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ほうか!
寒い夜だった。
雪は降っておらず、空気は極限までに乾いていた。
男が手に持っていた新聞紙にライターで火をつけると、それはあっという間に紅蓮の炎へと育った。
丸海出版社の玄関先に灯油をぶち撒くと、男は火のついたそれを、前へ投げた。
「カネなんてどーでもいいんだよ!」
炎が玄関のガラス扉を叩く。
「あれは俺が書いたものだということを! 世間に公表しろ!」
すぐ横の非常用扉が開き、中から警備員が飛び出してきたのを見ると、男はそちらへ灯油をぶっかけた。
あっという間に炎ダルマになった警備員の横をすり抜けて、男が建物内へと侵入する。
野次馬たちが何事かと集まってきた時には、ビルの一階は既に赤々とした炎に包まれていた。
「うあー……」
母親と一緒にやってきた五歳の女の子が、嬉しそうに笑った。
「あったかいねぇ! おかーさん、あったかいよ!」
ビルの中からは、男の最期の声が、しばらくの間、聞こえていた。
「ハハハハハ! 燃えろ! 燃えろ! 俺を認めない世界など、跡形もなく燃えちまえ!」




