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「なるほど……全部萎れちゃってるな……」
惠について、惠の家まで来た優霽は、花壇の前でしゃがみ込みながら呟いた。
現在、妹は母親と一緒に出かけているそうなので、答えたのは惠だった。
(どうにかなるか?)
話し込む凛子と惠を横目に、優霽は花の前に立つショウジイに訊ねた。
『見くびるなよ、若造。ワシほどの力があれば、このくらい今すぐにでもどうにかできるわい』
(いや、今すぐはよせ、色々都合が悪い)
『ふむ、そうか。まあ、そちらの準備が整ったら教えい。パパっと解決してやるわい』
未だにショウジイの力を信じ切ってはいない優霽は、再度、本当に大丈夫なのか、と確認しようとしたが、話し終えた凛子達が近付いて来たので、出かかっていた言葉を呑みこんだ。
「どう、大丈夫そう?」と、凛子が訊ねる。
「ああ、たぶん大丈夫だと思う。でも、用意があるから、一旦家に戻るわ」
「そっか! よかったね、惠」
「……うん、えっと……お願いします」
惠が恭しく頭を下げて言うものだから、特に自分が何かをするわけではない――というか、そもそも本当に問題を解決できるのか甚だ不安だった優霽は狼狽する。
「あ、いや、とりあえず試してみるだけだから」
しかし、オロオロしているのは優霽だけで、その問題解決する当人であるショウジイは、惠の前に立ち、自信満々に言い放つ。
『その願い、叶えてしんぜよう』
優霽はショウジイを再び胸ポケット中に入れながら思う。
――はあ、本当に大丈夫なのかよ。
ショウジイを自室で待たせ、外に出かけた優霽が帰ってきた頃には、だいぶ陽も傾き、空は茜色に染まっていた。
「よし、行くぞ」
普段学校に持っていっているものより少し大きめの鞄を持った優霽が、咲夜とショウジイに告げた。
「ふむ、では出陣じゃ!」
ショウジイは優霽の胸ポケットに収まりながら、ビシッと指を前に突き出した。
「あの子の妹さん、喜んでくれるといいね」
自分のことのように嬉しそうに行ったのは咲夜だった。
「……そうだな」
まだそこか不安を湛えた言葉を漏らしながら、優霽は家を出た。