたのだ。決して見つかるはずがないのに・・・
「あ、何だって?西暦2020年に死んだ?バカなことは言わないでくれ。じゃあ、俺がこの間見たのは誰だってんだ?」
「それも俺だよ。一回あっただろ、巨大グモのファイントを倒した時に・・・」
「いや、その後だ、俺が奴に会ったのは。あいつ、俺の傑作だったレベルⅧファイントをぶち壊してくれやがった!いつもいつも、どうしてあいつは俺に殺されてくれないんだ!」
その言葉にビクッと雪穂が反応するのが分かった。それは俺も同じだ。父さんが生きている、それは嬉しいはずなのになぜか背筋が寒くなるのを抑えずにはいられなかった。だってそれは、父さんも半人半ファイントになっている、ということだから・・・
「父さんが生きてるだって?それは本当なのか?」
「嘘で傑作を潰されたとは言わないさ。あいつは確実に生きている、今度こそ、この手であいつを殺す!」
「そうか・・・だが、そんなことを聞いちまった以上、父さんを殺させるわけにはいかない。ついでに、ファイントもこの世から消しちまいたいんだが・・・」
「止めときな、お前じゃ俺には勝てない。たとえ、そこの怒り狂っている嬢ちゃんを足しても無理だろうさ」
オブサーバーが視線を振った先には、今にもオブサーバーに飛びかかっていきそうなマリアの姿があった。そういえば、この前こいつにあった時もこんな感じになってたな。何かファイント絡みでいざこざがあったのだろうか。
「あなた、あなたのせいで世界が大変なことになってるんです。あなたを倒せばその連鎖は終わる。それに私だけじゃない、ここには合わせて6人の武器召喚士がいます!6対1なら負けることはありません!」
「フン、無理だと言っているのにやる気なのか・・・どうする息子、俺は神永雄也にしか興味は無いが、それでもやるか?」
オブサーバーは既にやる気があまり無いような調子で俺に聞いてくる。でも、マリアのこともあるし、何よりも父さんを殺させるわけにはいかない。それに、オブサーバーとはいつか戦わなければいけないということは分かっていた。それならば、戦うべきではないだろうか。だが、ここで俺たちが倒れてしまうと、次から現れる高レベルファイントに対処できなくなってしまう。どちらにすべきか俺が悩んでいると、もう我慢がきかなくなってしまったマリアが、オブサーバーに飛びかからないようにと押さえていたレイナの腕を振り払い、突っ込んでしまった。こうなってしまえば、戦闘は不可避だ。俺は、いや、俺たちは全員武器をオブサーバーの方に向けた。
「ハァ、血気盛んなことだ・・・まあいい、神永雄也と戦う肩慣らしとするか。息子、よく見ときな、これこそお前達が俺に勝てない理由だ」
「限定解放、深淵に眠る宝物庫(Schatzkammer im Tiefschlaf)!」
オブサーバーの声が固有結界内に響き渡ると共に浮かび上がってくる剣、槍、斧、その他様々な武器。その数は100や200では無いだろう。さらに、さっきオブサーバーは限定解放、と言っていた。つまり、これでも全力じゃないということだ。
「こんなの・・・どうやって・・・」
「ハッ、さっきの威勢はどうした、嬢ちゃん。来ないなら、こっちから行かせてもらうぜ。まあ、簡単に死んでくれるなよ」
オブサーバーが手を挙げると、全ての武器がまるで生きているかのように俺たちの方に向き、手を振り下ろすと同時にその全てがこっちへ向かって発射された。発射された武器はどんどん距離を詰め、俺たちの目の前に迫ってきている。だが、動くことができない・・・いや、動いたとしても確実に逃げ切れない。でも・・・俺は仲間を守るって決めたじゃねえか。絶対傷つけないようにするって決めたじゃねえか。それを今、守らないでどうするんだ!何かできることを、そう何か・・・ん?この声は・・・復唱しろと?
「特別解放、薙ぎ払え、聖王最期の聖槍!」
「何!その槍は・・・アーサー王の聖槍か!チッ、こいつは限定じゃ分が悪い」
オブサーバーのそんな声さえかき消すような轟音が響き、あたり一面が嵐に襲われたように咆哮した。どれほどの時間がたっただろうか、おそらくものの数秒だろう。しかし、俺にとってのこの数秒は何分にも感じられる時間だった。あたりを見回すとオブサーバーの攻撃によって放たれた大量の武器がそこら中に散乱し、オブサーバーの姿は無くなっている。そして、俺の手には一本の槍が握られてたが、それも役目を果たしたかのように消えていった。どうやら死なずに済んだようだ。
「悠樹・・・今のは何だ?」
「ああ、レイナか。何だったんだろう・・・俺にもよく分からない・・・」
「アーサー王の聖槍、オブサーバーが最後に呟いてましたわ」
「アーサー王の聖槍ということは、ロンゴミニアドですね・・・あれを現界させるには一人のヴンダー許容量では対応できないレベルのヴンダーを消費しなければ不可能なはずです・・・」
「なら、どうして先輩は・・・?」
ああ、皆が何か話してるようだが何を話しているのだろう。なんだか、ものすごく疲れた。視界がぼやけて、頭がふらふらしてきたな・・・。とてもじゃないが、立っているのもつらくなってきた。ああ、ヴンダー使いすぎたかな・・・。まあ、あいつも追い払えたし倒れてしまってもいいだろう。じゃあ、少し休ませて・・・もらおうか・・・。あれ、皆がこっちに駆け寄ってくる、何かあったのだろうか。まあいい、今は・・・少し・・・休憩を・・・。こうして、俺の意識は闇にのまれていった。
「目が覚めましたか?」
声が聞こえた気がして俺は目を覚ました。少し顔を動かして周りを見てみると、俺が寝ている場所は一本の木の下だと分かる。そして、このいい匂いと心地よい枕のような柔らかいものは・・・ん、何故木の下に枕のようなものがあるんだ?まさか・・・。俺が慌てて上を向くと、そこには一人の女性の顔があった。ということは、この状況は・・・つまり・・・
「お姉さんの膝枕どうかな?気持ちいい?」
やっぱりか・・・だが、どうして俺は見知らぬ場所の木陰で女の人に膝枕されてるんだ?俺は、たしかオブサーバーを撃退して・・・
「____ッ、皆は、皆はどこにいるんだ!」
「きゃ、急に起き上がらないでよ。危ないでしょ」
「あ、すいません。でも、皆は、俺の仲間たちは何処に?」
「ここにはいないわ。ここは私の空間、ここはどこにも属さない場所。今、ここにいるのは私とあなただけ」
この人はいったい何を言っているのだろう・・・。どこにも属さない場所なんて、この世に存在するのか?いや、待てよ、どこにも属さない空間。それについて少し心当たりがある。だが、あれは存在するのか、いや可能性としては0では無いのだろう。誰もそこに行ったことはないのだから・・・そう、あの人だけを除いて・・・。
「ふふ、どうやら気付いたみたいね」
「ええ、どこにも属さない場所、そんな所は一か所しかない・・・。そう、ここは・・・」
ーーーーー理想郷-----
はい、今回も読んでいただきありがとうございます。
頑張って週一でできるようにします・・・。
次回もよければよろしくお願いします!