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勘違い魔王のVRMMO征服記  作者: 愛良夜
第二章 オリュンポス大陸
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マキナと計画

AIとホムンクルスはこのゲームでは近しくて遠い存在として設計されていた。クロウがホムンクルスであるクロ達を製造する時は死霊術を中心に肉と魂で作り上げたが、AIであるノーフェンは純粋な科学技術の結晶である。そのため、機械的修理しかできないノーフェンは、クロウにとって優先保護対象に含まれていた。


「マキナ、さん?えっと」

「呼び捨てで構わない、ここにいる私はあくまで精神体、機神としての権能はほぼ使えないが、知恵はいくらでも使える」

「わかった、その身体には慣れたか?」

「ああ、流石私を降ろせるだけの存在だ、型にとらわれないこの身体は()()()()()であるからこそなせる技術だろう」

「流石、して、計画は?」

「もうすぐ完成する、だが、本当にいいのか?完全自立AI管理型全自動都市、いわゆるAIに完全に管理された都市」

「構わないさ、長いことこっちには帰ってこれない、それに、いつまでもベルアル達に任せっぱなしっていうのも申し訳ないし」


マキナは真剣な顔でクロウを見つめる


「クロウ、機械と科学技術の神として、本気で言う、AI管理都市は、必ず滅ぶ。数年後か、数十年後か、数世紀後かわからないが、必ずすべて砂に還る。それでもか?」

「ああ、いいんだよ、歴史に名を遺せれば」

「........」


マキナはため息をついたが、クロウの本気の顔を見ると、意を決したように部屋から出て行った。


それからクロウはマキナに現在存在する汎用型エインヘリアル2万機を稼働させ、クロウ領の大改造を始めた。スケルトンや召喚獣を一度全て還らせ、マキナのために高位の労働用召喚獣を召喚することにした。


「召喚:<メタリックスライム>」


無数の金属製スライムを召喚する。マキナと同じ、金属でできた不定形なスライムは、マキナの望む知能と形態を取ることができる。


「マキナ、3000体ほどいればいいか?」

「十分だ」


マキナはスライムに1つずつ触れていくと、次々と人型に変形していった。そしてクロウがマキナに渡した賢者の英石を使って、次々とクロウも見たことのない材料を作りだし、人型になったスライムに渡していった。


「クロウ、こっちに」

「ん?あばばばばばばば!」


マキナはいきなりクロウの頭をつかむと、クロウの頭に直接様々な物質と物体の情報を流し込みだした。クロウは膨大な情報の波に頭がはちきれるかと思ったが、数分後には無事に頭痛程度で済んでいた。


「<天上の木材>?<極楽の浄石>、<悪魔の瞳>....」

多元宇宙(パラレルワールド)に存在するありとあらゆる機械文明や科学文明の物質と物体の製造方法とその派生を頭に叩き込んだ。多くはまだ使えないが、この()()が進むにつれて製造できるようになるだろう」

「末恐ろしいものもあるな...」

「ああ、だが全て滅んだ。たった1つの例外も無くな」


クロウの衛星兵器の数世紀先を行く未来兵器の素材もあったが、そんな技術を持つ世界も例外なく滅んだと考えると、彼らの結末に背筋が震えた。


そうしてクロウは残りの事はマキナに任せ、先にベルアルの元へ向かった。


「クロウ」


ベルアルのいる会議室まで向かおうとしていたが、途中で誰かに名前を呼ばれたので振り返る。そこにいたのはベルアル本人だった。


「クロウ、大事な話がある、今すぐ最高軍事司令部まで」

「ベルアル?」

「いいから」


ベルアルは何も言わずにクロウの手を取ると、急いで司令部に向かった。


司令部にはすでに北帝領の軍事統治者が全員、それだけではなく他にも多くの財務官、科学技術官など、北帝領各省の最高省長も1人残らず全て集まっていた。


「これで全員だな」


ベルアルが全員いるのを確認すると、彼女のそばにいるベオスとベルクが全角投影機のスイッチを入れる。議題は、クロウ領の完全AI化計画についてだった。どうやら数日前に既にマキナと話をしていたみたいで、クロウ領の完成後、時期を見ていくつかの技術を北帝領全域に採用するようだ。だがマキナにも言われたように、過ぎた科学技術は文明滅亡のきっかけとなる。クロウ領だけならまだしも、現状世界最強ともいえる北帝領に()()()が起こったら、おそらくこの世界が本当に滅んでしまう。


だがベルアルはそうならないように、完成したクロウ領とその技術を完全に管理下に置くために日夜会議を繰り返しているようだ。今回クロウを呼んだ理由はその技術を使う許可と管理の許可のようだ。マキナ曰く、最高管理者権限はマキナとクロウに設定するので、ベルアル達にはその1つ下の高位管理者権限を付与する権限が最高管理者2人に承認されないと付与できないようで、マキナは既に承諾しているので、後はクロウの承認が必要だった。


「もちろん、後でマキナにも言っておくよ」

「ありがとう」


ベルアルはそれだけ言うと、再び会議を再開した。クロウは最後まで残ろうとしたが、マキナに<テレパシー>で呼ばれたので、クロウ領に戻ることにした。


「クロウ、システムが出来上がったから、今から貴方に手術をする」

「え?」

「無数の異次元の素材や知恵を流し込んで頭が爆発しなかった貴方なら、大丈夫」

「えっ、ちょっとまどんな手じゅ」


マキナが何も言わずにクロウ目の前で手を振ると、クロウは糸が切れたように気絶した。

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