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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ベター・ビター・チョコレート

作者: 愛歌

映像を意識した脚本形式の短編です。

登場人物の容姿や風景などは読者様のご想像にお任せします。

.タイトル


『ベター・ビター・チョコレート』



.登場人物


奄美真奈実あまみまなみ

高校2年生。

竹内理知子たけうちりちこ

若い女教師。化学を担当。




.シナリオ

§1  学校(夕)

夕暮れの学校の外景。

グラウンドには陸上部、サッカー部などが活動にいそしんでいる。


§2  理科室

雑に消された黒板には2月13日の日付。

サビや水垢だらけの流しに蛇口からポツポツと雫が落ちる。

奄美真奈実、よく分からない薬品入りのビーカーやらだらしなく干された試験管やらがあるごちゃついた教卓の上に段ボールを置く。

真奈実「ふぅ、疲れた。あとはこの試験管を整理するだけっと」

真奈実の後ろにはそっと近づいてくる白衣姿の竹内理知子の黒い影が――。

真奈実、仕事が全部終わり、

真奈実「これで終了!」

と言って背伸びをしたところ脇からすっと手が伸びてきて胸を揉みしだかれる。

真奈実「ヒャッ!!」

真奈実、素早く腕を下ろし腕組みの姿勢になりながら後ろを確認。

真奈実「ちょっ、竹内せんせー!」

理知子「(胸を揉みしだきながら)全く、奄美の胸は相変わらず大きいな。以前より育ったのではないか? けしからんっ、すこしよこしなさい」

真奈実「アンッ、出来るわけ……ンッ、ないですよっ」

理知子「ん? 先生の言うことが聞けないというのか? 態度に問題がある生徒はこうだぞっ」

理知子、さらに揉んでいく。

真奈実「そういう問題じゃっ……アッ、ちょ……そっ、そこはっ……ダ、ダメぇ……」

真奈実、膝から崩れ落ちそうになるが抵抗しなんとか魔の手から逃れる。

真奈実「はぁっはぁっ……も、もう! 会う度、わたしの胸触るのやめてくださいって」

理知子「なにをいうっ! 貴重な観察対象の成長をこまめに記録することは科学者としての勤めなのだぞ」

真奈実「もうっ、どんな変態科学者ですか。ホント、嫌なんですから……」

一瞬だけ俯く真奈実を理知子は見逃さない。

真奈実「(すぐに元気そうに)あと、言われた仕事、ちょうど全部終わりましたよ」

理知子「うむっ、ごくろう。薬品が付着した可能性もある。しっかり手を洗ってから帰りなさい」

真奈実、流しへ向かう。

真奈実「はいはい、本当に人使いが荒いんですから」

真奈実、蛇口をひねり手をあらう。窓から差し込む夕日に一瞬目を細め外を見る。


× × ×


グラウンドでディフェンスをドンドン抜いていきシュート、ゴールを決めるサッカー部の部長の姿。

部員A「ナイスゴール! さすがだな」

部長「そんなことないって。もうバテバテさ」

部長は部員達とハイタッチ。

女生徒A「おつかれっ」

女生徒A、部長にタオルを渡す。

部長「おー、サンキュ」


× × ×


その姿をぼんやり眺める真奈実。


× × ×


部長、真奈実に気がつきさわやかな笑顔を浮かべ手を振る。


× × ×


恥ずかしそうにぎこちなく手を振り返す真奈実。


× × ×


にこっと微笑み去って行く部長。

女生徒A、目の端で不満そうに真奈実を見ている。


× × ×


水を流したまま、去って行く部長を見つめる真奈実。

理知子、ギュッと蛇口をひねり水を止める。

理知子「なんだ? 奄美はああいうのがタイプなのか?」

真奈実「そっ、そっ、そんなんじゃないですって!!」

理知子、すこしむくれてプイッと後ろを向き去って行く。

理知子「明日はちゃんと菓子を持ってくるように」

真奈実、理知子の気持ちが分からず首をかしげている――。


§3  教室

教室は昼休みで賑わっている。

お昼を食べる真奈実と友人A。

友人A「甘くておいしー。さすが真奈実ね」

真奈実「そんなことないよ」

友人A「ねぇねぇ、このチョコどうするの? サッカー部の部長にあげるの?」

真奈実「う、うん……」

友人A「やっぱねー。もうすぐ受験だし今しかないよねー。頑張れよっ!」

真奈実「ありがと。無理だと思うけど、取りあえず渡してみるよ」

女生徒A、友人達と真奈実の近くを通りながら、

女生徒A「奄美さんはチョコより、その馬鹿でかいおっぱいを渡したほうがいいんじゃないの?」

女生徒Aのグループは笑いながら去る。

真奈実、何も言い返せず背中を丸める。

友人A「真奈実、気にすることないって。しっかり渡してきなよ。応援してるからさっ」

真奈実「うん……」

友人Aに慰められるも落ち込む真奈実。


§4  理科室(夕)

理知子、教卓でよく分からない黄緑色の液体の入ったフラスコに紫色の液体をスポイトで垂らしながら、

理知子「ふふふっ、これでわたしも奄美のような巨乳に……」

理知子、真っ赤に変色した液体の入ったフラスコを回すように振りながらうろつき、ふと外を見る。

視線の先には、倉庫の物陰にひっそりと可愛らしい小袋を胸に抱いて立っている真奈実の姿――。

理知子「(むくれながら)菓子はまだか」


§5  グラウンド

倉庫の壁に張り付いている真奈実、チラッと確認すると一人で歩いている部長。

意気込んで出て行こうとすると、部員達がやってきて結局でられず。

雑談しながら歩く部長たち。

部員A「よっ、収穫は?」

部長「まぁまぁ、例年通りさ」

部員A「さっすが、モテル男は違うね〜」

部長「るせっ」

部員B「で、どんなカワイ娘ちゃんから貰ったんだよ、奄美ちゃんとかか?」

真奈実、息を飲む。

雑談を続ける部長達。

部長「奄美? もらってないけど?」

部員A「そうなん? 絶対、お前のこと好きだと思うぜ」

部員B「いいよなっ、おれマジで奄美ちゃんタイプなんだよ。おっとりした優しい顔なんだけどしっかりしてるしさ」

部員A「とかいって、乳にしか興味ないくせに」

部長「確かにデカイよな」

部員B「待てよ! 奄美ちゃんの魅力はそこだけどさ、ちょっ、はなし聞けって!」

爆笑する部長たち。

部長、倉庫の影から物音がしてみてみるが誰もいないのであった。


§6  理科室

流しでビーカーを掃除する真奈実。

理知子、後ろにそっと現れてまた真奈実の胸を揉む。

理知子「うむ、また大きくなったな。はやく先生に渡しなさい」

真奈実は何も反応を示さず、理知子は手を引いて白衣からチョコを取り出し食べる。

真奈実「(流しに向かってビーカーを洗ったまま)……ますよ」

理知子「(チョコを咥えながら)ん?」

真奈実「(振り返らずに俯き)あげますよ、こんなもの。これのせいでいっつも、わたしは外見ばかりで判断されるんですから……。先生には、わたしの悩みなんてわかんないからそんなこと言えるんです……」

真奈実、洗い終わったビーカーを置いて、濡れた手で瞳をこする。

真奈実「(瞳の周りを潤ませながら勢いよく振り返り)なんで先生は、わたしの気にしていることばっかりするんですか!!」

振り返った瞬間、息を飲む真奈実。

真奈実「えっ……」

目の前には何も着ていない理知子が立っている。

真奈実「なっ、なっ、なにしてるんですか!?」

理知子「なにって……なんだ?」

真奈実「だから、なんで全裸なんですか!? ふっ、服を着て下さいよ!!」

理知子、ゆっくりと真奈実に近寄る。

理知子「どうしてだ? 奄美も人を見た目で判断するのか?」

ドンドン迫ってくる理知子に対して、若干海老反りになる真奈実。

真奈実「(恥ずかしさに顔を真っ赤にし、まぶたを閉じながら)だっ、だからそういう問題じゃないですよっ!!」

しばらくの無音のあと、ゆっくりと瞳をあける真奈実。

理知子は真奈実の腰と後頭部を支え、真奈実との顔はほぼゼロ距離。

理知子「(真顔で)そういう問題なのだよ。人は内面も大事という。確かにそうだ。だが、容姿外見というものはほぼ100%、判断に影響する。きみが今現在、わたしの裸をみて困惑しているようにね。それが現実だ」

理知子、真奈実の目尻に付いた水滴を親指で優しく拭いながら、

理知子「ならば、受け入れて生きるしかあるまい。きみがどんなコンプレックスを抱えていようが、それがきみだ。それが変わってしまったら、きみの全てが好きなわたしに対して、あまりにも失礼ではないか?」

真奈実「せ、せんせい……」

理知子、そっと真奈実の口を塞ぐ。

理知子「どうだ? せんせいとのキスは?」

真奈実「(恥ずかしそうに)……に、苦かったですけど、よかったです」

理知子、真奈実の頭をなでながら微笑む。

理知子「覚えておきなさい。本物のチョコレートはとても苦いのだと」

              (了)



私は甘いチョコレートが好きです。

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