第31話 再現不能
異常検知は、
予定調和のように現れた。
《警告:
魔力循環・局所過負荷》
発生地点。
貴族領、研究施設。
「……始めたか」
俺は、
ログを閉じる。
リーネが、
顔を曇らせた。
「付与の、
再現実験ですね」
「無断でな」
勇者が、
即座に立ち上がる。
「行くぞ」
施設は、
騒然としていた。
「抑えろ!
魔力が逆流してる!」
「術式を切れ!」
「切れない!
絡まって――」
床に刻まれた陣は、
歪んでいた。
似ているが、
決定的に違う。
「誰が設計した?」
俺が問う。
「神殿から流れた、
資料を……」
リーネが、
歯を噛みしめる。
「……抜粋ですね」
「ああ」
俺は、
即座に理解した。
「前提条件を、
削っている」
被験者が、
叫ぶ。
「見える……
見えるぞ!」
だが、
次の瞬間。
「止まらない……
情報が……!」
魔力が、
暴走する。
身体が、
耐えきれず
崩れ始める。
「――下がれ!」
勇者が、
剣を構える。
俺は、
一歩前に出た。
「接触は不要」
《管理者権限:
強制遮断》
世界が、
一瞬だけ
静止する。
陣が、
砕け散った。
被験者は、
床に倒れた。
生きている。
だが――
戻らない。
「……どうして」
研究者が、
震える声で言う。
「同じことを
したはずだ……」
「違う」
俺は、
淡々と答える。
「君たちは、
“力”を再現しようとした」
「俺がやったのは、
調整だ」
勇者が、
低く言う。
「同じに
見えたけどな」
「見えただけだ」
俺は、
被験者を見る。
「付与は、
能力じゃない」
「世界と個体の
噛み合わせ作業だ」
リーネが、
静かに続ける。
「条件、
時間、
精神状態」
「全部、
見てました」
施設の外。
貴族が、
蒼白な顔で立つ。
「……責任は?」
「ある」
俺は、
否定しない。
「無断使用を、
止められなかった」
「では――」
「だから」
俺は、
目を合わせる。
「全面禁止だ」
空気が、
凍る。
「管理者権限で、
付与は封印する」
「例外は、
現場対応のみ」
反論は、
出なかった。
その夜。
悪魔が、
どこかで
記録を更新する。
――再現不能。
管理者のみ。
脅威度、
上方修正。




