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勘違い魔王のVRMMO征服記  作者: 愛良夜
第一章 アズガルド大陸
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勇者とクロウその5

翌日、クロウは戦乙女達(ヴァルキリーズ)のギルドにやってきた。話を聞けば、彼女は他の同じくらいの年齢のパーティメンバーと寝食を共にしているみたいで、タンクに盾騎士、アタッカーにヒノカ、ヒーラーに見習い修道女、遠距離には弓使いと言う隙の無いテンプレートなパーティ構成だ。最近はこの4人でよくイリアの森でゴブリンを倒して回っているという、どうやら最近少しゴブリンの数が増えているようで、以前はやぐら2つと警戒しているゴブリンが4体と言う数だったのに、今では2倍になっており、マイも素早くイリアの街のギルドにこの件を報告した。


「なぜこんなに...」

「魔王復活の兆しでは?」


イリアのギルドマスターが先代のギルドマスターより話に聞いたことがあると言っていた。勇者がその力をつけると同時に、封印されし魔王もその権能を再び取り戻すと。各地の異常現象、モンスターの活性化、魔族の数が劇的に増えるなどなど、これは魔王復活の前兆と言われており、早急な対処が必要だと言う。ヒノカはまだ勇者のジョブが解放されておらず、恐らく魔王は聖王国が育てている方の勇者に反応しているのだろう。だがどこから魔王が現れるのかがわからない。北帝領から現れるのであれば、一瞬で魔王を魔素粒子も残らないくらいに破壊できるが、他国に現れるのならばそう簡単に破壊兵器を打ち込めない。とりあえずまだゴブリンの異常発生としか断定できず、魔王復活の兆しとしては特徴がまだ弱かった。とりあえずギルドはゴブリンを最優先討伐対象とし、1体あたりの討伐報奨金も大きく釣り上げた。そのおかげか、イリアの森に住まうゴブリンの数は大きく抑えられたが、他の街のギルドはそうもいかず、各地にアマネ達が戦乙女達(ヴァルキリーズ)のメンバーを派遣しているが、どうやら話によるとゴブリンだけではなく、オーク、コボルト、スライム、魔塔のモンスターの数も倍になっており、ダンジョンの広さと凶悪さも増しているんだとか。


「黒だな」

「その通りですね」


クロウは戦乙女達(ヴァルキリーズ)の上層部会議に出席し、これは単純なモンスターの数が増えると言うイベントではなく、魔王復活の兆しだと言う事を確信した。それを裏付けるように、ゲーム公式からも緊急イベント<魔王復活>の開催が告知された。内容は4か月後に魔王の1人が復活するから、みんなで頑張って魔王を打ち倒そう!というものだ。今日から魔王復活まで全国各地で異常現象も発生するので、みんな頑張って乗り切ってね。というおまけもある。クロウは早速セシリアとベルアル、それにミナトにも伝書霊鳥を使ってこの情報を伝えた。いち早く返信したのはベルアル、彼女曰く、


「戦争が無くて鈍った北帝兵共のいい訓練台になっている。魔王討伐も必要なら北帝兵を送ろう」


と余裕綽綽な様子だった。それもそうだろう。北帝領の出現するモンスターは他のどんな王国よりも強力なものばかり、クロウのような物好きでなければ、バーサーカーですら避けて通るのが北帝領だ。正直北帝兵10人程度で魔王を倒せそうな気もするが、やはり彼等には巨大な北帝領を守ってもらおう。次に返信したのはミナト、


「フィールドが小さく、魔塔やダンジョンも少ないので大丈夫です。だけどヒューゴ領や教会領は大変なことになっているようで、数多くの難民が中立領に流れ込んだり、こちらに来たりしています」


手紙ではわからないが、恐らくミナトは税収が増え、実は内心ラッキーとか思っていそうだ。東部王国の様子はわからないが、()()()()が健在ならなんとでもなるだろう。最後はセシリア、彼女は手紙ではなく、戦乙女達(ヴァルキリーズ)の本部ギルドハウスに直接やってきた。かなり急いでやってきたようで、肩で息をし、逼迫した顔を見せている。


「正直、貴方たちのおかげでなんとか抑えられている事は大きな助けになっているわ。本当にありがとう」


セシリアは水を一口飲むと、アマネ達にそういった。


「私の父は王家の魔塔にもう籠りっきりで必死にモンスターを抑えてる。本当は私も父に加勢したいのだけど、豊穣の剣は私にしか使えないし、私も今の異常現象の中、政務を放り投げて父の助けをするわけにもいかず、早急な解決をしたいところだけど、後3か月はかかるのよね」

「ああ、そうらしいな」

「そこで、私はミナト領と同盟を結びたいと考えてるの、彼は北帝には及ばないものの、西部王国では既に数少ない優良な武力を誇る国だわ。だからお願い!ミナト君に会わせてくれないかしら?」


セシリアはクロウに懇願した。なるほど、そういうわけか。どうしてベルアルに頼まないかのわからないが、本人がそういっているので、素早く会う手引きをすることにした。だがどうせならガチガチにミナトを緊張させてやろうと思い、セシリアには公式で派手にやろうと言った。


「ほら、頼みごとをするときはね?」

「なるほど、一理あるわ」


セシリアはミナトに使者を出し、南国=ミナト同盟を組みたいのでサウフォードの宮殿で正式な会合を2日後にしないかと言う知らせを出した。翌日、使者はミナトからの承諾と、武器装備一式が早速贈られてきた。最新型の装備と武器のようで、中には製造方法まで記載されていた。


(ビビりすぎだろミナト..)


そして会合当日、かみっかみの嚙み過ぎてもはや文字通りの舌足らずになりそうなミナトを他所に、セシリアは南国=ミナト同盟を結んだ。内容としては、サウフォードにもミナト領の戦力を派遣してほしいのと、魔王討伐戦の際はミナト領の兵士も参加することを確約することだ。代わりにミナト領の兵士、通称ミナト兵の衣食住は全てサウフォード側が負担し、この同盟は魔王討伐終了まで続くと言うものだ。確かに南国兵は既に強くなったと言えるが、先の大きな戦争からまだ人口が復興できておらず、数が足りない、セシリアも出産を推奨しており、育児手当などの給付金を上げてはいるが、一朝一夕で解決できる問題ではなかった。そうしてミナト領も強力な最新型の装備を装備した規律正しいミナト兵を3000人ほど南国へ派遣し、彼らを駐在させた。やはりミナト兵は装備の質が南国兵とは大違いで、モンスター討伐はミナト兵の協力もあり、順調に進んでいた。セシリアもミナト兵が駐在してから、彼らの規律正しさとと武器の性能と言う大きな差を感じ、どうにかミナト領の装備を作り出せないかとミナトに聞くと、素材の多くはヒューゴ領からも取れるので、ヒューゴ爵に聞いてみるのが1番だと言っていた。セシリアは早速ミナトに貰った製造方法のうちの素材はあるかとヒューゴ爵に聞いてみると、安定して供給できると言っていたので、セシリアも食料や調度品と交換で、貿易契約を結ぶことにした。


これにより、南国サウフォードはだんだんと安定し、ミナト兵の装備を全ての南国兵に装備させる頃には、一か月が経とうとしていた。

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