予期せぬ襲来2
ヘキジニア沖の調査の為に召集された特務部隊所属のライマン曹長。しかし移動中に山中に潜伏していたヘキジニア開放同盟の襲撃を受け、部隊からはぐれてしまう。山中で追っ手から逃れるために一人奮戦する。
ヘキジニア中部・山中
「イストニエ!(いたぞ!)」
「ゲト、ゲトー!!(殺れ、殺せー!!)」
複数のヘキジニア開放同盟の兵士に追われ、ジテロン共和国ヘキジニア駐屯軍特務部隊所属ライマン曹長は付近の小屋に身を潜めた。
「トワ!(行け!)」
指揮官と思われる男の声が響く。
二人の兵士が小屋に近づくとその内の一人が注意深く小屋の中にに足を踏み入れた。
小屋の中には敵の気配はない。二部屋しかないこの小屋に隠れたならばもはや袋の鼠である。足を踏み入れた兵士がそのまま奥の部屋に進もうとしたその時、突然小屋の中で爆発が起こった。
「ラマナ シュルク ケシェル!!(警戒態勢に入れ!!)」
指揮官と思われる男がそう叫ぶ頃には既にライマン曹長は小屋から離れた森林を逃走していた。
しばらくして少し開けた場所に出たのでライマン曹長は物陰で一息つくことにした。
しかしこの広場には最近まで使われていたと思われる手斧などの道具が放置されていた。と言うことは人の往来があると言うことである。最近この場所を使っている者は反政府軍の奴等しかいない、ライマンがそう思い立ち去ろうとした瞬間、ナイフが彼の背後の壁に深々と刺さった。突差にかわして難を逃れたが偶然この場所に立ち寄った敵に発見されてしまったようだ。幸い、この敵兵は銃器を持ち合わせていなかったようで、手持ちの武器はナイフだけのようだ。壁からナイフを引き抜くや否やライマンに襲い掛かる敵兵。しかしライマンは他の敵に気づかれないために銃器を使わずに敵兵に挑んだ。
しかし敵の素早い攻撃にナイフを抜く暇がない。敵がナイフを空振りしたとき、ライマンは相手の顔面を思い切り殴った。敵兵が怯んだ隙に更に体術を仕掛けるライマン。最後に敵兵を放り投げ、起き上がろうとする敵兵に横の薪に刺されていた手斧を抜き取りそれを頭に叩き付けた。
敵兵を仕留め、あとは部隊の合流地点に向かうだけだ、その時、背後で倒れていた敵兵が起き上がった。普通の人間ならば確実に死んでいるであろう損傷を受けてなおライマンに向かっている。
ライマンはこの敵の正体に気づいた。
『D細胞』を体内に取り入れ、超人的な肉体を持つ『ファゴッツァ』。
この男の正体は正しくそれであった。
驚異的な力で組み付いてくる『ファゴッツァ』。それを背後に投げ飛ばし先程の斧で頭部を殴打し、怯んだ隙に頚椎をへし折った。
ようやく動きを止めた敵兵を眺めながら自身に与えられた任務を振り返った。
ヘキジニア沖の調査に向かうため、自身の所属する基地から移動中、突如山中潜伏していた敵に襲撃され、自分だけはぐれてしまったのである。
他の隊員達は自分を探し、ここの近くまで来ているらしい。三十分ほど前に無線で連絡があった場所へ移動している最中にまた敵に遭遇してしまった。
今回の任務は前途多難な任務になりそうだ。
そう彼が考えていた時、森の中から声が聞こえてきた。
「曹長殿、ご無事ですか!?」
同部隊の隊員が救助に来たのだ。
部隊の隊員と無事合流し、ライマンはヘキジニア湾にある海軍基地へ向かった。
D細胞・通常の生物には見られない特殊な細胞。旧帝連のD-3級のようなおよそこの世では有り得ないような『D生物』という生物を構成する細胞且つほとんどの場合異常な生命力を持つ。『D生物』は一つのD細胞のみの者や、中には宇宙空間で活動できる者、D-3級のような兵器として生まれてきたような者もいる上、人間がどうゆう条件かは明らかにされていないがD細胞を取り込み『D生物』化する事例もある。例として旧帝連勢力下の組織の構成員、ヘキジニア開放同盟の構成員が上げられる。ヘキジニア解放戦線の構成員が変化したものは『ファゴッツァ』と呼ばれているタイプで東部戦線で初めて遭遇したものである
しかしながら東部戦線で確認された『ファゴッツァ』は元々旧帝連と敵対関係であった独立勢力などの構成員で、ヘキジニア開放同盟の構成員にはほぼ完全に自らの意思が存在するのに対し、こちらのタイプは多少は人間時代の意思が見られるものの本来敵対関係であったはずの旧帝連に操られ、破壊衝動のままに暴れ回っている。(D生物について1)