第34話 正義の声量
最初は、
祈りだった。
「管理者に、
判断の見直しを」
「救える命が、
まだある」
穏やかな声。
看板も、
暴力もない。
ただ、
人が集まっているだけ。
その輪が、
少しずつ
大きくなる。
「条件を、
公開しろ」
「選別は、
恣意的だ」
「なぜ、
彼らだけが?」
声量が、
上がる。
意味は、
同じまま。
「……組織化が
始まってます」
リーネが、
低く言う。
「扇動者が、
混じってる」
「言葉が、
揃いすぎてるな」
勇者が、
周囲を見回す。
広場。
一人の男が、
台に立つ。
「我々は、
奇跡を求めている
わけではない!」
拍手。
「公平を求めている!」
さらに拍手。
「管理者は、
力を持ちながら
それを独占している!」
ざわめき。
誰かが、
叫ぶ。
「そうだ!」
「……上手い」
リーネが、
呟く。
「暴力を
否定してます」
「ああ」
俺は、
頷く。
「だから、
止めにくい」
勇者が、
一歩前に出ようとする。
だが、
俺は止めた。
「今は、
出るな」
「放置するのか?」
「観測だ」
俺は、
静かに言う。
「越えるかどうかを、
見極める」
集会は、
解散した。
誰も、
傷ついていない。
器物損壊も、
ない。
だが――
空気が、
変わった。
その夜。
匿名の文書が、
各地に出回る。
《管理者判断
再検討を求める声明》
署名は、
数百。
内容は、
冷静で、
論理的。
「……これは」
リーネが、
目を伏せる。
「善意の皮を
被った……」
「刃だ」
俺は、
続けた。
「誰かが、
意図的に
研いでいる」
勇者が、
拳を握る。
「俺なら、
斬れる敵が
良かった」
「俺もだ」
俺は、
小さく息を吐く。
「だが、
これは人だ」
「守るべき
人だ」
沈黙。
遠く。
その動きを、
満足そうに
見ている存在がいる。
――怒りは、
育った。
次は、
方向を与えるだけだ。




