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勘違い魔王のVRMMO征服記  作者: 愛良夜
第二章 オリュンポス大陸
70/227

懐かしの生徒たち

***


傭兵団<アルテマの集い>


新大陸で最強と言われている傭兵団の一つ。数多くの分派傭兵団を持つこの巨大な組織は、数千数万の依頼をこなし、達成率99%を誇る最も優秀な傭兵組織の一つである。傭兵団は実力主義、強いものがトップにのし上がり、弱いものは淘汰されるのが常識である。そんな傭兵団の中で、四英傑と呼ばれる者がこのアルテマの集いという傭兵団に集まっていた。


力のガイル

魔のイルル

技のジュール

治のクララ


近接戦では無敵のガイル、竜狩りの際にトドメを刺したのもガイルと言われている。

魔法に長けたイルル、賢者の加護を持つ彼女は、竜狩りの際に、三日三晩休むことなく魔法を打ち込み続けたと言う。

技術のジュール、さまざまな魔道具を作り上げ、戦闘力は低いものの、数多のアイテムを使いこなし、敵を翻弄しする。

治癒のクララ、数多くの人間を癒し、<アルテマの国宝>と言われている


孤児院から出てきた彼女たちは、ひたむきな努力により、学園の特待生の席を獲得した。だが貴族による貧民差別は根深く、傭兵団育成コースの実習授業になっても、貴族達の圧力によって、誰も彼らの担当になろうとしなかった。そんな時、クロウと名乗る自称<一般傭兵>が彼女達の依頼を引き受けた。貴族達の圧力や影響を受けていないとなると、恐らく最近交流が生まれた別の大陸から来たのだろう。


「こんにちは、<一般傭兵>のクロウです。えー、今回の依頼は、一週間傭兵として働く、ですね?」

「は、はい!」


平民の私達を見下すことはせず、平等に接してくれる。


「ご存じの通り、私は別大陸から、いや、別の世界から来た傭兵です。私のやり方は他の傭兵とは違うかもしれませんが、それでもよろしいですか?」

「はい!」

「わかりました、では早速、依頼を受けに行きましょう」


そういって彼は私達の歩幅に合わせて歩き出す。歩きながら彼は話し出した。


「今から行くのは傭兵斡旋場です。名の売れた傭兵は指名依頼を直接もらったり、有名貴族の客として招かれたり雇われたりするものですが、みんなまだ無名ですので、大人しく傭兵斡旋場で仕事をもらいましょう。事を急いては仕損じるです」


大きな傭兵斡旋場の窓口で、クロウは5人で出来る簡単な依頼はないかと聞いた。すると窓口の人は一枚の依頼を飛び出した。


「<マイータダンジョンの最深部にある宝物を持ってきてほしい>、なるほど了解しました」


クロウは依頼を受け取ると、他の4人もその場で傭兵登録し、同じように依頼を受けた。


「では、まずは情報収集をしましょう」


そういってクロウは4人に傭兵としての基礎、ダンジョン攻略の基礎、傭兵として生きていく上での基礎などなど、これから傭兵として、傭兵団を築き上げる者として、クロウは惜しみなく自分の知識を4人に授けた。


ガイルには武力を、武器と素手で戦うすべを

イルルには魔法を、無詠唱やMP上限を上げる呼吸法を

ジュールには技術を、魔道具や魔法陣を刻むすべを

クララには医学を、人体の構成と自己再生のすべを


そうして一週間が過ぎた後、クロウは依頼完了を窓口に告げ、4人と別れを告げた。そのころには既に彼女らの小さな傭兵団ができており、これから彼女らだけの傭兵生活が始まるだろう。


***


「お久しぶりです、先生」

「あー....」


人違いじゃなかった、知り合いだったわ。長いことこっちに来てなかったから分からなかったけど、すごい見知った顔が並んでいた。当初の4人だけだった小さな傭兵団は、いつの間にか数十万人規模の巨大な組織になっており、泣き虫へっぴり腰の4人も、全員見違えるほど成長していた。


「お久しぶりです、皆さん」

「いえ、そんな敬語だなんて」

「いえいえ、なんでも<アルテマの集い>と呼ばれているとかなんとか」

「お恥ずかしい限りです」

「それで依頼の件は?」

「あっ、いえそれはあくまで先生を探すためであって、依頼の品は既に持っています」


イルルはマジックバックからダンジョン最深部の報酬を取り出す。


「今回は実は別件の依頼がありまして」


そういってイルルは別件の話を始めた。


「ここから西に2つ国を跨いだ場所にある、(はしばみ)と言う小さな国があります。先生にはそのトップであるルビィさんを助けてほしいんです」

「おいおい、俺は傭兵だぞ、国の統治なんてできるわけないだろ」

「そうですか?噂に聞けば南国の女王の一件も先生のおかげだとか?」

「なんでバレてんの?」


みんな口が軽くないか?本当にどこから情報が漏れてるんだろ。


「と言う事で私達からの依頼は<榛国を救って>です」

「はぁ...しょうがないですね。報酬は?」

「私の身体で」

「要らない」

「酷いっ!」


数年経ったとは言え、数年前まで学園の生徒だった子供に言われてもな。その後4人と簡単に談笑した後、クロウは馬車に揺られて榛国に向かう事にした。


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