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勘違い魔王のVRMMO征服記  作者: 愛良夜
第二章 オリュンポス大陸
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戦果と国父

什国(じゅうこく)、世界中から名立たる傭兵が集まる実力至上主義の国家、この国では法律は意味を成さず、ただ暴力だけが他の人の従わせる方法である。


「やべぇなこりゃ」


虎咆将軍は<黄虎>と言う召喚獣に乗っている、彼の手下も同じように黄虎に乗って什国の偵察に来ている。黄虎は巨大ながらもネコ科の俊敏さと静かさを兼ね備えており、西域原生の厳しい生存環境から、その獰猛さは他の虎に比べて抜きんでている。彼が驚愕したのは、什国が国としてほとほと機能していなかったからである。国の一番高い所にある中途半端な黄金と宝石の混じった建物が恐らく彼らの言う()殿()だろう


「酷いなこれ」


常勝将軍も口を揃えて荒んだ什国を見下ろす。スパイとして仮装させた兵を什国に送り込んだが、あっという間に持たせた銀貨2枚をカツアゲされ、身ぐるみもはがされた。その後スパイの兵士も国内に散らばった戦力を記録し、2人の将軍に報告した。


「なるほどな、所詮は盗賊や強盗の集まりか」

「ふーん、早めに終わりそうですね」


虎咆将軍は常勝将軍と大まかな戦い方を決めると、南方軍の総括将軍にも報告し、作戦を開始した。


「行動開始」


夜間に偽装した虎咆兵が什国に侵入する。悪名だけで恐れられてきた什国にまともな防衛策などなく、あっという間に寝ている門番を永遠に夢の中に送り、什国の城門は全て開けられた。先鋒である虎咆軍は静かに、夜に潜む黒猫のように素早く入りこむ。そして全虎咆軍が配置についた後、全員がスキル<虎咆>を発動した。黄虎の固有スキルであり、自身と搭乗者の全ステータスを上昇させ、咆哮を聞いた敵の全ステータスを低下させ、<戦慄>のデバフも付与する。黄虎の恐ろしい咆哮と共に、常勝将軍も全軍に突撃を開始させる。


「突撃ぃいいい!」


場内では既に虎咆軍が暴れまわっており、常勝将軍も負けずと敵兵と斬りあう。もはや敵兵とは言えず、ただの盗賊や蛮族を相手にしている感じだ。容赦なく慈悲なく次々と敵を切り倒す。虎咆将軍もいつの間にか少数の兵士とみすぼらしい什国の宮殿で、女を抱いて寝ていた自称什国国王の首を持ってくる。朝が明けるころには、什国の征服が終わり、什国に居座っていた全ての盗賊や強盗の首を榛国に持ち帰った。


「2人とも!よくやった!」


什国の征服と捨てられていた什国の伝国押印も持ち帰った2人の将軍。それと同時期に瑠国との1対20の舌戦にて、相手を1人残らず言い負かし、伝国押印を持ち帰ってきた毒舌大臣。2人の将軍はその優秀さを表彰され、5万人まで軍を拡張、毒舌大臣もその類稀(たぐいまれ)れな舌戦の強さから、<毒舌卿>の称号を授かった。


瑠国にまともな戦力などなく、剣を握れない芸術に溺れた文官だけが統治した国であった。瑠国が今の今まで平和でいられたのも、その芸術が世界中で熱狂的なファンを獲得していたからである。だが榛国の多くの国民は元蛮族、芸術なんていうものに興味はなく芸術の国に攻め込もうと何の影響も受けなかった。


こうして榛国は8大王国のうち、(きん)(じゅう)()の3つを吸収し、大陸西方における一大王国になった。三国を吸収し、数多くの武将は什国へ、ならず者の国の捕虜を力で屈服させ、多くの文官は瑠国へ、芸術に溺れた才有る者を救い出すため。


「王様、大陸を三分割しよう」


朝の会議が終了し、各々の大臣の仕事ぶりを確認し終わった後、珍しく最後まで残った賢過ぎた策士が初めてアベリーとナベリーに提案した。いつもは他の者の策の不足を指摘するばかりで、自分から提案をしたことは一度もなかった。


「榛国の動きが、他の国に大きな影響を与えてる。東方の聖王国も既に南に進軍し、遠からず南方の残った2国を吸収する。西方は既に私達が覇者になってるけど、まだ足りない、北方の強国<(えん)>がこれ以上力をつける前に、先に北の小国を征服すべき」

「分かった、<才媛>オリアナ、お前の言う事を信じる」

「ありがとう、ついでにクロウ様の居場所を教えてほしい」

「いやぁ、それは...ちょっと....」


<毒舌卿><虎咆将軍><常勝将軍>と並んで<才媛>の称号を持つ賢過ぎた策士。抜きんでた知識を持つ策士だが、なぜかクロウにぞっこんである。だがクロウは<プレイヤー>であり、いつかは居なくなるぞとアベリーとナベリーは口を酸っぱくして言っているのだが、なかなか言う事を聞かない。いつも仕事が終わったら榛国中を探し回っている。


「分かった。するべき事は既に話した。それじゃあ」

「あっ、ちょっと待...行っちゃった」


宮殿の天井裏から、クロウが降りてくる。


「なんであいつこんなに追いかけてくるの」


クロウは読み終えた密榛の情報をアベリーとナベリーに見せる。最近クロウがしていることと言えば、諜報活動ばかりだ。先の招賢令により、クロウもいよいよお役御免となり、以前の役職は他の人に振り分けられ、今は<国父(こくふ)>として好き放題遊んでいる。


「そうだ大先生、さっきオリアナが話してた策略、どう?」

「いいと思うよ、正直1個ずつ国を落とすより、大きくなった国を一気に食うのが早いし、特に合併した直後を狙うのもありだと思う」

「そこでなんだけど大先生、北方戦線、任せてもいいですか?」

「え?そりゃまたどうして」

「それがですねぇ...」


2人の話を聞くと、招賢令によって国外から数多くの人材が集まったが、誰もクロウの実力を知らず、ただ遊び惚けている国王の金魚のフンだと思っているらしい。旧丹氏はクロウの実力を知っているのだが、大国になり、ありとあらゆる人がいる今の榛国では、改めて知らしめる必要があるようだ。


「うーん、実力を知らしめればいいんだよね?」

「はい、思いっきり、とびっきりのを」

「分かった、じゃあ北の方の国を更地にしてくるから、復興費と再開発計画考えといて」

「「え?」」

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