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勘違い魔王のVRMMO征服記  作者: 愛良夜
第一章 アズガルド大陸
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勇者とクロウ

勇者、天使と神の祝福を受け、邪悪なモンスターの長である魔王討伐の宿命を背負ったもの。むしろどうして今まで出てこなかったのか不思議に思うくらいゲームが開始してから、勇者が生まれるまで時間がかかった。数か月ぶりにゼロに何か知らないか聞こうと思い、再び南国のいつものカフェにやってきたが、セシリア曰く、


「ケーキお代わり、後、ゼロは聖王国に行ったみたい。多分勇者について探ってるんだと思う。時々彼から情報を教えてもらってるよ。勇者は今までいたんだけど、みんな弱すぎてモンスターに倒されちゃったんだって。だから今回の新大陸の聖王国で生まれた勇者がまだ生きているのは、ある意味ではすごい事かも」


3つめのケーキを食べながら、セシリアは自分のコーヒーを飲んでいた。


「勇者ね...」


また聖王国かとクロウは呆れた。聖女の件といい、セシリアの件と言い、いつも何かと色々面白いことをしているのなと思った。勇者はまだ聖王国近辺で活動しているらしく、Lvもまだまだ低いが、新大陸で活動しているプレイヤーの情報によると、天使や神の祝福が勇者を致命傷や危険から遠ざけているらしい。おかげで勇者は常に自分と弱い敵としか戦っておらず、しかもパーティに高Lvの盾騎士や回復術士もいるし、勇者を除く全員女性でうらやまけしからん輩なんだとか。クロウは湧き上がる嫉妬心を全てMPに変換した。


その後クロウはアマネ達の元へ行く。彼女たちも何か勇者の情報がないか聞くためだ。


「勇者か...」


Lv400を超え、トップランカーの範囲内に入った彼女たちからしたら、むしろ勇者などいなくても彼女たちだけで魔王が倒せそうなものだが、ゲームの趣旨は王道RPGなので、魔王を倒すのはいつだって勇者だと決まっているのだろう。


そんなことよりも、クロウはパーティを組んで戦いたいと思った。一時的なパーティではなく、一緒にダンジョン攻略したりするあれだ。思えばゲームを始めた当初、ベルガダンジョンその1で数多くの野良プレイヤーがパーティ募集をかけていたというのに、それを全部無視してクロウはスケルトンや他の召喚獣と共にダンジョン攻略をしていた。別にいいんだよ。いいんだけど、なんか違う気がする。ゲームシステム的に一緒にいるのではなく、自由意思で一緒に戦いたい。クロウはそこまで考えて一つ気づいた。無理じゃね?確か運営側がLv差がありすぎるプレイヤー同士はパーティが組めないようになっているはず。既にカンストしたクロウは、アマネ達とすらパーティを組めなくなっていた。運営はこれをいわゆる金を払って上位プレイヤーに寄生するプレイヤーを阻止するためだと言っていたが、まさかここで弊害が出るとは。仕方がないので、クロウは最終手段として、()()を買うことにした。


オーバーザホライゾンでは奴隷は禁止されていない。少し前になった妖王のアプデで、今ではNPCだけではなく、レッドプレイヤーも奴隷落ちできるようになっている。ただ奴隷落ちしたプレイヤーの多くはそのアカウントを捨て、新しくゲームを始めるので特に意味がないが、そのキャラクターは一生奴隷のNPCとしてゲーム内に寿命を迎えるまで残るので、見せしめにはなる。だが奴隷と言っても何をしてもいいというわけにはいかず、衣食住の保証と最低限の人権は守られる。だから無理に手を出そうものなら一瞬でレッドプレイヤーになるし、全国各地の奴隷商にも情報が行きわたり、一瞬でブラックリストに記載され、生涯の立ち入り禁止と購入拒否を言い渡される。あくまで奴隷とは一種の契約に過ぎないのだ。


戦闘できる奴隷とはパーティを組めるし、Lv制限もないので、クロウは早速新大陸で一番大きな奴隷市場がある、新大陸西方の中央歓楽街に向かうことにした。


ポータルを潜り、そのまま歓楽街行きの馬車に乗る。他の乗客も数多く乗っていたが、全員心なしか息が荒い。恐らくは歓楽街の風俗通りに行くのだろう。中央歓楽街に行くためには年齢制限が設けられており、リアル年齢が二十歳を超えなければそもそもこの馬車を認識することすらできない、つまり今クロウと馬車を共にしているのは、全員二十歳を超えたプレイヤーだろう。クロウはまだこういうVRMMOで異性を抱いたことはないので、そういうのはよくわからなかった。


馬車に揺られる事3時間、仮眠をとっていたクロウは、瞼に差し込むネオン色の光に呼び起された。逆バニーの客引きやミニスカメイド、スクール水着など、刺激的な格好の客引きが馬車にいる人たちめがけて手を招いていた。目的地に着いた馬車から素早くおり、クロウはいち早く目的の奴隷市場へと向かう。


先ほどの刺激的な場所とは違い、こちらは至って規律正しい、まるで中央卸市場のような空気感だった。強いリザードマンの奴隷が数万金貨で売られ、奴隷落ちしたレッドプレイヤーは舌をかみちぎって自害しようとしているが、体に刻まれた奴隷紋がそれを阻止する。一部レッドプレイヤーは檻に閉じ込められているが、他の奴隷たちは至って普通で、この中央奴隷売り場で掃除をしていたり、訪れた人の案内をしたりしていた。どうせならクロウはゆっくりと売り場を回る、人間種から亜人種、終いには悪魔種までいる中、大きな布で隠された部分があった。気になって入ってみると、そこは檻に閉じ込められた奴隷ばかりで、クロウが<鑑定>してみると、半数は精神疾患、半数は死の淵だった。売り手側の奴隷への人権保障は衣食住のみ。服もあるし飯も食えているし檻の中とはいえ雨風を凌ぐ場所もある。恐らく市場監査側の人間も何も言えないのだろう。致命的な病気にかかっている奴隷もいる。クロウは<賢者の石>で薬を練成し、苦しんでいる奴隷たちに渡した。飲むか飲まないかは彼ら彼女らの選択次第だ。


奥へとさらに進んでいくと、そこには一人の少女が座っていた。赤い髪の毛に険しい目つき、体はまだ幼子だが、その眼の奥からは闘志を感じる。クロウが歩み寄ってきたのを見ると、警戒して後ろに下がったが、すぐに檻にぶつかってしまった。クロウは彼女の方をじっと見つめると、期待するようにこう言った。


「<鑑定>」

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