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勘違い魔王のVRMMO征服記  作者: 愛良夜
第二章 オリュンポス大陸
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長い眠りへその3

クロウが目を覚ましたのは、墓守のおじいさんに起こされたからだ。感謝を告げ、人のいないところで転移魔法で一旦自宅に帰る。シャワーを浴び、身支度を済ませた後、クロウはミナトの元へ会いに行く。


「ミナトいる?」

「お、クロウさん、お久しぶりです」

「久しぶり、最近どう?」

「ぼちぼちいい感じです」


やはりミナトには上に立つ才能があったらしく、中央独立領を除いてミナト領が一番財政的にも繁栄していた。食料自給率や税収を見てみると、毎月上昇しているようで、税率は3%ほどのはずだったが、かなり国財は豊かになっていた。


「おお、やるじゃん、このままいけば他の国よりかなり強くなれそうだな」

「本当ですか?」

「うん、俺が保証するよ」

「よし」


ミナトは何か意を決したように、再び書類仕事を再開した。武器製造と傭兵稼業で食べているこの国だが、他の場所からの移民が食料生産などに携わっており、そのおかげで美味く回っているようだ。


東部貴族領にも行ってみる。やはりというか、少しギスギスしており、どうやら反乱中は共通の敵がいたからまだ良かったものの、今ではそれぞれを牽制しあっていがみ合っているようだ。うーんしょうがないと言えばしょうがないけど、これはこれで少し悲しい。


空中からざっと東部を見渡し、特に問題ないようなので、今度は中立領へ向かった。とはいうものの、知り合いも何もいないのでざっと見て回る。うーんよく言えば平和、悪く言えば普通。議会制政治をしているとは言え、まあ上が何も動きを起こさないんじゃあ下も何もない。適当にリンゴを1つ買って、食べながら次の場所へと向かった。


聖セシリア学園、野外戦闘訓練場。セシリアから話を聞いたちゃちゃ丸からのメッセージを見たクロウは、転移魔法ではなく空を飛んで南国の聖セシリア学園へやってきた。


「はいみんな!昨日の授業で話したように、今日は先生と真面に魔法戦ができる先生を呼んできたよ!」

「あっ、どうも、本職は魔法使いです。クロウです」


嘘です。本職は死霊使いです。でも氷獄凍将でも召喚したら阿鼻叫喚になりそうなのであくまで魔法使いと言っておく。


「はい、そういうことで、今日はここでクロウ先生と本気の魔法戦をしまーす」

「え!?」

「はい、じゃ、クロウ先生よろしくお願いします」

「おい聞いてないぞ!」

「みんなも、最強の魔法使いである私と、最強の()()使いであるクロウ先生の()()の魔法のぶつけ合い、しっかり見て勉強してね」


気が付くと、セシリア含めて、聖セシリア学園の全先生がやってきた。おい授業はどうしたお前ら。


「しょうがないなぁ~」


まあせっかくだからクロウもここら辺でたまったMPを使うことにした。


「クラスⅧ大規模魔術<鏡世界(ミラーワールド)>、発動」


世界が反転する。偽世界ならどれだけ暴れまわっても学校への影響はない。


「祖は守りの岩石にして守護の御神、不動の大山脈にして動かずの化身、御身の力を借りて皆々を守り下され、クラスX大規模魔術防壁<不動岩山の大神壁>」


観客全員を防御魔術で保護する。鏡世界は立体三次元魔法陣で発動させる。これも勉強のためだ。


「よし、これなら大丈夫だろう、お待たせちゃちゃ丸」

「ありがと、じゃあ、やろうか!」


物凄い圧と共にちゃちゃ丸が<魔力錬成>を始める。それと同時に彼女はカバンから濃碧色のポーションを何本か飲みだした。どうやら自動MP回復量とMP上限を一時的に増やすポーションのようだ。


「じゃあ、始まりの1発行くよ!大魔導砲!」


以前よりもさらに数十倍の威力を持つ魔法の奔流がクロウめがけて飛んでくる。これなら小さくない都市1つ簡単に吹き飛ばせるだろう。


「深淵魔法<喰らい大口(^&$%^#()>」


言語化不能な詠唱魔法で魔法を発動する。クロウの目の前の黒い球がちゃちゃ丸の大魔導砲に触れた瞬間、瞬時に巨大な大口となって、大魔導砲を丸呑みにした。


「<火炎暴風大嵐><水風混合大鎌鼬><土木風裂大砲撃><光の制裁><闇の暗撃>」


凶悪な混合魔法がちゃちゃ丸の魔法陣から止めどなく飛んでくる。地形を塗り替えながら、クロウの方へやってきた。


「<反転魔術>発動」


クロウの左手からそれぞれの魔法を相殺するように真逆の魔法が飛んでいく。属性の相克関係を利用したクロウの反撃は非常に有効的にちゃちゃ丸の魔法を打ち消した。


「クラスⅦ魔術連続発動<斬裂風弾>」


触れた瞬間、鎌鼬と共に斬裂する風の弾丸を何度も発射する。発射速度が速く、ちゃちゃ丸は相殺できる魔法を発動できないと気づき、飛行魔法で空を飛びだした。そして、空を飛びながらちゃちゃ丸は空中に魔法陣を描き出した。無数の魔法陣が空に生成され、さらに<追尾>と<固定>の効果を持たせた後、ちゃちゃ丸はクロウとの空中魔法戦を始めた。


「クラスⅤ連続追尾魔術<岩石尖槍>」


地面から無数の鋭い岩の槍がちゃちゃ丸に向かって飛んでいく。クロウも<追尾>の効果を持たせたので、どれだけ不規則に動いても振りまけない。


「くっ、しょうがない、<魔術砲>起動!」


空で固定された魔法陣がクロウの岩の槍に向かって魔術砲を打ち出す。クロウの槍を追尾するように飛んでいく魔術砲は彼女に当たりそうな岩槍を的確に破壊していった。


「破壊の奔流、無へと帰還する原初の大魔法、崩壊と再生を産み、あらゆる敵を撃ち滅ぼせ!<魔滅砲>」


白い透明な光がクロウの深淵魔法を安々と打ち消す。驚いたクロウは空中で大きく回避行動をとったが、髪の毛を数本かすってしまった。


「ほ~魔滅砲、初めて見た」

「私の切り札よ」


そういいながらちゃちゃ丸の空中魔法陣からもこの魔滅砲が飛んでくる。数は少ないものの、しっかりとクロウを追尾してくる魔滅砲は厄介だった。


「クラスⅡ連続魔術<泥の人形>」


泥の人形を魔滅砲が追っていく。流石に魔滅砲は彼女への負担も大きいらしく、空中を飛ぶ速度が低下していた。そろそろケリをつけるか。岩の槍を引き続き彼女に襲い掛からせ、魔滅砲の行き先を制限する。その間にクロウは上へ上へと飛んでいく。天高く太陽を背にしたクロウは両手で魔法陣を作り出した。口では詠唱、両手では魔法陣を生成する。ちゃちゃ丸は止めなければと思っているものの、太陽を背にしたクロウに狙いを定めるのは難しく、同時に襲い掛かる岩の槍の処理もしなければいけないので、ちゃちゃ丸は全力で対応策を考えていた。


「空に浮かぶ一番星、万物を育む母なる惑星にして異端へ裁きを下すもの。天罰の化身にして原初と終焉を齎す大星よ!ここに顕現し我が敵を潰せ!クラスX大規模星魔術<星の終焉>!」


太陽を隠すほどの巨大な星が現れる。その星は何のためらいもなく、どんどんと加速するようにちゃちゃ丸の方へと落ちていく。ちゃちゃ丸は必死に逃げようとするが、引力に惹かれ動くことができない。彼女が全力でクロウの星へ魔滅砲を打ち込んでいるが、破壊することはできず、彼女はMP切れを起こして、その場に座りこんでしまった。


それを見たクロウは、あきらめたように目をつぶったちゃちゃ丸に当たる前に、生み出した星を消して、鏡世界を解除した。せっかくだからと思い、観客にかけた防壁魔法はそのまま全員にそのまま付与しておくことにした。


「と言う事で、今回は先生の完敗です。みんな、魔術だからってバカにせず、魔法が使えるからって奢らず、これからも研鑽を重ねていってね!」


クロウも簡単に観客達を鼓舞して、軽く学園の先生たちと食事をとった後、クロウは北帝領の自室に戻った。

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