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冥刻のヴィレヤ  作者: おはぎ
序章
1/17

冥刻の夜

 少し昔話をしよう。千年以上も昔のことだ。


 争いが絶えなかった時代。百を超える大国と、幾千の小国が衝突し、幾万の命が失われていった。


 その混沌の中に、ひとりの青年が現れた。名をブーリ。魔術と呼ばれる不思議な力を操り、戦乱を治めた彼は、数多の名声を手にし、そして「アルザ=ゼルディア帝国」を建国。人類をひとつにまとめ上げた。世界に平和が訪れ、人々は歓喜に湧いた。


 だが、それは束の間の静寂だった。


 時は流れ、アルザ=ゼルディア歴85年。空には、満ち欠けることのない完全な月が昇っていた。雲ひとつない夜。


 その月が空にある時、その刻を人々は“冥刻”と呼んだ。


 冥刻の夜には、魔族が現れる。古よりそう言い伝えられており、人々は決して外に出ようとはしなかった。


 だが、その夜は違った。一人の少年が、両親の目を盗み、外へと飛び出した。そして残虐非道なる魔族に、喰われた。


 その数日後。世界各地に突如として魔族が姿を現し、人々を次々に襲いはじめた。第三代皇帝・オーディンは、すぐさま軍を興し「魔族滅亡」を掲げた。再び戦火が世界を覆い、人々の血が大地を染めた。


——その後の記録は、一切語られていない。


 千年の時が立ち、今や人類は平和を享受している。魔術機構国家「ラグ=アーカノメトリア」の成立以降、大きな争いは起きていない。


 だがかつての戦いの結末は、今なお謎に包まれている。「人類が勝利した」と語る者がいれば、「魔族が勝ったがすぐに滅びた」という声もある。「戦いの果てに、世界そのものが一度滅んだ」と語る者さえいる。


 それでも、人類は今、平和に暮らしている。つまり、魔族は既に滅びたということだ。誰もがそう信じていた。


 これは人知れず魔族と戦い続ける二人の少女の、出会いから別れまでを綴った物語。


 強さを渇望する者と、平和を願う者が交差する、人知れぬ“冥刻”の物語である。

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