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第7話 勇者は壊し、管理者は止める

世界基盤保守局――通称、保守局。


 その名前が、城内で広まり始めたのは、

 稼働から三日目のことだった。


「ふざけた組織だな」


 そう吐き捨てたのは、神殿所属の高位司祭。

 白い法衣の胸には、神紋が輝いている。


「世界は神が管理している。

 人の手で“保守”など、思い上がりも甚だしい」


 その隣では、甲冑姿の男が腕を組んでいた。


 ――勇者。


 この世界が誇る、破壊と解決の象徴。


「魔王を倒せば、問題は解決する」


 彼は、まっすぐ俺を見る。


「結界が不安定?

 なら敵を殲滅すればいい」


 会議室の空気が、冷える。


 俺は、ゆっくりと息を吐いた。


「それで、前回はどうなった?」


「……何の話だ」


「勇者が魔王城で全力を出した直後、

 三都市で魔力供給が落ちた」


 水晶盤を起動する。


「結界の基幹式が、

 戦闘余波でズレたからだ」


 ざわめき。


「偶然だ」

「いや、ログが残っている」


 俺は指を鳴らす。


 魔導式の流れが可視化され、

 戦闘時刻と障害発生時刻が、完全に一致した。


「勇者は“強すぎる”」


 率直に言った。


「この世界は、

 その出力に耐えられる設計じゃない」


「貴様……!」


 勇者が立ち上がる。


 その瞬間。


 ――世界が止まった。


 いや、正確には違う。


 俺の視界だけが、別の層に入った。


 数値。

 魔力流量。

 因果干渉率。


 すべてが、理解できる形で見える。


 《管理者権限:限定展開》


 脳内に、淡々とした情報が流れ込む。


 これが――

 この世界での、俺の“能力”。


「安心しろ」


 俺は、勇者に向かって言った。


「止めたのは、お前じゃない。

 世界のほうだ」


 俺が一歩踏み出すと、

 勇者の魔力出力が、自然に下がっていく。


「な……何をした!?」


「何も」


 事実だ。


「お前の力が、

 世界の安全域を超えただけだ」


 司祭が、蒼白になる。


「まさか……

 世界そのものに干渉して……?」


「正確には違う」


 俺は淡々と告げる。


「元からある制限を、見て、触れるだけだ」


 世界は、壊れないように作られている。


 ただ――

 それを理解できる者が、いなかった。


「保守局は、勇者の邪魔をしない」


 だが。


「壊す行為は、許可制にする」


 沈黙。


 勇者は、悔しそうに歯を噛みしめた。


「……俺が、間違っていると?」


「いいや」


 俺は首を振る。


「お前は正しい。

 お前の役割としては」


 そして、続ける。


「だが、この世界を

 “続ける役割”は、俺たちだ」


 会議が終わる頃には、

 神殿も貴族も、完全には反論できなくなっていた。


 リーネが、小声で言う。


「……今の、チートですよね?」


「違う」


 俺は答える。


「本来あるべき管理機能だ」


 勇者は世界を救う。

 管理者は、世界を落とさない。


 その違いを、

 この日、全員が理解した。

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