ある物語の始まり
どうも、どこぞの委員長です。
武器召喚士の第一話です。
どうぞ!
ある朝、俺が目を覚ますと一冊の本が机の上に置いてあった。真っ黒な装飾がなされ、表面にはこう記されている、漆黒の聖書と。一見アニメや漫画などに出てくる魔導書のように見えるその本は、俺には馴染み深いものだ。3~4年前のこと、俺はこの本と出合ったのだ。といっても、突然誰かに渡されただとか、いきなり虚空から現れただとか、そんな空想の世界の出来事のような経緯があって手に入れたものではない。そう、この本は俺が作ったのだ。自らのこの手で書き記し、そしてそこに描かれた力を自身のものとして妄想した。これを見るたび、俺は羞恥で頭を抱えて転がりまわりたくなる。
そう、これは俺が中学生の時に書いた、いわゆる中二病ノートなのだ・・・
「な、なんで・・・こ、このノートがここに・・・?」
俺は頭を抱えたい衝動に駆られながら、そのノートをもとあった場所に放り込もうと手に取る。そして、開いた引き出しの奥の奥に投げ込もうとした刹那、ヒラリとノートから何かが落ちるのが目の端に映った。
「ん、この紙は?」
きちんとノートを引き出しに投げ込んだ俺は、ノートから落ちたものを手に取り、眺めてみる。真っ白なその紙は、ノートが封印されていた時間を考えると不釣り合いなほどきれいなものだった。しかし、なぜ真っ白な紙がノートに挟まれていたんだ?軽く不思議に思いながら、何の気なしにその紙を裏返すと『しっかりと予習をしておくように!』と文字が記されていた。いや、あのノートに予習するようなところは一つもないような・・・いや、それどころか、思い出すだけで恥ずかしくなってくる事がかきまくってあるんだが・・・
「俺は、暗黒武器の覇者混沌の中に生きるもの!そして、この剣は堕聖剣カオスカリバー!俺が昔、闇に堕とした剣・・・」
紙に記されていた言葉のせいで、忘れかけていた記憶が絵とともにフラッシュバックする。ついに俺は頭を抱え、叫びながら部屋の中を転がり始めた。ああ、今日はとんだ厄日だよ・・・
今日もいつもと変わらない日常が流れていく。
いつもの踏切、いつものホーム、いつもの通学路・・・まさに『平和』という時間が流れており、この『平和』は永遠に続くものだという気分にすらなってくる。どうやら、朝のことをまだ引きずっているらしい。妙に感傷的になってしまっているようだ・・・現在、俺こと神永悠樹は、加瀬市にあるという理由で『国立加瀬高校』という名前になってしまった悲しき学校へ通学している最中。悲しき学校とはいったが、一応国立なので待遇はそこそこ良かったりする。
「よぉ悠樹、今日はなんか暗いぞ!」
「おはよう、ユウ何かあったのかい。」
朝のことを根に持ちながらぼんやりと歩いていると、背後から声をかけられた。声をかけてきた二人は中学校からの友達で、高校でも親友と呼べるほどの仲だ。やたら元気がいいのが桐谷和希、こいつは小学校からずっとサッカーをやっていて、今では県で選抜メンバーに入っているほどだ。さらに、いい感じのスポーツマンという風に焼けた肌をしており、背も高い。そのため女子からの人気はかなり高いが、肝心のこいつが女子にあまり興味を持たない性格なせいで、彼女とかはいないらしい。なんだか、女子に同情したくなるよ。そしてもう一人、肌は白く背はそこまで高くなく眼鏡をかけているという、図書委員でもしていそうな方は、神田孝輝だ。こいつはクラス委員・生徒会役員をしており頭脳明晰と、和希と正反対の性格をしている。まあ、頭良いし生徒会役員だしということで、男女問わず人気は高い。どちらも、気が利くとてもいいやつらなので、中二病を患っていた俺が一緒にいられているのは不思議なくらいだ。まあ、二人のファンっぽい人たちからよく嫌がらせは受けるんだけど・・・いやいや、今はそんなことはどうでもいい。どうやら、今の俺は他者の目から見ても分かるほど沈んでいるようだ。
「おはよう、いや、ちょっと思い出したくない過去を思い出してしまって・・・」
「あぁ、あれかあのダークネスなんとかってやつ!」
挨拶ついでに今朝のことを話すと、和希が間髪入れずに茶化してくる。それにまた憂鬱感を覚えながら、軽く頭を振って何とか頭を抱えて転がりまわりたい気持ちを振り払う。
「すまん、思い出させないでくれ・・・」
「おっ、これはマジなやつか。わりい」
「まぁ、あんなことしたのは俺だからいいんだけどさ・・・」
最後の一言はもはや呟きに等しいぐらい小さな声だったが、ちゃんと聞こえていたようで、和希は重ねて謝罪を口にしていた。やっぱり、良いやつなんだよな。こんないいやつらに巡り合えて、俺は幸せもんだな・・・
「2人とも早く行かないと遅刻だよ~!」
また感傷に耽ってしまっていた俺は、遅刻というワードで一瞬にして現実に引き戻された。ハッとしてあたりを見回すと、さっきまで歩いていた同じ高校の生徒が一切いなくなっている。どうやら和希とふざけている間にかなり遅くなってしまったようだ。俺たち三人は顔を見合わせ頷き合うと、一斉に学校めがけて走り出した。
何とか制服の一団が歩いているところまで行きつき、後れを取り戻した俺たちは、軽く息を吐いて呼吸を整える。そしてそのまま集団に続きながら、たわいもない話を再開した。しかし、学校に近づくにつれ何とも言えない不安感が湧き上がってくる。『何かがいつもと違う』、そんな感情が胸の中を渦巻いているのだ。表情には出すまいとしてはいたが、学校に行ってはいけないと本能が訴えかけてくるような気さえ出てくると、さすがに俺はそれを取り繕えなくなってしまった。しかし時すでに遅し、そこはもう学校の校門前、さすがに引き返すに引き返せない。俯いてしまった顔を恐る恐る上げると、グラウンドの真ん中に得体のしれない何かがいた。アレは何物にも形容できない。おぞましいという感覚しか浮かんでこない。
「なんだ・・・どうしてあんな奴が校庭のど真ん中にいるんだ・・・」
「どうしたんだ、ユウキ?」
「ユウ、今日はほんとに変だよ?」
俺の口をついて出た言葉と態度から何かを感じ取ったのだろう。さすがに見かねた二人が心配する声をかけてくる。俺は何とか声を絞り出し、校庭の真ん中にいる得体のしれないものについて説明するが、二人は顔を見合わせて共に首を振るだけだ。さらに、その目つきは初めて俺が中二病を発症した時のものと同じ。また俺の妄想が復活したんだと思われているらしい。朝のこともあったしな・・・勘違いされても仕方ないか。ここでさらに言い張るほうが信憑性を失う。今回は見て見ぬふりをし通すことにしよう。俺は、今のは冗談だという風に二人に笑いかけようとして・・・その顔を再び硬直させた。それは、得体のしれない何かに、まるでそれが見えていないかのようなそぶりで1人の女子生徒が歩いて行くのを目の端にとらえてしまったが故に。
「くそっ、あの女の子が危ない!ちょっと行ってくる!」
そう言うと同時に俺は怖さも忘れ、その少女を助けるために走り出した。
「悠樹!」
「ユウ、そんなものはいないって!」
後ろから、何かを叫ぶ二人の声が聞こえてきたような気がする。しかし、俺の頭は女子生徒を救う方法を考えるので一杯だったため、何を言っているかまでは聞き取れない。間に合ってくれ、その一心で俺はそのまま走り続けた。
はい。
読んでいただきありがとうございます。
次回は、少女を助けに行った悠樹がどうなったか、というところからです。
次回もよければよろしくお願いします!
※追記:2017/9/5加筆修正しました。