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勘違い魔王のVRMMO征服記  作者: 愛良夜
第二章 オリュンポス大陸
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二人の決意

「なるほど、実質的支配者はナベリーか」

「ご明察、アニキは政務がダメダメでね、人をまとめる力はあるんだけど、まとめて何をするか分かってないし、資金調達もへたくそだ」

「ナベリーも大変だな」

「もう慣れたよ」

「なら、ナベリーに聞こう、もし人材、人手、資金、材料が全て潤沢にある、そんな夢のような状況だったらナベリーは何をしたい?」


ナベリーは何も言わずにクロウを見つめる。


「そりゃあ、榛国を復興して、金国をぶっ潰してやりたいね」

「それだけ?」

「それだけって、そりゃ大先生...」


クロウは何も言わずにナベリーを見つめる。


(帝王の魔眼、発動)


クロウの目が金と赤色に染まっていく。帝王の魔眼は人の欲望を湧き上げさせる魔法の一つだ。うちに潜む人間の出世欲や権力への欲望を刺激し、欲望の赴くまま人を喋らせる上位者のみが使える魔眼である。


「わからない、できれば少し時間が欲しい。明日いっぱいまで考えたい」

「わかった、明日また来るよ」

「ああ、アニキとも相談してみるよ」


クロウはそのまま終末酒場から外へ出る。盗賊すら貧しさのあまり迂回するこの榛国で、一体彼らが何をしたいのか、こんな場所に残って一体何を成したいのか、クロウは見てみることにした。翌日、クロウは終末酒場の扉を開けると、目の前に3つの椅子と大きな机、それから酒が1本とグラスが3杯用意されていた。既に2つの席にアベリーとナベリーが座っており、クロウも躊躇(ためら)わず残った席に座った。


「おはようだ、大先生」


ナベリーが1番にクロウに声をかける。


「おはようございます大先生」


真面目な雰囲気と顔付きでアベリーもあいさつした。


「大先生、1日待ってくれてありがとう、昨日夜遅くまでアベリーと話して、うちらの意思は固まったよ」

「ああ、ナベリーと決めた。当初は榛国を復興して、金国を倒して、それで終わりにしようと思ってたんだ、だけどそれだじゃあ,、きっと僕たちはまた他の国に同じように搾取されて、使いつぶされる」

「だから決めたんだ、うちらでこのオリュンポス大陸を1つにする。腐った奴隷契約も、腑抜けた貴族共も、無能な国王も全部吹っ飛ばして、南国サウフォードみたいな立派な国を作りたい!」


クロウは彼らに帝王の魔眼を既に使用していたが、全く同じことを言っていたので、心からそう思ったんだろう。


「どんな手段を用いても?」

「それが最善なら」

「どれだけ罵られようとも?」

「それでみんなが幸せになるんだったら」

「どれだけ憎まれようとも?」

「それで世界は平和になるなら」

「召喚:<魔人アルデヒト>」


召喚陣から膨大な魔力が吹き出る。あまりの魔力の強さに、近くの2人は椅子ごとひっくり返りそうになり、酒場の窓ガラスは全て割れ散らかっていた。そうして召喚陣から黒い霧を纏った魔人が現れる。霧は形を変えながら人型に近い形を保ち、黒い靄の中にうごめく2つの目玉と1つの口が、あちらこちらに移動しながら現れた。2つの眼球は独立して動いており、口も霧の中に隠れては現れてを繰り返している。


「こいつの名前は<魔人アルデヒト>。ご覧の通りの魔人だ。こいつ1人で今すぐこの国をまだ栄えていた頃に時間遡行させることも可能だし、金国を一晩で地図から抹消することも可能だ。だが魔人と魔族の加担者として未来永劫、天国に入ることは許されず、死んだ後には亡霊として一生世界を彷徨うかもしれないし、地獄に落ちるかもしれない、それでもいいのか?」

「それで人々が苦しまないのなら」


アルデヒトを還し、クロウはわかったとだけ言った。


「最後にもう一度だけ聞く。本当に後悔はないんだな?」

「「ない!」」


兄妹は口をそろえて返事をした。


「わかった。じゃあまずはナベリー、昨日聞いた質問をもう1度聞く。何から始めたい?」

「まずは榛国を立て直したい、荒んだこの廃墟みたいな国の建物を全部作り直したい」

「わかった。じゃあまずは」


クロウはそういって立ち上がった。


「戦争をしよう」


***


丹氏(たんし)

榛国が長年食い止めてきた蛮族の一族で、馬と妖術を使う一族である。騎馬戦に強く、曲刀をブーメランのように投げて戦ったり、馬上で弓を引いたりする強力な氏族の一つだ。丹氏(たんし)は榛国だけではなく、他氏族である(きょう)氏や(きゅう)氏とも争っており、農耕技術を知らない彼らは榛国から略奪を繰り返して、狭氏や朽氏と長年争ってきた。だが以前とは違い、榛国は既に略奪をする価値がなく、おかげで狭氏や朽氏に近年、兵糧負けしそうになっていた。そんなある日、いつものように睨み合っていると、榛国から敵襲が来たとの報告が丹氏の族長の耳に入った。最初は族長も耳を疑ったが、血まみれの伝令兵の様子を見て、嘘ではないと気付いた。急いで丹氏は部隊を後方のへ回す。どうせ滅びかけの弱小国家、早く滅ぼして狭氏や朽氏を警戒しなければと思い、族長自らも士気向上のために赴いた。


***


「英雄召喚:<翔騎(しょうき)大将軍><白雲隊>」


召喚陣から白銀の軽鎧を身に着け、白い馬に乗った、槍使いの将軍が現れる。その後ろには同じように白馬に乗った槍を使う騎兵が数万騎出現した。古代の英雄の1人にして、無双の槍使いと言われた人間だ。


翔騎(しょうき)大将軍!白雲隊の皆さん!どうか今一度、蛮族から我々をお救いください!」


蛮族と聞いて、大将軍の目に殺意が出現した。将軍は小さい頃に、蛮族に村を襲撃され、自分の幼馴染と両親を凌辱されたうえ殺された過去がある。そのおかげか、蛮族と聞くと、いつもに増して戦闘力が上がる。


「将軍!捕獲で!捕獲でお願いします!」


クロウの言葉が聞こえたかわからないが将軍は馬を嘶きさせると、白雲隊を連れて槍を構えて一直線に丹氏の騎馬部隊へ突っ込んでいった。

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