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勘違い魔王のVRMMO征服記  作者: 愛良夜
第一章 アズガルド大陸
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北部領地到達です

北部王国の南部最辺の前線都市クルーリ。その城塞都市は南部王国と東部王国の猛烈な攻撃に晒されていた。東部王国に守備隊構成を筒抜けにされ、南部王国の激しい攻撃に悪戦を強いられていた。だが、クロウがたどり着いた時、全ての攻撃と防衛は停止した。どんな状態でも、何をしていたとしても、全ての人間、召喚獣が霊馬に乗った死神を注視していた。


「北王、ベルアルに会いに来た。通してくれ」


クロウは特に大きな声を上げたわけでもなく、ただクルーリの兵士たちに聞こえるようにそういった。


「わ、分かった!す、すぐにあ、あける!」


その言葉を聞き届けると、ゆっくりとクロウは城門へ歩き出した。


「待て!貴様は」

「邪魔だ」


早馬で南部王国から数百キロをなりふり構わずここまでやってきて、死ぬほど疲れてとっとと休みたい気分だったのに、たどり着いてみたら攻城戦真っただ中で、しかもよくわからない阿呆が目の前に突っ立っている。既にイベントは始まっているので、敵対勢力は殺せば殺すほどポイントとして加算される。だがまだ北部王国加入の表示が出ておらず、これは北部王国の王都に入らないと表示されないと似たような状況を体験した別のプレイヤーがワールドチャットでみんなに知らせていた。


「お前が何者か分からないが、ただいま我々南部王国はここの前線都市を...」


クロウは目の前でごちゃごちゃ言っている兵士を無視して、霊馬から下りて一飛びで城門の前に着地した。そのままクルーリに入ると、素早く城門が閉まり、再び攻城戦が始まった。外の罵声を無視しつつ、宿屋を探そうとメニューからマップを開くと、それより先に一人の将軍のような人が声をかけてきた。


「冒険者殿、私はここの都市の防衛を任されている北王三大将軍の一人、べオスと言うものです」


寒鉄を烈火で叩き上げた鎧を身に着け、背丈の高い若い将軍はそういうと握手を求めてきた。

どれだけ疲れていても礼儀は大事だと小さい頃から教え込まれているので、クロウは笑顔でべオスと握手すると、今回の戦争に参加しに来たと言う意を告げる。


「その気迫から、クロウ殿は相当の強者と見える。貴殿のような強者の助力、心より感謝する」


ベオスがそう言うと、目の前に北部王国に加入しますかと言うポップアップが出現した。王都まで行かなくてラッキーと思いながら、手早く加入のボタンを押した。すると、頭上の名前欄に北部王国所属の表示が出現した。これで無事加入できたようだ。


「すまない、ごらんのとおり南部王国と東部王国の連合軍に攻撃されている真っ最中だ、クロウ殿とは話たいことが山ほどあるが、それも今回の攻城戦を守り抜いてからにしよう!では!」


べオスは手早く敬礼すると、報告に来た部下の話を手早く理解し、城壁の上へ防衛指示のため昇った。イベント画面を確認すると、無事に参加できており、クロウのポイントは0のランキング圏外。

1位はちゃちゃ丸というプレイヤーで既に数万ポイントあるようだ。内訳を見てみると敵対勢力殲滅が3000、残りは南部王国の離島開拓で得たようだ。偽神の力でレベル80の武器大師(ウェポンマスター)に偽装する。そうしてべオスのいる城壁へと向かった。


「べオス!協力する!何をすればいい!」

「クロウ殿!?身支度はいいのか?」

「ああ!後で良い酒と宿を紹介してくれ!」

「街一番の酒をご馳走しよう!」

「そいつぁ最高だな!」


べオスと短い会話を交わすと、城壁の状態を確認する。どうやら防衛用の兵士が一部既に寝返っており、残ったべオス側の兵士が約6000、裏切りの兵士が約2000、外では南部王国の兵士が10000、東部王国の兵士が4000、彼らはひっきりなしに城壁に攻撃している。城壁魔法と防衛魔法でなんとか防いでいるが、クルーリの都市クリスタルの魔力貯蔵量は底を尽きそうになっており、それまでになんとかしなければ北部王国はクルーリを失い、南部王国は北部王国の中部までの直通経路を手に入れる事になる。


「召喚:<寒鉄刀>、<裂刃刀>」


北部で取れる寒鉄で作り上げた切り傷が凍る刀と特殊な製法により切り口がずたずたに引き裂かれる刀を召喚する。


「偽造:<氷花刀法(偽)>、<血傷刀訣>」


偽神の権限を使用し、非常に完璧に近い刀法と刀訣を習得する。本物の習得者に比べたらぎりぎり勝てないが、その習得者は既に後継者無く死亡しているらしい。全知の書(アカシックレコード)にそう書いてあった。右手に裂刃刀、左手に寒鉄刀を持ち、まずは城壁内の裏切り者から処理する事にした。べオスの信頼できる右腕である狼人族のベルクと言う副将を付けてくれた。ベルクに案内されながら、城壁内で味方と戦っている敵を切り倒していく。索敵と後方支援をベルクに任せ、クロウは悪鬼羅刹のように敵を切り殺していった。右手の刀で敵を切り裂き、左手の刀で敵を音もなく殺していく。ベルクはクロウの圧倒的な戦闘力と精神力に感服しながら、敵にならなかった事を心の底から喜んだ。


「クロウ殿!外にいる裏切り者は粗方片付きました!次は城壁内部です!」


ベルクに導かれ、城壁の内部へと入る。中は既に兵士の死体が所狭しと転がっており、酷い惨状だった。


「クソッ!」

流石の光景にベルクも悪態をついた。だが今は少しでも早く街を安定させるために裏切り者共に罪を償わせなければいけない。まずは城塞内部の要所から制圧する事にした。まずは防壁魔法増幅器を制圧、再起動し、魔力増幅器を再起動、次に武器庫も制圧し、残った要所も全てベルクと制圧する。ひたすら無心で敵を切り裂いていたら、ベルクにふと肩を掴まれた。


「ん?」

「クロウ殿、全て片付きました」


城壁内を上から下まで綺麗さっぱりにするまでに、気が付いたら半日が経っていた。

城壁への攻撃も沈静化し、べオスと再会すると、大手を振って感謝された。その晩、べオスのおかげで一番良い宿部屋と酒場の場所をタダで使わせてもらった。街の兵士やべオス、ベルク達と一日を生き残った事を祝い、皆で大酒を飲み、語らい、それぞれ自分の部屋に戻った。その晩、ゆっくりと休憩できたクロウは、敢えて夜中3時に目を覚ました。


クルーリの城門から南に3キロ離れた場所に、南部王国と東部王国の野営地があった。ここには日中の攻城戦で、内通者の全滅により諦めざるを得なかった兵士たちが休んでおり、攻城の命令を受けたそれぞれの王国代表たちがその野営地で新しい攻城の作戦を練っていると、外から悲鳴が聞こえてきた。それもそのはず、野営地の周囲は黒い炎で覆われおり、その黒炎は触れた存在を魂まで焼き尽くすまで決して消えない地獄の炎のようだった。


「召喚:<夜鴉(やとがらす)>、<黒百足(くろむかで)>、<斑胡蝶(まだらこちょう)>」


「な!あれは!」


東部王国の何人かは彼らを知っているようだ。それもそうだろう、彼らは東部王国最強の暗殺部隊。今は技術の喪失により形骸化しているが、彼らは()()だ。


「誰一人残すな、皆殺しだ」

「「「は!」」」


夜鴉部隊は30人、黒百足部隊は100人、斑胡蝶は50人おり、指示を受け取った瞬間、野営地は阿鼻叫喚の惨状になった。命を啄む鴉と敵を死ぬまで絡みつく百足、夢幻と毒を見せる胡蝶。死ぬ間際だと言うのに、野営地の兵士は恍惚としていた。


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