第21話 聖なる拘束
保守局の朝は、
いつもより静かだった。
「……妙ですね」
リーネが、
制御盤から顔を上げる。
「外部通信、
全部遮断されています」
「予告なし?」
「はい」
その瞬間。
結界が、外側から展開された。
「――神殿結界!」
誰かが叫ぶ。
同時に、
白装束の兵が、
保守局内になだれ込んできた。
「神殿命令だ!」
「全員、
その場から動くな!」
空気が、
一気に凍る。
俺は、
前に出た。
「理由を聞こう」
指揮官らしき男が、
巻物を掲げる。
「神殿の名の下に宣告する」
「保守局は、
世界基盤に対する
不正干渉の疑いがある」
予想通りだ。
「管理者、
お前を拘束する」
周囲が、
ざわつく。
「待ってください!」
リーネが、
一歩前に出る。
「私たちは、
世界を――」
「黙れ」
冷たく遮られる。
俺は、
手を上げた。
「抵抗するな」
全員が、
俺を見る。
「管理者……?」
「これは、
力で止める局面じゃない」
白い鎖が、
俺の腕に絡む。
神殿製の拘束具。
魔力遮断仕様。
「……悪趣味だな」
呟く。
だが、
あえて外さない。
「連行しろ!」
兵たちが、
俺を囲む。
その時。
「待て」
低い声。
勇者だった。
「拘束理由が、
曖昧すぎる」
「勇者殿、
これは神殿の――」
「現場判断は、
俺がしてきた」
勇者は、
一歩踏み出す。
「その結果、
世界は救われている」
「……口を慎め」
指揮官が、
声を荒げる。
だが。
俺は、
首を振った。
「勇者」
視線を合わせる。
「今は、
動くな」
「だが……!」
「信じろ」
短く、
それだけ言った。
勇者は、
歯を食いしばり、
立ち止まった。
俺は、
そのまま連行される。
保守局の扉が、
閉まる。
その瞬間。
制御盤の奥で、
小さな警告が灯った。
《自動保全モード:起動待機》
誰も、
それに気づかない。
神殿も。
悪魔も。
そして――
拘束した本人たちすら。




