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勘違い魔王のVRMMO征服記  作者: 愛良夜
第二章 オリュンポス大陸
73/227

生まれ変わった丹氏

***


白い閃光が丹氏の部隊の中で縦横無尽に駆け回る。自慢の投げ曲刀は全て槍で弾かれ、弓も躱され、ただただ気づいたときには槍で背中を打たれて馬上から転がり落ちて気絶していた。そうして気が付いたら部隊は何分割にもされ、こちらには数十万の騎兵がいると言うのに、異様なまでに混乱していた。丹氏の族長は戦闘の白い戦士に意識を向ける。全身から殺気を発し、まるで360度見えているかのように戦っている白い彼さえ殺せばすぐにこの白い閃光は殲滅できると確信した。族長が族長に成れるのは彼が丹氏族で一番遠く、早く曲刀を投げられるからだ。だが、族長の渾身の一撃は先頭の戦士に難なく受け止められ、あの戦士に睨まれた瞬間、その目の殺意に動けなくなり、動けなくなった事に気が付いて瞬きをした瞬間、あの戦士が投げた槍は冷気のような白い殺意を纏って自分の首から上を貫いて、馬上から地面へ縫い付けていた。


***


「敵将!打ち取ったりぃいいい!」


先頭にいる翔騎大将軍が勝鬨(かちどき)を上げる。槍の先には丹氏族長の頭が刺さっており、それを見た他の丹氏の騎馬兵達は次々と馬を降りて降参した。そうして翔騎大将軍と彼の白雲隊は丹氏7万人を捕虜として連れて帰ってきた。


「大将軍、ご助力、感謝する」


翔騎大将軍は満足したようにうなずくと、クロウの召喚陣から還っていった。


「ナベリー、アベリー、人手引き連れて来たぞ」


城門の守護を任せていたナベリーとアベリーの前に捕虜7万人を連れてくる。それを見た兄妹は驚愕していた。1度に7万人の捕虜を連れてくるなんて、どうすればいいのか2人も分からなかった。


「世界統一したいんだろ?その力、見せてみろよ」


クロウは挑発するように2人にいった。


「アニキ、出番だよ」


ナベリーは内政の準備をするため、先に酒場へ潜った。アベリーはと言うと、捕虜を躊躇いなく街の中にいれ、街の1番高い場所で<拡声>魔法を使って7万人の丹氏に演説を始めた。


結果から言えば、ナベリーが言う通り、アベリーの統治力は目を見張るものがあった。7万人の捕虜は圧倒言う間にアベリーに火をつけられ、新たにアベリーを族長と認めた。アベリーが言うには、彼らに従えば狭氏や朽氏を打ち倒し、積年の恨みを晴らせると説得した。7万人の説得が終わった頃、ナベリーも都市再建計画書を持ってきた。


「あたしの名前はナベリー!そこにいる男の妹だ!これからあんた達にはうちの言う事に従って働いてもらう!文句があるならこのこの場で腕相撲をしてやるよ!うちに勝ったやつは好きにするがいい!だが負けた奴は働いてもらうよ!安心しな!飯は出るし酒もある!」


数人、命知らずがナベリーに腕相撲を挑んだが、開始と当時にに腕ごとへし折られたので、ナベリーが折れた腕を治して次への捕虜と勝負する。そうして日が沈むころには全員ナベリーを<姉貴>と呼び、アベリーを<兄貴>と呼ぶようになった。


クロウは今回、この7万人の丹氏を<教化(きょうか)>する予定である。彼らだけにとどまらず、榛の西にあるこの大量の蛮族領はクロウに取って労働力の畑と自国の領土に過ぎない。そうして3人はそれぞれ7万人の丹氏族の1日を3分割した。朝はアベリーと戦闘訓練、そして外へ狩りに出て食料を確保する。昼はナベリーと領地の再建築や農業、畜産、建築技術などを教える。夜はクロウと共に彼らを教化するため、偉大な思想家の話をしたり、時には不服な奴らをしばきたおして大人しくさせたり、鬱憤が溜まった奴らを連れて狭氏や朽氏の宝物庫や食糧庫を略奪したり、蛮族としての本能を満足させつつ、彼らをゆっくりと教化させていく。


3か月後にはすっかり大人しくなり、丹氏も名前を(しん)氏に名前を変えた。榛国国内も7万人と言う人手のおかげですっかり建て直しが完成した。終末酒場は週末酒場に改名し、場所はそのまま5階まで増築した。ナベリーの建築計画は古代の大皇帝を元にしており、オリュンポス大陸の初代統一者、(やなぎ)族の青柳宮(せいりゅうきゅう)をモデルに、より大きく、荘厳にアベリー、ナベリー達の住まう場所を作り上げた。他にも武器庫や工房、農作地に大きな牧場、薬草錬成場などなど、北帝領やミナト領に及ばないものの、他国が持っているような最低限の設備と工場が揃った。


「アベリー、そろそろ時期だ」

「ああ、そうみだいだね」


榛国の後ろ、城門の前には狭氏と朽氏の騎兵が8万ずつ、合計16万の蛮族兵が並んでいた。


「丹氏!この無能め!貴様らは西域の恥だ!敵国なんぞに寝返った挙句、馬から下りたなぞ!早く城門を上げて自害するがいい!」


狭氏の族長が城門下で挑発する。そんな彼を無視し、クロウは戦鼓を鳴らした。16万人全員に轟くような、蛮族達の住まう西域全てが聞こえるような大きさの戦鼓が轟く。狭氏族長がビビッて自分の陣地の戻り始めた時、榛国の城門が開かれた。


「全軍突撃、皆殺しだ」


アベリーが任命した元丹氏の将軍の1人が先頭を切って駆けだす。そこから海のように新しい、<榛氏>の初陣が始まった。


「左翼右翼展開、鶴翼の陣を持って敵軍を包囲せよ」


ナベリーの開発した<通信魔法>が刻まれた耳飾りを通して、全軍の千人隊長に指示が行き届く。指示を受け取った千人隊長は千人を単位に素早く陣形を作り上げていく。両翼が展開しているうちに、中央は馬上から強弓で敵の対応を遅らせていく。この3か月間、毎日米や麦、肉も野菜もしっかりと食べ、以前とは比べ物にならないほど肉体的にも強くなった彼らは、1000m離れた場所からも強弓や大弓を打つことが出来るようになった。


(流石蛮族と言わざる終えないね)


城門上で戦況を見ているアベリーは、人間離れした兵士達の弓の腕前に感心した。無数の強弓に撤退を阻害された彼らは、あっという間に包囲され、後方も別動隊である中武装騎兵の強力な鎧と武器に戦意を削がれ、合計10万人が捕虜として捕まった。その後、この10万人も難しいが、3人は教化できるだけ教化しようと決めた。それと同時に、狭氏と朽氏族長、その他代表に成りえる者の首を跳ね、それを手土産に元丹氏、狭氏と朽氏の領土を全て吸収した。彼らの住処は西域と言う砂漠地域とはいえ、アベリーとナベリーの魔法でどうにでもなる。つまりは整地できる。クロウは2人に残った狭氏と朽氏の民を連れてくると言って、2人には金国本国に注意するように言った。アベリーとナベリーも了承し、クロウは榛氏の軽騎兵3000人を連れて西域へ向かった。

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