ひひひひひひ!
男が原稿を持ち込んだ丸海出版は、ホラーに限らず総合的にすべてのジャンルを扱う大手の出版社だった。
アポイントメントは取ってあった。
しかしロビーに現れた小太りの編集者は、やたらと忙しそうに腹の肉を揺らし、急いで椅子に腰を沈めると、言った。
「失礼ですが、今、忙しくてね。あまりお相手している時間を割けないんですよ。何文字の作品なんですか?」
「五千文字ほどです」
男はそう言いながら、ガラステーブルに置いていた大判の茶封筒を両手で差し出した。
「預からせてもらってもいいですか? 時間のある時にゆっくり読ませていただきます。今、忙しいんですよ」
編集者は言葉の通り、かなり忙しそうだった。
仕事の邪魔をしては悪いな──原稿を渡すだけでも、足を運んだ意味はあることだし──と思い、男は爽やかな笑顔でうなずいた。
「よろしくお願いします」
「後日、感想を伝えますので、お電話番号を──」
快くメモに番号を書いて渡すと、ぺこりと一礼し、男はエントランスを出ていった。
自信はあった。
ホラーでも受けてくれる出版社なら、自分の作品は必ず評価されると自負していた。
何しろ本物の呪いのかかった小説なのだ。
男は胸を躍らせながら、小太りの編集者からの電話を待った。




