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第6話 管理者が選ばれた理由

復旧から半日。


 王城の一室に、俺とリーネ、そして数名の魔導技師が集められていた。

 名目は「新組織立ち上げの打ち合わせ」。


 だが、本題は別だ。


「正式名称はどうしますか?」


 若い技師が、おそるおそる尋ねてくる。


「仮でいい。

 世界基盤保守局。やってることは変わらない」


 全員が、息をのむ。


 その名前の重さを理解しているからだ。


「……佐倉さん」


 リーネが、少しだけ言いづらそうに口を開いた。


「ひとつ、確認させてください。

 前から、気になっていました」


「何だ?」


「あなたは、どうしてこの世界に来たんですか?」


 部屋が静まる。


 俺は、少しだけ視線を落とした。


「俺にも、最初は分からなかった」


 正直な話だ。


「気づいたら、こっちにいた。

 召喚陣も、神の声もなかった」


 ざわめきが起こる。


「ただ、復旧作業をしている時に、

 確信したことがある」


 俺は、制御盤の簡易表示を起動する。


「この世界の魔導システム、

 設計思想が“似すぎている”」


 魔導式の流れ。

 フェイルセーフの考え方。

 権限構造の歪さ。


「まるで――

 未完成の運用環境だ」


「……偶然では?」


「偶然にしては、致命的な欠陥が多すぎる」


 俺は続ける。


「この世界は、

 “強い人間”を呼ぶ設計じゃない」


 一拍置いて、言った。


「直せる人間を呼ぶ設計だ」


 誰も、口を挟まなかった。


「召喚事故でも、神の気まぐれでもない。

 この世界そのものが、

 限界に達していた」


 だから――


「保守要員が、必要だった」


 リーネが、静かに頷いた。


「……管理者適性」


「そうだ。

 俺は勇者でも救世主でもない」


 端末を閉じる。


「世界が落ちないようにするために呼ばれた、ただの管理者だ」


 沈黙のあと、誰かが小さく笑った。


「……地味ですね」

「だが、今はそれが一番欲しい」


 年配の技師が、前に出る。


「佐倉殿。

 私を、この保守局に入れてほしい」


「俺もです」

「現場を、ちゃんと回したい」


 一人、また一人と手が挙がる。


 俺は、彼らを見渡した。


「言っておく」


 全員が背筋を伸ばす。


「ここは楽な職場じゃない。

 評価されにくく、責任は重い」


 それでも。


「それでも、世界は止めない」


 リーネが、はっきりと宣言した。


「世界基盤保守局、

 本日より正式稼働します」


 俺は、静かに頷く。


「ようこそ。

 ――落ちない側の仕事へ」


 こうして、

 世界を裏から支える組織が、動き始めた。

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