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勘違い魔王のVRMMO征服記  作者: 愛良夜
第二章 オリュンポス大陸
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金国征服

10万人が全員平原で死んだ事を知った金国本土は驚愕した。10万人1人残らず全て平原に埋めたと言う。


「奴らに人の心はないのか?」


余りの残虐さに金国もトップも驚愕した。


「報告!街が、都市が次々と落ちていきます!」

「誰か!誰か止められないのか?」


金国の国王が叫んでも誰もが目を伏せるだけだ。


「もういい!私が征く!」


そういうと、金国の王こと金王直々に出陣する事にした。金王は緊急徴収した兵士も含めて、20万人の兵をかき集めることに成功した。だが、精鋭部隊は既に平原の骸と化しており、榛軍10万と金軍20万人の争いは榛軍10万の大勝を持って終結した。


「やったなアベリー、ナベリー」


クロウは2人と紫榛宮で前線から金王捕縛、そして金王宮殿の旗が榛の字に置き換えられた事を知ると、2人の戦術と戦略を素直に称賛した。


「ああ、ひとまずは目標その1クリアかな」


ナベリーとアベリーはハイタッチをして喜ぶ。


「次はどうする?」

「まずは将軍達の表彰しなくちゃ」

「それもそうだな」


今回の戦果により、1軍は東軍、2軍は西軍、3軍は北軍、4軍は南軍に改名し、全軍の中から最も優れた兵士を1万を選抜し、紫禁軍と改名してアベリーとナベリーのみを守る軍隊として、宮殿全域の守護兵となった。その後、クロウは西域のさらなる開発へ、アベリーは新しく捕虜にした金軍の教化、ナベリーはぐちゃぐちゃの金国内政の立て直しを始めた。


ゲーム内時間で1年、現実世界では1か月が過ぎた頃、金国の立て直しと西域の開発が終了した。完全開発した西域は残った蛮族も吸収合併し、西域は完全に榛国の領土と化した。それにより、一部の希望する榛国国民は西域に戻り、いつも通りの生活を送る事も許された。だがそれは本当にごく少数で、老人や老婆ばかりだった。だが却ってそれが参軍している兵士たちにとってうれしいことであり、この政策は軍の士気を上げる良策の一つになった。


金国はその名の通り、<金>や<貴金属>が多く取れる街で、特に金が多く取れる国である。だが開拓技術と鋳造技術が未熟な元金国は、領土内でも10%ほどの金貨しか作れなかったが、現在の榛国に合併されてからは、先の平原での戦争<チュジア平原の悲劇>が大陸中に伝わり、誰も現在の榛国に手を出さなかった。なのでその間、北軍と西軍を全て金鉱石開拓と鋳造に投入し、1年で大陸2位の経済大国になった。そうして過ごした1年後、ナベリーは<招賢令(しょうけんれい)>を頒布した。


---


招賢令


才あると自負するものは近くの役所へ

貴方も国王の右腕に!

身分出生勢力過去は問いません。


---


この政令により、


勝ち過ぎた将軍

賢過ぎた策士

民に愛され過ぎた政治家

強すぎた武将


などなど、優秀だが尖った人材がオリュンポス大陸中から多く揃った。彼らはこれからアベリーとナベリーの大臣として、榛国の大陸統一に手を貸してくれるだろう。クロウも<鑑定>で彼らの忠誠度をたびたび確認しているが、賞罰がはっきりとしている榛国では、誰もが<能あるものは賞され、能無きものは罰せられる>。至極当然の事だったが、彼らにとってそんなアベリーとナベリーは稀代の名君だと言う。


招賢令から更に1年が過ぎた頃、軍隊の拡張と訓練も完了し、東西南北、通称、四方軍は合計80万人にまで拡張した。同時に紫禁軍も10万まで拡張し、招賢令によってやってきた武将の手元にそれぞれ1万人の兵士を与えた。それにより、勝ち過ぎた将軍は常勝将軍へ改名し、彼の軍は<紅詠軍(こうえいぐん)>、強すぎた武将も虎咆将軍として<虎咆軍(こほうぐん)>へ改名した。賢過ぎた策士はナベリーとクロウの元、人情を覚え、民に愛され過ぎた政治家は人間の暗い部分を知り、より賢くなった。


今や榛国はオリュンポス大陸の西方の強国の一つであり、右は大陸中央に位置する貿易都市マイータ、上には瑠国(るこく)、下には什国(じゅうこく)と接していた。瑠国は火と瑠璃色の宝石が取れる街で、芸術の国とも言われていた。什国は傭兵が多く集う国であり、強力な戦士が多く集う実力至上主義の国家だ。


「今回集まってもらったのは他でもない、次の矛先を決めようと思ってな」


アベリーの招集により、四方軍の総括将軍である、東方将軍、西方将軍、北方将軍、南方将軍の4人、虎咆軍を率いる虎咆将軍、紅詠軍を率いる常勝将軍、その他多くの武官文官が集まった。


「次の矛先ですか、私は什国がいいと思います」


常勝将軍がそう言った。


「同感です。背後にいる瑠国に一度同盟を結び、それから什国に攻め込むべきです」

「いや、瑠国に同盟を結ぶ必要はない、私が赴こう」


そう言ったのは毒舌大臣、口が悪すぎて国王とその場にいた大臣の心をへし折り、追放された大臣の1人だ。


「確かに芸術は大事だが、この乱世では弱者は食われるのが終わりだ。このような弱国、兵を差し向けるまでもない、私が征服してきます」

「正気か?」


流石に周囲の大臣も正気を疑った。舌戦だけで国を落とすなど聞いたことがない。


「ええ、もちろん、私が瑠国の伝国押印を持ち帰られなかった日には、この舌と首を切り落としてください」

「あいわかった!出立の準備をしろ!最高の馬車で向かわせろ!瑠璃遊びをしている腑抜けに格の違いを見せつけろ!」


数時間後、毒舌大臣は全て黄金で作られた鎧の兵士と、黄金で作られた馬車に乗り、誰もが惜しみなく財力を見せつけるような馬車隊に案内されて、瑠国へ出発した。


「話を続けよう、什国には誰が征く?」


虎咆軍、紅詠軍のトップである虎咆将軍と常勝将軍が名乗りを上げた。


「我々にお任せください」

「相手は魔法も使ってくるぞ?」

「は!魔法なんざ毎日喰らってるよ!」


ナベリーとクロウに毎日魔法の雨の中で突撃する訓練を繰り返している虎咆将軍が自信満々にそう言う。


「分かった、虎咆軍を先方に、紅詠軍を主力に南方軍は後方を、新しい軍隊の初陣だ、南方軍は先輩としてサポートしてやれ」

「「「は!」」」


大まかな戦術を決めた後、虎咆軍を先頭に、紅詠軍、南方軍の順で榛国から南方へ出立した。


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