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勘違い魔王のVRMMO征服記  作者: 愛良夜
第二章 オリュンポス大陸
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地獄の鉄雲屠

北方三大王国と言えば、<(えん)>、<(しょう)>、<(ぼう)>の3国であり、中でも袁が最も豊かで、最も兵力を有していた。オリアナの策略では、袁に食われる前に、全軍を持って先に章と牟を攻め落とす作戦だったが、クロウの名声のために、この作戦はクロウに一任された。


「もしもし?中継つながってる?」


通信魔法の上位互換、<投影魔法>を使い、クロウの戦況をリアルタイムで紫榛宮にいる全員に見せている。


「クロウ様ぁああ♥」


オリアナが目をハートにしてクロウに手を振っている。神聖属性は持っていないはずなのに、なんでオリアナがこんなに自分に惚れているのかわからないクロウだったが、彼女の声をしっかりと聞こえてきたので、投影は大丈夫そうだ。


「国父、国内の大放送も機能している。全国民が見えてるよ」

「マジ?戦争大放送って、子供のトラウマになっても知らないよ?」

「大丈夫でしょ、国勢調査でみんな見たいって言ってます」

「みんな殺気立ってるね」


クロウは特に自分に意見がある一部武将を現地まで連れてきている。


「じゃ、そろそろ始めるね」


クロウはそういうと、戦闘状態に入った。投影を見ていた武将文官達はその殺気立った顔に一瞬、久しく忘れていた恐怖を思い出し、現地にいる武将の一部は、クロウの体から溢れ出す赤黒い殺気に身体を震えが止まらなかった。


「やべぇ!武者震いかこれ?」

「わわわ、わからない、わからない」


生まれつきの将軍は居ない。皆、新兵から始まり、生き残って武功を上げ、将軍になったのだ。そんな彼らが生き残れた大きな要因の一つに、<死>からの逃亡である。生き残れる者は本能的に死にそうな状況から打開、もしくは逃亡する。戦いから逃げたわけではない、死から逃げたのだ。ではどうやって死から逃げるのか、戦場では死が具現化する。数万数十万の殺気がそれを具現化するのだ。


「あ、あああ!ああああ!!」


久しく忘れていた<死>の具現化に、長らく戦場を離れていた武将は腰を抜かし、その場に座り込んでいた。彼らの目には、クロウの周りを数多くの亡霊と死体が囲んでおり、全てクロウの体から抜け出そうともがき苦しんでいるように見える。クロウは腰を抜かした無様な将軍をちらりのにらみつける。にらまれた将軍は無様に小さく短い悲鳴を上げた。


「獄門解放、地獄と接続、目覚めろ<鉄雲屠>」


クロウがそういうと、現地にいた武将達は大きな地震を感じた。あまりの大きさに立ってられず、何人かが地面に座り込んでしまった。その後、周りの地面が割れ、地底の底から無数の巨大な騎兵が現れる。最初はスケルトンが骨の馬に乗っているだけだったが、後方から地獄の気をまき散らしながらクロウに近づくにつれ、全身が復元されていった。体中を鉄で覆った巨大な馬と、それに乗ったさらに巨大な人間。


「ば、バカな!北人だと!?数百年前に滅んだはずでは!?」


元蛮族の将軍達は一目見ただけで伝承に残るその姿に気が付いた。今回は魔力ではなく、直接地獄から本物を呼び出す。魔力で呼び出した時とは違い、以前より大きく、強く、驚異的だった。


「あ!悪魔だ!国均しの悪魔だ!」


紫榛宮の中で見ていた四方将軍達が声を上げる。彼らは丹氏や狭氏など、多くは元蛮族領出身、部族の長が子供を窘める時に話していた事を思い出す。


「まさか、本当に、存在していたのか....」


アベリーとナベリーは驚いている将軍達に聞く


「なんだその悪魔っていうのは」

「兄貴、最近開発が済んだ西域、ご存じですよね?」

「ああ」

「あそこは昔、鳥頭の王様が支配する大森林だったんですよ」

「え?」

「でも、その王様が調子に乗って、鉄雲屠の部族に屈服するように言ったんですよ」

「あっ」

「ええ、ご存じの通り、怒った鉄雲屠達は大群を率いて大森林を片っ端から切り倒していき、鳥頭の王様を含め、80万人全員の首を刎ね、巨大な人の頭で出来た鳥の巣を作ったんです、そうして彼らは撤退し、踏み荒らされ、掘り起こされ、血がしみ込んだ大地にいつしか草木は生えなくなり、気が付いたら今の砂漠になっていました。それが今、国父が呼び出した<鉄雲屠>です」


割れた地面からとめどなく次々と鉄雲屠達が肉を付け、クロウの元に集中する。5000、10000、50000、そして10万、さらにどんどん増えていき、最終的には大地を埋め、見物している武将も囲むように50万人の鉄雲屠が出現した。重厚な鎧、乗っている踏山馬も完全武装され、3mを超える巨大な曲刀を両手に1つずつ持っていた。


「均せ鉄雲屠、3か国全てだ」


赤黒い殺気を纏った鉄雲屠は、<戦雄叫び(ウォークライ)>を発動し、ゆっくりとだが、走り出す。

そのまま後続の鉄雲屠も先鋒に習って駆けだした。すぐさま50万の踏山馬は地震を引き起こしながら走り出す。一部の脆い城壁は鉄雲屠が近づくだけで崩れ落ち、彼らの双曲刀が容赦なく逃げまどう敵兵を切り裂いていく。最初に均されたのは章、大きな都市も容赦なく鉄雲屠の突撃により破壊され、通り過ぎた建物や敵は全て切り崩され、殺された。数時間もせずに、章国は全て彼らに踏み鳴らされ、国王も宮殿も無慈悲に崩れ落ちた。


それは牟国も同じである、50万の大群で城壁は崩れ落ちなかったものの、川も踏み越え、城門も鉄雲屠の突撃により大きな穴が開き、数分経たずに崩れ落ちた。


最後は袁、流石に情報が行き届き、袁国にたどり着くころには大量の兵が弓を放ったり、丸太を投げたりして対抗しようと思っていたが、矢は彼らの鎧を貫けず、丸太も上に乗った北人に両断され、火も熱油も全てお構いなしに、袁国国内へと突撃していった。分厚い城門も城壁も、鉄雲屠のスキルである<破城突撃>であっけなく破壊され、袁国も次々と踏み均されて言った。


翌日、クロウは後始末のために北方軍を連れてこの3か国の伝国押印を探していた。北方軍も鉄雲屠の残虐さは知らなかったようで、恐怖で歪んだ表情の人の頭で作り上げた山を見て、一部の兵士は朝食を吐き出してしまった。


数時間後には無事に3つの押印も見つかり、クロウは投影魔法で


「見つかったから持って帰るね」


とだけ言って、鉄雲屠を再び地獄へ還し、北方軍の護衛と榛国へ戻ることにした。

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