PvP踏破その3
最後にギルド規模のPvPにエントリーする。ノミネートしているのはゲームでも屈指のギルドばかりで、いくつか目を引く名前もランキングインしていた。
「<ラビットハウス>、<アルテマの集い>、<マジックマニアック>、<松田幕府>までいるな」
クロウは名立たるギルドたちを見て、感心していた。クロウのギルド名は<ソロー>。本来はああああとかにしたかったのだが、流石にふざけているとゲーム運営側に怒られてしまい、なくなくソローと言う名前にした。意味も何も特になく、頭に思いついた単語を入力しただけだったが、数多くのギルドはクロウの1人だけのギルドからの申請を見ると、直ぐに棄権したり、クロウの不戦勝になったりしていた。
そして初めてマッチに成功したのは、4位のマジックマニアックだ。今回は分家の中から精鋭のみを集めた200名対クロウ1人。200名の中には当然ちゃちゃ丸もおり、先ほどの雪辱を晴らすべく、既に数多くの魔導砲レールガンを背後の空間より出現させている。
「エインヘリアル起動:<魔術師殺し>」
更に強化された漆黒のエインヘリアルが現れる。特にこの機体は数ある魔術師殺しのエインヘリアルでも単独戦闘型であり、搭乗者や内部に設置した魔王の心臓だけではなく、外からも魔素を吸収しエネルギーにできるモードを搭載しており、精鋭魔法使いや魔術師だらけの相手の方へと飛んでいきながら外部吸収モードに移行する。近くを通っただけでマジックマニアックのメンバーはMP切れを起こしてバタバタと気絶していった。ちゃちゃ丸も一発しか魔導砲を打てず、それもクロウのエインヘリアルに近づくにつれて全て魔素エネルギーとしてエインヘリアルに吸収された。数分後、マジックマニアックのメンバーはあっという間に全員MP切れを起こし、クロウは4位を勝ち取った。
3位のラビットハウスも同じ、いくらか強くなったようだがエインヘリアルには勝てず、あっという間に魔法使いたちは吸いつくされた。バフを失った前衛職もエインヘリアルにかなうわけがなく、ばったばったとなぎ倒された。
2位の松田幕府のメンバー相手にはエインヘリアルではなく、とある武器を取り出した。
<打鉄棒>
くるくると回転するパーツを組み込んだ鋼の鉄の棒。特徴は武器破壊成功率の高さだ。なんと驚きの80%。特殊鉱石や破壊不可能アイテムは破壊できないが、それ以外は何度かつばぜり合いをするだけで破壊できる。この武器の効果により、松田幕府のメンバー全員の太刀を叩き折る。武器をなくした彼らはすんなりと降伏した。
1位はアルテマの集いだと思っていたが、向こうの入場ゲートから見知った顔たちが現れた。
「アマネ!ホムラ!アカリ!」
3人はにこにこしながら手を振るが、彼女たちの後ろにいるギルドメンバーは恐怖なのか再会の嬉しさなのかよくわからない顔をしている。
「強くなった私達を舐めないでね!」
決闘開始と同時に全員攻め込んでくる。魔法使いはアマネ達だけで、今回は優秀な剣士や槍使いなど、近接前衛職が多くいるようだ。なので今回は魔術師殺しの逆、前衛殺しのエインヘリアルを起動する。
「エインヘリアル起動:<吸血鬼>」
全身白色のすらりとしたエインヘリアルが現れる。背丈は2m少しと高めだが、背中には豪華絢爛なクリムゾン色のコートを羽織っている。無駄を省いたすらりとした装甲に包まれているが、斬りかかった数多くの戦乙女たちはその硬さに驚いている。そして斬りかかったメンバー達は、自分のステータスに解除不可能の<血印>というものが記録されている事に気が付いた。それだけではなく、クロウのエインヘリアルは目についたメンバーを数えるように、次々と<血印>を付与していく。多くのメンバーはクロウの斬りかかったせいで血印が付与されていたが、クロウがエインヘリアルで自ら付けた分を含めると、丁度全200名の戦乙女達に付いたことになる。吸血鬼のエインヘリアルは高防御型ではないので。200人に攻撃され続ければ少しずつだがHPも減る。それが多くの希望を与えたのか、彼女は攻撃の手を止めないが、一言、
「飲血」
とだけ聞こえると、一番近くで攻撃していたメンバーはにぼしのように干からびてその場に倒れこんだ。同時に白かった目の前の吸血鬼も羽織っているコートと同じくらい紅く染まっており、再び
「飲血」
と言うと、次に近かったメンバーも同じように干からびて倒れた。よくよく見ると先ほどまで減らしていたHPも今や全回復しており、吸血鬼はずっと変わらず、ただ目の前で立っているだけだった。流石に異常に気が付いたのか、攻撃の手を止めて全員距離を取ったが、再び目の前の吸血鬼が
「飲血」
とだけ言うと、アマネ達3人を除く他のメンバー全員が干からびて倒れ伏した。
アマネが何の攻撃かもわからず一瞬で倒れこんだ190名のメンバー、という残酷な事実に気が付いたとき、そばにいたホムラはその鋭い手で心臓を貫かれており、アカリは吸血鬼に首を噛まれたまま人形のように死体になっていた。
恐怖と狂気で狂ったアマネは武器を使う事も忘れて斬りかかったが、そんな攻撃が通じるわけもなく、頭をサッカーボールのように蹴りちぎられた。
試合後、アマネ達は変わらず、「えぐすぎるぜクロウさん」と絶句してするほどの余裕があったが、他のメンバーは未だに戦闘の恐怖から抜け出せず、待合室でブルブルしていた。そんなクロウは先ほどのエインヘリアルについて説明しつつ、ギルドPvP1位報酬を確認していた。




