第16話 管理者と、管理外
制御室の警報が、
すべて静まった。
だが――
静かすぎる。
「……来る」
俺は、
魔力盤ではなく、
世界の奥を見た。
《管理者権限:深層接続》
空間が、
歪む。
制御室の中央に、
黒い影が“投影”される。
「やあ」
軽い声。
「やっぱり、
君だったか」
悪魔。
だが、
今まで感じていたものとは、
格が違う。
「名乗れ」
俺は、短く言った。
「失礼」
影が、
芝居がかった礼をする。
「私は――
管理外存在」
空気が、
重くなる。
「神でも、
勇者でもない」
「ええ」
悪魔は笑う。
「世界の“想定外”。
仕様の隙間に、
生まれた存在さ」
なるほど。
だから、
結界も、神殿も、
完全には捉えられない。
「……だが」
俺は、
一歩前に出る。
「管理外であることと、
管理不能であることは違う」
悪魔の笑みが、
初めて止まった。
「ほう?」
俺は、
手を伸ばす。
《管理者権限:
対象識別――強制》
世界が、
答えを返した。
『対象確認:
外部干渉体
分類:異常プロセス』
「……なっ」
悪魔が、
明確に動揺する。
「識別されるのは、
久しぶりか?」
《管理者カウンター起動》
視界に、
赤い拒否線が走る。
「君は、
この世界を“使っている”」
「それが?」
「だが」
俺は、
はっきり告げた。
「利用規約は、
管理者が決める」
悪魔の周囲の、
魔力が、
減衰する。
「待て……!
それは、
想定されていない!」
「そうだ」
俺は、
淡々と答える。
「だから、
今から想定する」
悪魔の影が、
不安定に揺れる。
「……面白い」
それでも、
笑った。
「君は、
敵に回すと厄介だ」
「敵に回らなければ?」
「……次は、
本体で会おう」
影が、
霧散する。
制御室に、
静寂が戻った。
「……今の、何?」
リーネが、
呆然と聞く。
「管理者の仕事だ」
俺は、
短く答えた。
だが、
胸の奥で、
確信していた。
悪魔は――
本気になった。




