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第23話 剣は、誰のために

神殿正門。


 白い石畳に、

 一人の男が立っていた。


 勇者だ。


「通行許可は?」


 門番が、

 形式的に問いかける。


「ない」


 勇者は、

 即答した。


「……ならば――」


 門番が、

 槍を構えかけた瞬間。


 剣が抜かれた。


 だが、

 地面に向けて。


 金属音が、

 神殿前に響く。


「一歩も、

 踏み込むな」


 低く、

 しかしはっきりした声。


「これは、

 警告だ」


 門番たちは、

 動けなかった。


 勇者の剣は、

 彼らを向いていない。


 だが――

 神殿そのものを断つ角度だった。


 神殿内部。


「……勇者が?」


 高司祭が、

 顔を歪める。


「単独です」


「止めろ!

 神殿の威信に――」


 言葉は、

 最後まで続かなかった。


 扉が、開いた。


 勇者が、

 ゆっくりと歩いてくる。


「拘束されている人物がいる」


 真っ直ぐ、

 司祭を見る。


「解放しろ」


「勇者よ!」


 司祭が、

 声を荒げる。


「それは、

 神殿の正式な――」


「現場を知らない命令だ」


 即座に、

 切り捨てる。


「俺は、

 その結果を

 見てきた」


 司祭が、

 唇を噛む。


「……貴様は、

 神殿に逆らうのか」


「違う」


 勇者は、

 首を振った。


「神殿が、

 世界に逆らっている」


 その一言で、

 空気が死んだ。


 地下拘束区。


 白い鎖。

 沈黙。


 そこに――

 足音が響く。


「……来たか」


 俺は、

 目を開ける。


「遅れて、

 すまない」


 勇者が、

 剣を収めたまま立っていた。


「状況は?」


「悪いが、

 まだ致命的じゃない」


 俺は、

 正直に言う。


「だが、

 長引けば壊れる」


 勇者は、

 頷いた。


「……なら」


 彼は、

 鎖を見る。


「俺が、

 切る」


「いいや」


 俺は、

 首を振る。


「神殿に、

 切らせろ」


 勇者が、

 驚いた顔をする。


「責任を、

 明確にする」


 数秒後。


 上から、

 命令が降りた。


『拘束、

 解除せよ』


 鎖が、

 光を失う。


 俺は、

 立ち上がった。


「……行こう」


 勇者が、

 小さく笑う。


「ああ」


「だが」


 俺は、

 歩きながら言った。


「次は、

 剣じゃ済まない」


 勇者は、

 静かに答えた。


「分かっている」


 神殿の外。


 光が、

 眩しかった。


 そして――

 世界は、

 再び動き出す。

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