現場急行
どうも、どこぞの委員長です!
今回は、レベルⅧファイント出現の連絡を受けた悠樹たちが現場に急行するところからです!
どうぞ!
俺たちがショッピングモールの駐車場に着くと、黒塗りの車が覆面パトカーのサイレンのようなものを付けて止まっていた。おそらくそれが、俺たちを迎えに来たという車だろう。その車は、俺たちを見つけるとすぐにこちらへ向かって走ってきた。そして前に止まると同時にドアが開き、俺たちが乗り込むとともにサイレンを鳴らしながら猛スピードで走り始めた。
「Sクラスの皆さん、現状況をお伝えします」
そういって話し始めたのは、車を運転している黒いスーツを着た30代ぐらいの男だ。ん、この人は・・・あ、俺と穂乃香をSVに連れてきたときに車を運転してくれた人じゃねえか。あの時は何も言わないでどっか行っちまったから大変だったんだよな・・・。まあ、そんなことはどうでもいい、それより現状把握が先だ。
「現在、東光洋町の真ん中に出現した、推定レベルⅧのファイントが北へ向かって進行中です。TVでは、東光洋町に突如大型の台風が発生したと報道しています。現在の死傷者は3000名を超え、数百名が死亡しています」
「それは、本当なんですか?HLKバリアを張ればファイントは100㎥の立方体から出られなくなり、その中にいる人は無意識にそこから立ち去るはずです!ですから、負傷者なんて出ても50人、まして死者なんて出るはずがありません!」
確かに、HLKバリアを張ることができれば人は傷つかない。だが、それは張れた時の話だ。もし何かがあってバリアを張れなかったとしたら?想像もしたくないが、おそらく大惨事になるだろう。あの時・・・そう、初めてレベルⅩファイントが出現したときのように・・・。もう何十年も前のことで、俺たちも聞いたことしかないが、ある時大きな自然災害が俺たちの住む国を襲ったそうだ。しかし、それはレベルⅩファイントによる物であり、俺たちの国の首都、幸野が壊滅した。その時の死傷者は約5000万人、そのうち死者の数は2000万人を超えたという。しかし、この数字は想定されていたものよりかなり少なかったらしい。というのも、そのファイントと戦ったと言われている人がいるからだ。その人は二人いて、一人は二刀流の剣士、もう一人は日本刀を持った武士のような人だったという。その二人がファイントを自壊するまで抑え続け、国の壊滅は免れたそうだ。その後、その人たちは悪魔を滅ぼす者《Teufel Henker》と呼ばれるようになったらしい。まあ、これはファイントが見える人の間で伝わっている伝説のようなもので、俺はあんまり信じてないんだけどな。それは良いとして、今のこの状況をもっと詳しく知らなくては・・・。俺は、とりあえずHLKバリアが張れているかどうかの確認をすることにした。
「もしかして、HLKバリア張れなかったのか?」
俺のこの発言に、車に乗っているほぼ全ての人が驚いた表情を表した。そう、運転手を除いて・・・。どうやら、予想は当たっていたようだ。
「悠樹さん、その通りです。レベルⅧファイントということでSVの教師を総動員して出現場所へ向かい、HLKバリアを張ったのですが、張ると同時にそれに気づいたファイントがことごとく壊してしまい、10回試みた時点でHLKバリア展開不可能と判断しました。よって、現在はHLKバリア無しで、住民を守りながら教師たちが戦っています。しかし、今のところ良い報告は受けていません」
「HLKバリアが張れていないなら、一刻を争う事態ですわ!早く応援に駆け付けなくては混乱は広まるばかりですわよ!」
「そうだね。運転手さん、今わかる敵の情報はありますか?」
雪穂の質問に対し、運転手は俺たちに一台のタブレット端末を渡してきた。そこに映っていたのは、現在の戦場。それを見た俺たちは全員、息をのんだ。なぜなら、それが俺たちの想像を超えるものだったからだ。なんだ、これ・・・教師たちが戦っているこいつは・・・何なんだ・・・・。見た目は、RPGとかに出てくるドラゴンみたいな奴だ。しかし、こいつは・・・大きい。とてつもなく大きいサイズのドラゴン、しかも口から炎のようなものを吐き出している。その炎のようなものが触れたところは、一瞬で炭化し真っ黒になっていく。
「おいおい、これはヤバいぞ。戦うにしても作戦がなけりゃどうにもなんねえ。皆、なんかいいアイデアはないか?」
「こいつの攻撃方法は見た感じ、脚でのストンプ攻撃と超高温のブレスだろう。なら、誰かがブレスを引き受けて、他の人が攻撃に回るというのはどうだろうか?」
「なるほど、確かにそれなら確実の攻撃が与えられる。でも、あのブレスを止め続けるなんて誰ができる・・・?」
「私、やるよ、お兄ちゃん」
「雪穂、できる自信はあるのか?」
「もちろん!」
雪穂の持つ武器は妖刀村雨、水や氷を操ることができる。つまり、あのブレスを水や氷で相殺するということだろう。だが、それにはかなりの危険が付きまとう。もし相殺しきれなかったら、雪穂は一瞬で消し炭になってしまうだろうし、成功したとしてもヴンダーがいつまでもつか分からない。一人でやるのは危険だ。しかし、このグループには水系を操れる人は雪穂以外に誰もいない。こうなると、雪穂に頑張ってもらい、俺たちができるだけ早く戦闘を終わらせるのが一番いい作戦だろう。
「よし、じゃあブレスは雪穂に任せるとして、俺たちはどうするか・・・だな。運転手さん、こいつの弱点とかってありますか?」
「弱点、ですか。すいません、レベルⅧファイントでドラゴン型が出たのは初めてのことで、私にも対処法が分からないのです。ですが、レベルⅢファイントで一度だけドラゴン型が出たことがありまして、その時は逆鱗付近が弱点でした。しかし、逆鱗に触れてしまうとファイントが暴走してしまうので、なかなか討伐するのに苦労しましたよ」
「逆鱗・・・か。確かに弱点である可能性は高いですね。ありがとうございます。じゃあ、俺達攻撃組は、雪穂がブレスを止めてくれている隙をついて、逆鱗付近を攻撃するということで良いか?」
この問いには皆が同意し、俺たちはこの作戦で戦闘を行うことにした。そんなことをしているうちに車がSVへとたどり着いたので、俺たちは車を降り、DTのもとへと大急ぎで向かった。DTは、向こう側への扉が開いた状態で放置されていた。俺たちがすぐ来れるようにという計らいだろう。俺たちは武装を展開しながらDTを通り、向こう側へと飛び出した。向こう側、東光洋町は動画で見たよりも状態がひどくなっていた。ファイントがどこにいるかを探してみると・・・いた、北の方に約50m先、そこでドラゴンと教師たちが戦っているのが見て取れる。
「遅い!早く参加しろ!知ってると思うが、HLKバリアは作動してない、逃げ遅れた住民に気を付けて行動しろよ!」
そこへ着いたとたん、そんな声が聞こえた。見ると、そこにはAクラスの担任の藤林先生がこちらへ向かって走ってきている。藤林先生のほかにも、Bクラス担任の岡山先生やCクラス担当の小埜寺先生なども見て取れる。どうやら、俺たちが来るまでにやられてしまった人は誰もいないようだ。それにホッとすると共に、俺は焦った。これだけ多くの人がいる前で固有結界を展開するわけにはいかない。固有結界を使うにはこの教師部隊をどうにかしないといけないのだ。俺はダメもとで、藤林先生にお願いしてみることにした。
「藤林先生、遅れてすいません。遅れてきて言うのもなんですが、今すぐに教師部隊を全員退却させてください、お願いします」
「何言ってるんだ、神永!お前ら生徒を戦わせて、教師が引き下がれるわけないだろう!」
「そこを何とかお願いします!」
「無理だ、あきらめな。私たちもお前たちと戦うよ!」
これじゃあさらに被害が拡大し、取り返しのつかないことになってしまう。だが、これだけ言っても無理だとすれば強行突破するしかない。教師全員を峰打ちで昏倒させるかどうかを真剣に悩み始めたとき、後ろから藤林先生を呼ぶ声が聞こえた。掘り返ると、そこにはマリアが歩いてきていて、俺に目配せを送ってきた。どうやら、自分がどうにかするということらしい。俺は、マリアに任せるという工程の頷きを返した。
「藤林先生、教師全員を連れてSVまで退却してください」
「学長、それは無理な相談です。生徒おいて教師が逃げるわけにはいきません!」
「学長命令です。教師全員を連れてSVまで退却してください」
「学長!」
「何度も言わせないでください。教師全員を・・・」
「分かったよ。退却する・・・。でも、戦闘はモニターさせてもらうよ」
「構いませんよ。モニターできればどうぞ」
そのあとの行動は、さすがSVの教師たちだ。退却の指示が出ると、すぐに自分たちの身を守れる陣形を取りながらDTまで撤退していった。その時マリアが、人の悪そうな笑みを浮かべたことを見ていた教師は一人もいなかったと思う。
「悠樹さん、固有結界を使うのでしょう?急いでください、藤林先生達がモニターを始める前に、早く!」
「ああ、ありがとうな」
そうマリアにお礼を言って、俺はファイントの前に行くと、右手をファイントに向けた。ファイントの方も俺に気付いたらしく、巨大な脚で踏みつぶそうとしてくる。その脚が俺から20mほどの距離になったところで俺は叫んだ。
「次元破壊!」
その声と共に、俺を踏みつぶそうとしていたファイントの脚の前に黒いブラックホールのようなものが出現し、それに触れた脚はブラックホールに吸い込まれるように飲み込まれていった。
「拉致!」
そして、俺の第二声と同時にファイントの巨体がブラックホールのようなものと一緒に姿を消した。固有結界の中に吸い込まれたのだ。教師たちが帰るまでに間に合ったかどうかは心配だったが、うまくいって良かった。だが、本番はこれからだ。
「皆、準備はいいな?」
「ああ、全員準備はできている」
「OK、レイナ。じゃあ、行くぞ!。時空門開錠!」
そうして俺は、仲間と共に目の前に出現した扉をくぐり、レベルⅧファイント、あのドラゴンの待つ固有結界の中へと足を踏み入れて行った。
はい。
今回も読んでいただきありがとうございます。
前回、戦闘するとこ書くとか言ってたのにそこまでいかなかった・・・
次は戦闘ですので、よろしくお願いします!
それでは!