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第30話 噂という名の拡散

復旧から、

 半日。


 報告書は、

 一つの事実を示していた。


「……早すぎる」


 リーネが、

 眉をひそめる。


「現地の話、

 もう広まってます」


「どんな形で?」


「『管理者が、

 人に力を与えた』」


 勇者が、

 低く息を吐く。


「尾ひれが付くな」


「当然だ」


 俺は、

 淡々と答える。


「人は、

 理解できない力を

 物語にする」


 貴族領。


 応接間で、

 男たちが囁く。


「一時的とはいえ、

 力を与える?」


「管理者が、

 兵を作れるということか」


「いや……

 忠誠心を植え付ける

 可能性もある」


 結論は、

 まだ出ない。


 だが、

 警戒は始まった。


「調査を」


「接触は?」


「今は避けろ。

 様子を見る」


 一方、

 旧神殿派。


 再編途中の会堂。


「……やはり、

 危険だ」


 司祭が、

 低く言う。


「人に力を与えるのは、

 神の領域」


「管理者は、

 その境界を踏み越えた」


「民は、

 奇跡に弱い」


 沈黙の後、

 誰かが呟く。


「……封じるべきだ」


 保守局。


「否定声明、

 出しますか?」


 リーネが、

 確認する。


「いや」


 俺は、

 首を振る。


「否定は、

 噂を強化する」


「じゃあ……」


「ログを公開する」


 勇者が、

 目を向ける。


「全部?」


「制限と危険性を含めて」


 リーネが、

 少し驚く。


「それ、

 不利になりません?」


「隠す方が、

 危険だ」


 俺は、

 端末を操作する。


「管理者は、

 “万能”ではないと

 示す必要がある」


 公開後。


 反応は、

 割れた。


「誠実だ」


「信用できる」


 同時に。


「やはり危険だ」


「制御できるのか?」


 世界は、

 二つに分かれ始める。


 勇者が、

 静かに言った。


「……守る側に

 立つって、

 大変だな」


「ああ」


 俺は、

 頷く。


「だが、

 やめるつもりはない」


 その夜。


 匿名の文書が、

 貴族と神殿に届く。


 《件名:

 管理者付与の再現性について》


 差出人不明。


 だが、

 内容は具体的だった。


 ――実験は、

 すでに始まっている。

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