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勘違い魔王のVRMMO征服記  作者: 愛良夜
第一章 アズガルド大陸
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勇者とクロウその8

***


「勇者さん!起きて!起きて!」


4人は必死に回復魔法を使いながら勇者を揺さぶって起こしていた。暫くすると、彼は再び目を覚ます。覚ましたが、彼の眼には恐怖と萎縮しかなく、その場からも立ち上がろうともしなかった。


「勇者さん!戻るよ!魔王をやっつけよう!」

「うるさい!無理だあんなやつ!どうやって勝つんだよ!」

「あきらめちゃだめだよ!ここで勇者が諦めたら誰が魔王を止めるの!」

「黙れ!知るかそんなこと!ここは異国だ!僕は聖王国の勇者だ!こんなところで死んでたまるか!」


少女4人の手を振りほどき、勇者は負け犬のように目もくれずに逃げ出してしまった。


「え?勇者さん!勇者さん!!」


全員が追いかけようとした瞬間、マイの悲惨な悲鳴が聞こえてきた。ヒノカ達4人は顔を見合わせると、勇者とは逆の、魔王のいる方へと走り出す。


***


魔力を吸いつくされたマイはその場に倒れこむ。魔王は上半身に付けられた傷が半分だけ治ったのを確認すると、素直に目の前の敵を称賛した。


「見事だ戦乙女(ヴァルキリー)、こんな傷をつけられたのは100年ぶりだ」


魔王はマイにトドメを入れず、再び移動しようとしていたが、それよりも先に後ろから魔法が飛んできていることに気が付いた。


「む?<魔法防壁>」


珍しく魔王が防壁魔法を使った。魔王が振り返ってみると、ヒノカ達4人がいた。


「ほう、小娘が4人、我と戦うその勇気は称賛しよう。死にたくなければ逃げるがよい。魔族にも誇りと言うものがあるからな」


魔王は口頭勧告だけし、再び飛び上がろうとしたが、今度は弓が背中に突き刺さった。


「小娘、2度目はないぞ」


魔王は再び<魔火球>を使用する。だがその火球はパーティの盾騎士に盾で弾かれた。


「ほう、小童だと思って油断したが、あのバカ勇者よりはマシのようだな」


魔王はそういうと、一気に弓使いの後ろに回り、一撃で彼女を昏倒させようとしたが、盾騎士がその大きな盾で攻撃を受け止める。その隙をついたヒノカが両手に持った短剣で魔王に斬りかかる。それを感じた魔王は反射的に横に避ける。弓使いは再び矢を放ったが、魔王にあっけなく矢を掴まれた。


「なるほど、そこで転がっている女が言う弟子とはお前か、ならばお前と遊ぼう」


魔王はそういうと、再び同じように弓使いを狙って動いた。それを察知した盾騎士は素早く攻撃を受け止める構えをとったが、魔王は腕に力を入れ、魔力も込めて盾騎士の盾を破壊し、そのまま腹部の鎧も貫通する威力で盾騎士を殴り飛ばし、気絶させた。弓使いは仲間の安否を確認したい気持ちを抑え、魔王の脳天めがけて至近距離から弓を放ったが、


「狙いがバレバレだ」


と言い、額を液化させて矢を飲み込んだ。それに驚く弓使いの首を掴むと、そのまま盾騎士のいた方へ放り投げ、そのまま気絶させた。何とか仲間の回復をしようとする回復術士の背後へ一瞬で回り、


「敵から目を離すな」


それだけ言って後方から斬りかかってきたヒノカの短剣を受け止めつ、体を捻じってその勢いを尻尾に乗せ、回復術士も同じように吹き飛ばして気絶させた。


「よくも仲間を!」

「怒るな、冷静さを欠いては何も出来ぬ」


技もへったくれもない剣撃を魔王に浴びせるが、魔王は手の甲であくびしながらいなす。


「ふむ、お前の師匠の方が百倍マシだぞ」


その言葉にヒノカは正気を取り戻し、一度距離をとった。そして自身へバフをかける。


「<怪力><敏捷上昇><空踏み>」


そしてヒノカもマイ同様、短剣を一つ魔王の方へ放り投げた。


「幻蝶乱舞!飛んで私の短剣!」


投げられた短剣はマイと同じように魔王の死角から襲い掛かる。そしてヒノカ自身も両手に持った短剣に火を纏わせ、魔王に斬りかかるが、


「もう見た」


そう短く言い、ヒノカの短剣を掴んで腕力だけで他の仲間の場所へ投げ飛ばし、液化した背中で受け止めた短剣を引き抜いて短剣をまじまじを眺めた。


「美しい、いい短剣だ。さぞ腕の立つ鍛冶師が打ってくれたのだろう」


砂煙の中、ゆっくりと立ち上がるヒノカにそういう。


「だが、お前では宝の持ち腐れというものだ。返すぞ、ほれ」


魔王はそういうと、まるでボールを投げるように短剣をヒノカの方へ投げた。するとその短剣は砂煙を突き破り、的確にヒノカの両肩へ突き刺さり、勢いそのまま近くの木にヒノカを縫い付ける。


「しまった、力を入れ過ぎたか?まあいい」


魔王は再び立ち上がろうとしたが、後ろから再び短剣が飛んできていることに気が付いた。


「む?」


魔王は飛んできた短剣を受け止めると、ヒノカの方を見る。


「まだ立ち上がるか」


魔王は飛んできた短剣をそのまま飲み込み、ヒノカの攻撃を受け止めた後、もう一度同じ場所へ投げ飛ばした。そしてもう一つの短剣も飲み込むと、再び飛び上がろうとした。だが、再び銅の短剣が飛んでくる。


「しつこいぞ、何度やってもお前では勝てない」


再び飲み込み、今度は容赦なくあの盾騎士の防御を貫いた力でヒノカを殴り飛ばす。流石のヒノカもこれには堪えたようで、口から血を吐き出す。吹き飛ばされ、地面に叩きつけられるが、ヒノカは意志の力だけで自分の内臓の傷を癒し、再び立ち上がる。


「寝ていろ、死にたいのか」


ヒノカは再びスペアの短剣を取り出し、もはや少しも出ない力を振り絞って声を出す。


「ま、けない!」


ヒノカはかすれた声で魔王に斬りかかる。


「その根性、尊敬するべきか。さらばだ」


魔王はヒノカの短剣を奪い、そのまま彼女の腹部に突き刺した。声も出せずにヒノカは倒れこむ。


冥王の(ハデス)..」


そこまで言ってクロウは異変に気が付いた。周囲の気温が上がっている。誰かが火魔法を使ったかと思ったら、ヒノカから大量の赤い蝶々が舞い上がった。魔王もその様子に驚き、後方に飛んで距離を取った。


「酷いな~、女の子のお腹に剣を突き刺すなんて」


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