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プロローグ 神の恵みが崩れ去る時

新作です。これからよろしくお願いします。

仮想1990年代。

西方の豊かな国、カーロッタ。

産業が盛んなだけではなく、自然にも恵まれた

通称、" 神に愛された土地 "。


街の中心部には、かつて人々の欲を利用し、この地を滅ぼそうとした邪神、マヨイガを封印したとされる創造神テレサを奉る教会がある。カーロッタの民は、創造神テレサを深く敬い、何よりも信じていた。創造神の慈悲によってこの地には恵みが持たらされ、豊かな生活が出来るのだと、民は信じて疑わなかった。


しかし、十数年前。

1人の欲深い男によって、突如、カーロッタの平和は崩れ始める。


黒雲が空を覆い尽くす、とある嵐の日。


強欲な男は、創造神テレサの教会に突然現れ、


神官の男と、シスターである女を無惨にも殺害した。


神官とシスターの2人の娘にも、手をかけようとした。


1人の娘は、嵐を沈める儀式の最中だった。


もう1人の娘は、姉の側でロザリオを胸に当て、創造神テレサに祈りを捧げていた。


夫婦の双子の娘達。


男は、生まれつき、人に宿る魂の色が見え、強力な神通力を使うことが出来た。そして、儀式を執り行っていた姉よりも、側で控えている妹の方が、神通力を色濃く受け継いでいると、すぐに分かった。

幼いながらも成熟した魂を持つ妹。自分とよく似た力を持つ少女。


自身の野望を果たすためには、十分な人材。


男は、目の前で両親を殺され、泣き叫ぶ姉の胸元を軽く切り裂いて怪我を負わせた。動けなくなったのを確認すると、祭壇に奉納されていた禁断の書を持ち出し、妹を気絶させて連れ去り、血生臭い教会を後にした。


教会から少し離れた場所にある、創造神テレサの石像前。


男は口角を吊り上げると、禁断の書を開き


邪神の封印を解くための呪文を唱えた。



「Ich entfessle nun den aus dem Chaos entstandenen Gott. (「混沌に出でし神を今、解き放つ」)」




その瞬間、巨大な稲光が空をつんざき、創造神テレサの石像を真っ二つにした。


同時に、男の中に黒い何かが流れ込んで行く。



どこまでも強欲で傲慢な男は、その生まれ持った強すぎる神通力で、かつて創造神テレサが封印した、邪神"マヨイガ"を解き放ってしまったのだ。


自分の深すぎる欲のためだけに。


男の目的は、この世の全てを自分の物にし、全ての生命の糸を握り、その全てを支配すること。


そのため、邪神マヨイガの力がどうしても必要だった。

封印されている邪神を解き放ち、契約を結べば、この世の全てが手に入ると。


男の身体に流れ込み、その七つの大罪にも引けを取らない程の欲深さを気に入った邪神マヨイガは、喜んで、自分から男に手を貸すことにした。


契約は交わされ、男は世にも不可思議な闇の力を手にした。


全てを焼き尽くす、炎熱の力。



  邪神マヨイガによって授けられしその力の名は


          " ゲシェンク "

         (闇からの贈り物)



邪神の力を手にした強欲な男は、その後もカーロッタの民を脅かし続けた。



神官の男の古くからの友人で、カーロッタでも名の知れた研究者の男がいた。研究者は、夫婦の忘れ形見である娘の1人、双子の姉を引き取り、連れ去られた妹の捜索を始める。そして、亡き友人の無念を晴らすため、少しの情報を手がかりに、男の秘密を探りだす。


そして、神官夫婦が殺害された日、同様の嵐の夜。研究者はついに男の居場所と秘密を突き止めた。しかし、あと一歩の所で、秘密を知った代償として、研究者は口封じのために、男に殺害されてしまう。


男には、亡き妻との間に、幼い娘が1人、赤ん坊の息子が1人いた。

神官夫婦も殺され、研究者までもが殺された。

そして、それから数ヵ月も経たない内に、今度は男によって、カーロッタの中でも特に、創造神テレサへの信仰の深かった集落が焼き払われた。


邪神の力を思い知らせる。


ただ、本当にそれだけのために。

それだけの理由で。


数年、また数年と時が経つ内に、男の元には仲間が増えた。伝説と謳われる殺人鬼と、異国の武人。

最強と言っても過言ではない2人を従えた男は、さらに惨劇を起こし続けていた。

カーロッタの民達は、いつ殺されるから分からない恐怖に怯え、いつの日にか、男の作ったその組織のことを、軽蔑と恐れを込めて、


        " ドゥンケルハイト "

        (闇に呑まれし反逆者達)


そう、呼ぶようになった。



そして、時が戻り、現在。


カーロッタの辺境。森の奥。1つの大きな古い教会。


かつて、創造神テレサの信仰のために、100年前の民が立てた教会だった。そこには、あの強欲な男も気付かなかった創造神テレサの残した知恵の書と、神官が管理していた荘厳な祭壇があった。


古びているにも関わらず、今でも美しいこの教会には、数人の男女が住み着いていた。


その全員が、かつて、"あの男"に人生を踏みにじられた者達。


神官の父とシスターの母を殺害され、双子の妹を連れ去られた女性。


男の闇を暴こうとしたために、志半ばで散った研究者の忘れ形見である2人の姉弟。


理不尽な理由で故郷を焼き払われた2人の青年。


この5人の男女は、神官の娘であった女性の神通力を通して、全員が創造神テレサの知恵の書を開き、男の手にしたゲシェンクと同様の力を手にしていた。


汚れを知らない、ゲシェンクと対になる光の力。


  創造神テレサによって授けられしその力の名は


          " ゲシェント "

         (光からの贈り物)


ゲシェントを手に、ドゥンケルハイトを追う彼、彼女らは、カーロッタの民から、創造神テレサ様からの使いだと讃えられ、わずかに残った最後の希望を託されていた。故に付けられた名前は…


           " リヒト "

        (光に選ばれし聖者達)



家族の無念を晴らすため、復讐を遂げるため、彼、彼女らは日々、ドゥンケルハイトの闇を暴き、倒すために裏から行動を続けていた。



  これは

  光に選ばれし者達と、闇に呑まれし者達の物語。



  最後に笑うのは、光か、それとも闇なのか…。


続.

第1話をお楽しみに!

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