ヒノカわからせ
それからしばらく、季節は夏になり、気温もクロウの部屋も熱くなってきた頃、クロウは再び<戦乙女達>本部のギルドハウスを訪れていた。どうやらヒノカがLv100を超え、強くなったのでクロウと手合わせしたいとほざきだしたらしい。反抗期か?反抗期なのか??
「反抗期か?」
「違うし!」
「成長期か、<鑑定>」
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名前:ヒノカ
メイン職業:火蝶の勇者
サブ職業:罠大師
<ステータス>
Lv.104
HP:3450
MP:2600
筋力:150
体力:98
敏捷:160
精神:127
堅剛:96
知力:120
<スキル>
幻蝶乱舞
生活魔法
回復魔法LvⅧ
罠探知
罠作成
罠解除
火蝶封訣
<加護>
火神の加護+
精霊蝶の加護+
武神の加護+
<呪い/祝福>
精霊蝶の祝福+
武神の祝福+
武神の加護+:近接格闘スキルを非常に習得しやすくなる。筋力、俊敏が大幅に上がる。
武神の祝福+:近接格闘スキルの威力が大幅に上がる。Lvアップ時、筋力、俊敏が大幅に上がる。
火神の加護+:火属性被ダメ-80%、火属性与ダメ+80%。熱耐性上昇
精霊蝶の加護+:蝶の名を冠するスキル、魔法の効果を自由に操作できる。
精霊蝶の祝福+:多種多様な蝶々を生み出すことかできる。蝶の名を冠するスキル、魔法を使用するとき、MPを消費しない。
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ステータスや加護を見たらかなり強くなっており、恐らく他のパーティメンバーも追い抜いたのだろう。今日は他の3人はおらず、彼女たちは観客席で見学のようだ。元気になったマイの方を見てみると、額に怒りマークが浮かんでおり、声には出していないものの、口パクで
「た た き つ ぶ せ」
と言っていた。何をやったんだヒノカよ。浮かれすぎだろ。
「僕ってば南国で随一の勇者だからね!セシリア様も認めてくださったんだ!」
勇者の先輩で言えば、魔王形態クロウの分身を撃退したアマネ達3人が元祖なんだが、残念ながら3人とも今は支部に出張で本部にいないらしい。おかげここ最近はまともにヒノカに打ち勝てる者もおらず、マイも幻蝶乱舞と火蝶封訣のコンボにはかなわず、そのせいか天狗になっているそうだ。そう言うわけで、今は第2決闘場でヒノカと勝負する事になった。
「開始!」
マイの掛け声と共に戦闘が始まる。
「未来蝶!10年後の私へ!」
虹色の蝶々がヒノカを包む。そうして暫らくした後、そこには背丈の伸びた恐らくは20代のヒノカがいた。
「おや?また会ったね。これは若い僕が調子の乗ってお兄ちゃんにケンカを売ってしまった感じ?」
「流石、未来のヒノカ」
「はぁ、先に言っちゃうけど、僕ってばなかなか頑固で負けず嫌いだから、これからもたびたびケンカを売ると思うけど、そのたびにボコボコにしていいからね」
「いいんだ」
「うん、お兄ちゃんと戦うたびに物凄く強くなるからね。武神様のおかげかな?」
通称、未来ヒノカはいつぞやの魔王戦と同じく赤い蝶々で作った火蝶剣を12本、作り上げた。
「さて、勝てないのはわかってるから、本気で行くよ」
ヒノカは眼を瞑って集中する。
「幻蝶乱舞、惑わせ我が短剣」
その言葉を皮切りに、ヒノカは12本の短剣をクロウに向けて発射する。
「火蝶封訣、燃やせ我が火蝶」
短剣だけではなく、かつて魔王を焼いた火の蝶も飛んでくる。魔王すら焼いた火の蝶に12本の火蝶剣、その苛烈な攻撃にクロウは慌てることなく、ただ一言、
「魔王の心臓、起動」
その瞬間、火の蝶も火蝶剣もクロウに吸われるように取り込まれた。先の魔王戦とは違い、以前の魔王が吸収できなかった火蝶もクロウはあっさり吸収する。魔王にも格の差と言うものがある。先の魔王は生まれたばかりのいわば赤ん坊。クロウは魔王として既に無数の時間を過ごしており、他にも魔神としての加護もあるため、魔王の中でも最強と言えるだろう。
「流石...」
あっさりも蝶も吸い込まれたヒノカは、諦めて新しく打ってもらった短剣を取り出した。そして今度は魔力を使って6本の短剣を宙に浮かせ、改めて2本手に構え、合計8本の短剣で攻撃してくる。
「魔王権能発動、<物質崩壊>」
宙に浮いた短剣を含めて、一瞬で短剣が全て砕け散る。
「えぇ...ずるい」
未来ヒノカは何もできずにその場にへたり込んでしまった。そして時間になり、いつものヒノカが戻ってくると、へたり込んだまま泣き出してしまった。マイはそこまで!と言い、泣き出したヒノカに追い打ちをかけると、ヒノカは明日からまた特訓する。そしてまたクロウに勝負を仕掛けると言って、マイと共に訓練場へ向かった。
ヒノカの一件が終わり、再び北帝領に戻ってクロウ領で新しい魔法の研究をしていると、ベルアルから呼び出しがかかった。通話用のシャドー・スライムからは宮殿ではなくいつも使っている裏の庭園に来いと言われた。大人しくいくと、ベルアルが珍しく鉄面皮をより険しい顔にして一通の手紙をクロウに渡した。手で顔を覆い、悲しい背中を見せるベルアル。一体何事かと思って、手紙を読むと、そこには衝撃的な内容が書かれていた。
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東部王国、開国将軍死す
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