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第13話 神は沈黙し、言い訳が響く

事件の翌朝。


 神殿は、声明を出した。


『昨夜の儀式は、

 一部の暴走した司祭によるものであり、

 神殿の本意ではない』


 その文面は、

 丁寧で、慎重で、

 そして――冷たかった。


「……切り捨てましたね」


 保守局の執務室で、

 リーネが呟く。


「ああ。

 責任を、個人に押し付けた」


 だが、それで終わらなかった。


 昼には、第二報。


『当該司祭らは、

 悪魔教に唆されていた可能性がある』


 夕方には、第三報。


『神殿は被害者であり、

 むしろ信仰を冒涜された側である』


 声明を重ねるたび、

 言葉は増え、

 信頼は減っていく。


「……言ってること、

 微妙にズレてません?」


「ズレているな」


 俺は、即答した。


「事実じゃなく、

 都合で書いている」


 神殿内部。


 円卓の空気は、凍っていた。


「なぜ、

 儀式を止めなかった!」


「止めようとした!」


「いや、黙認した!」


 責任の押し付け合い。


 誰も、

 “判断そのものが間違っていた”

 とは言わない。


「神は沈黙している!」


「だからこそ、

 我々が代行する必要があった!」


「それが、

 悪魔召喚だったのだぞ!」


 怒号。


 だが、その中心に、

 空席があった。


 ――過激派の司祭長。


 昨夜の混乱の中で、

 姿を消していた。


「……逃げた?」


「いや」


 一人が、低く言う。


「連れて行かれた」


 誰に、とは言わなかった。


 だが、

 全員が理解していた。


 その頃。


 王城では、

 非公開の会合が開かれていた。


「神殿の信用は、

 急速に落ちています」


 宰相アルベルトが、淡々と告げる。


「地方都市から、

 神殿への抗議が届き始めました」


「保守局の関与は?」


「評価されています。

 “止めてくれた側”として」


 俺は、黙って頷いた。


「神殿を、どうしますか?」


 誰かが尋ねる。


「解体はしない」


 宰相は、即答した。


「信仰そのものを壊すのは、

 危険すぎる」


 そして、続ける。


「だが、

 権限は削る」


 静かな宣告。


「世界基盤に関わる権限は、

 すべて保守局へ移管する」


 会議室に、

 短いざわめき。


「神殿は、

 “祈る場所”に戻る」


 それが、

 最大の罰だった。


 夜。


 リーネが、報告書を閉じながら言う。


「……失墜、ですね」


「ああ」


 俺は、窓の外を見る。


「神殿は、

 自分で崩れた」


 誰かを守るためではなく。

 信仰のためでもなく。


 責任から逃げるために。


 水晶盤に、

 新しい警告が灯る。


 《未解決:悪魔側関与》


 俺は、視線を戻す。


「まだ、終わっていない」


 神殿が崩れた隙間を、

 必ず、誰かが狙う。


 ――悪魔は、

 そこにいる。

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