第20話 試される剣
勇者は、呼び出されていた。
神殿、
かつて“聖域”と呼ばれた広間。
「……用件は」
彼は、
剣に手をかけず、
正面を見据える。
「勇者よ」
高司祭が、
厳かに口を開く。
「近頃、
保守局との接触が多いな」
「現場に、
必要だった」
「必要、か」
司祭の一人が、
冷たく言う。
「だが、
市民は不安を抱いている」
水晶に、
映像が映る。
壊れた街。
混乱する人々。
「これらは、
保守局の“実験”だと
我々は把握している」
勇者の、
眉が僅かに動く。
「……事実ではない」
「だが」
高司祭が、
声を強める。
「君の沈黙が、
疑念を広げている」
空気が、
重くなる。
「勇者よ」
司祭は、
最後通告のように言う。
「保守局と、
距離を置け」
「さもなくば――」
勇者は、
静かに口を開いた。
「……俺に、
何をさせたい」
「簡単なことだ」
司祭は、
微笑む。
「次の障害現場で、
保守局の指示を無視しろ」
「剣で解決し、
市民に“安心”を与えろ」
沈黙。
勇者は、
拳を握る。
「それは……」
「命令だ」
即座に、
言い切った。
その瞬間。
勇者は、
剣を抜いた。
司祭たちが、
息を呑む。
だが――
振るわない。
剣先を、
床に下ろす。
「……俺は」
低い声。
「守ると決めた」
「斬るためじゃない」
広間が、
凍りつく。
「保守局の判断を、
無視しろと言うなら」
勇者は、
真っ直ぐに司祭を見る。
「それは、
世界を危険に晒す命令だ」
「……反逆か?」
「違う」
勇者は、
首を振った。
「選択だ」
剣を収め、
背を向ける。
「次に現場で会う時」
彼は、
振り返らずに言った。
「俺は、
“守る側”に立つ」
扉が、
閉まる。
残された司祭が、
歯噛みする。
「……やはり、
管理者が原因か」
別の司祭が、
低く呟いた。
「なら、
次は――」
その言葉は、
最後まで語られなかった。
闇が、
聖堂の隅で、
静かに笑ったからだ。




