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勘違い魔王のVRMMO征服記  作者: 愛良夜
第一章 アズガルド大陸
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大将軍のかたき討ち

クロウが葬儀から立ち去った後、彼はいつもの服装に着替え、ゆっくりと歩きながら北帝領へ帰ろうとしていた。そんなクロウの元に松田幕府の将軍の使者を名乗るものが現れる。


「貴殿がクロウ殿か?」


今だ感傷に浸っているクロウに、声をかける者がいた。<松>の紋所が入った青い法被を着た青年だった。


「松田将軍は直々に貴殿に会いたい。至急、幕府へ向かうように」


クロウは容赦なく目の前の青年の首を掴み上げる。


「なんだその口の利き方は?」


正直、まだ松田幕府の容疑は晴れていない。クロウは死霊術師(ネクロマンセー)として本能的に分かることがある。死んだ彼の顔を見て一瞬で気が付いた。()()()寿()()()()()()()()()、つまり他殺で死んだのだ。クロウは彼の死を追求するべきかわからなかった。なぜなら開国将軍が殺されたなれば、きっと国をあげての大問題になるはず、だが誰も開国将軍の死について調べようとはせず、ただ彼の死を受け入れるだけだった。恐らく、上から強い圧力がかかっているのだろう、調べたら殺すとか。東部王国でそんな事ができるのは、実質的支配者である松田幕府の人間だけだろう。


「くっ、き、きさま」

「黙れ」


クロウは死霊術の一つである縛魂(ばくこん)尋問を発動する。生きたまま目の前の男の魂を引きずり出し、魂に直接質問する。


「開国将軍を殺したのは誰だ?」

「わ、わからない、わからないが、上の者が開国将軍の話をしていたのを盗み聞きしたことがある。内容はもう覚えていない」


人間の魂は嘘をつかない。嘘をつくのは頭で利益を考慮するからだ。そのまま引きずり出した魂を獄炎で焼く。悪魔のような断末魔を上げながら、彼の魂は燃え尽きた。


「黒、かな」


彼の遺体も獄炎で焼いておく。炭も灰も魂も魔素も残らないから便利だ。そんな矢先、周囲の建物の影から何人も同じように法被を着た武士が現れる。彼らは既に太刀を抜いており、クロウに斬りかかる気満々だ。


「<死魂葬送(しこんそうそう)>」


死霊術の一つである死魂葬送。業の数と殺した人の数だけ威力が上がるこの技をクロウが使うと、もはや天変地異に近い現象を引き起こした。無数の怨霊と怨念がクロウの体からあふれるように放たれる。洪水に近いそれらの亡霊は地を這い、空を飛び、壁をすり抜け、目標の人間に触れた瞬間、彼らの魂を引き釣りだした。引きずり出された魂は叫びをあげながらクロウの元へ戻ってくる。明るかった空には黒い雲がかかり始めた。クロウはひとまず目の前に立ちはだかっていた男達の魂に尋問する。獄炎を手に生み出し、彼らに問いかける。


「開国将軍の死について何か知らないか」

「わからない、わからないが、俺はここでもしお前が大人しくついてこなかったら殺せと松田幕府の<松野八代>に言われている」

「松野八代は誰だ?」

「新しく将軍の補佐役になったお方だ」


他のメンバーも同じような返事をする。


「そうか、<地獄葬送>」


開国将軍の関与者として、彼等には地獄に落ちてもらおう。地獄の十王には悪辣な地獄に落としてもらうように言っておく。一生その魂が救われることはないように。


「幕府は確か、西の方だったな」


クロウは死霊達を戻し、<松田幕府>本部の方へと歩き出した。流石に派手にやり過ぎたのか、既にクロウが松田幕府に逆らった事は各地の松田幕府の分家にバレているようで、何度も何人も<松>の字が入った法被を着た武士たちが襲ってくる。


「召喚:<牛頭(ごず)><馬頭(めず)>」


牛頭の手に金棒を持った巨大なミノタウロスと巨大な()を持った馬頭の番頭が現れた。彼らの手にはそれぞれ青緑色の炎を纏った投げ縄を持っており、クロウに斬りかかろうと飛び出してきた武士に向かって投げ輪を投げると、そのまま彼らの魂を捕まえ、引きずり出した。牛頭や馬頭が引きずり出した魂をひとにらみすると、彼らは声も上げられず、すぅっと消えていった。恐らくは地獄に連れていかれたのだろう。


牛頭と馬頭を従え、クロウは松田幕府本部へと再び歩きだした。


「控えろ!ここは将軍様のおわす場所であるぞ!」


松田幕府本部の入り口、巨大な松の紋章が入った大きなドアの前に、門番が2人立ちはだかってクロウの道を阻んでいた。


「牛頭、馬頭」


名前を呼ばれた牛頭と馬頭は容赦なく彼らの魂を捕らえ、地獄に送る。そして牛頭と馬頭はクロウのために目の前の大きな扉を開けた。どうやらここを守備しているのは歴戦の猛者たちのようで、牛頭と馬頭の姿を見て恐怖を覚えても、決して怖気づかなかった。


「牛頭、馬頭、殺すな」


2頭はクロウの指示を了承すると、投げ縄をしまって、拳やキックで次々と彼らを気絶させていった。1階2階3階と次々守備隊を昏倒させ、最上階にたどり着く。


「幕府に逆らう愚か者め」


一体どこから来る勇気か分からないが、松田幕府の将軍、補佐役の松野八代はそういうと、虚ろな松田将軍の耳元で何か言うと、松田将軍本人は剣を抜いてクロウに斬りかかった。


「ははは!将軍に逆らう愚か者め!死ぬがよい!」

「牛頭、馬頭」


クロウの2頭はあっさりと2人の魂を抜きだす。2人の肉体はその場に倒れこんだ。


「牛頭、将軍は殺すな」


馬頭が引きずり出した松野の魂に尋問する。


「松田幕府の初代であるプレイヤーはもうおらず、代わりに自分が新しい将軍をトップにした。だが開国将軍の名声が邪魔になったので殺した」

「馬頭、戻せ、そしてこいつの両手足をへし折れ」


馬頭が松野の魂を戻すと、そのまま両手足を捻じるようにへし折る。クロウは看板に「私は開国将軍が邪魔になったので殺しました」と書き、松野の首にかけて天守閣から町中の人に見えるように吊るした。その後

牛頭に将軍の魂も戻すようにいい、彼を気絶させておいた。それだけやると、クロウは満足して北帝領に帰った。数日後、東部王国の全ての人は開国将軍の死が松野のせいだとわかり、東部王国中の人間が激怒した。だがすぐに王国は松田将軍をトップに再び動き始めた。皆、今日も強く東部王国で生きていくだろう


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