第17話 管理者は、脅威である
闇の深層。
世界の裏側、
神も勇者も届かない場所。
「――失敗、か」
悪魔は、
自らの“本体”で呟いた。
黒曜石の玉座。
歪んだ魔力の海。
その中央で、
悪魔は笑う。
「いや……
正確には、
想定外だな」
管理者。
あの男。
神殿の記録にも、
古い契約にも、
存在しないはずの役割。
「世界を壊す者は、
いくらでもいた」
勇者。
魔王。
神々。
「だが――
世界を“止める”者は、
初めてだ」
空間に、
いくつもの映像が浮かぶ。
同時多発障害。
結界網の再同期。
旧採掘区の切断判断。
「迷いがない。
感情で動かない」
そして。
「それでいて、
人間だ」
悪魔は、
低く笑った。
「厄介だな」
管理者権限。
あれは、
神の力ではない。
「……もっと古い」
世界が“運用され始めた頃”の、
安全装置。
本来なら、
眠ったままであるべきもの。
「神殿が、
余計なことをした」
勇者を担ぎ上げ、
世界を揺らし、
仕様を歪めた。
その結果――
管理者が目覚めた。
「神殿は、
もう用済みだな」
指を鳴らす。
闇の中で、
別の影が動く。
「管理者は、
直接は殺せない」
悪魔は理解している。
世界が、
それを許さない。
「なら――
孤立させる」
仲間。
信頼。
世論。
「管理者は、
独りになった瞬間に脆い」
ふと、
悪魔は楽しそうに言った。
「それに……
人間は、
自分が“正しい”と思うほど、
壊れやすい」
玉座から立ち上がる。
「さあ」
闇が、
世界へと滲み出す。
「次は、
管理者狩りだ」
そして――
「君が、
どこまで耐えられるか」
悪魔は、
心底楽しそうに、
笑った。




