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勘違い魔王のVRMMO征服記  作者: 愛良夜
第一章 アズガルド大陸
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妖王と里長その3

「なかなか面白い結果が見つかった」


開口一番、ベルアルはクロウにそう言いながら書類の束を渡してきた。どうやらこれがベルアル達が調べ上げた結果のようだ。


外神教(がいしんきょう)


これが分裂前の西部王国に蔓延っていた邪神信仰の宗教の名前だ。人間大陸の外には他の星の神がおり、彼らの力は大陸を見守る神よりずっと強力で強大であり、いずれ大陸はその外にいる神たちに滅ぼされるだろうと、そういう信仰らしい。


(ク〇ゥルフ〇話じゃねぇか!)


一抹の心当たりを振り払って、書類を読み進めた。


彼らには時を渡る力もあり、過去未来に渡って数多くの信徒や分派があるんだとか。浮世の里でキバを妖王をしたのはこの外神教の東部分派の<外仙魔教(がいせんまきょう)>。生贄を通して外神の力を借りて、仙人へと昇華しようとする邪法宗教の一つだ。その他にも勢力分布図や過去の悪事が記載されていたが、今回のイベントに必要な情報はあらかた見つけた。外仙魔教のメンバーは恐らく妖王の領域最深部にいるだろう。滅ぼした村々から生贄として村人を攫い、恐らくは外神の力を得ようとしているのか。流石に今のクロウの技術ではまだ()()()神殺しはできない、と思う、のでベルアルに浮世の里のお土産である葛餅ときなこ餅をプレゼントし、今度はセシリアの所へ向かうことにした。


セシリアとミナトは共にベルアルと大差ない情報を探ってきたようで、ミナトは最近この外神教の宣教師たちが一度布教しに来たことがあると言っていたが、そんな余裕はないのでほったらかしていたら南部の教会領へと向かったらしい。セシリアもミナト領へ来る前に彼らが一度来たみたいだが、セシリア達南国は天使信仰をしているので神信仰の彼らとは宗教観の違いによりあっさり断ったのだとか。


(解散直前のバンドみたい)


クロウもベルアルも無神論者なので天使信仰と神信仰の違いはよくわからなかった。そんな風にみんなが集めた情報をまとめ、クロウは再び浮世の里へ戻る。このころには数多くのプレイヤーがグルーザにたどり着いたみたいで、時たま町の様子を見に戻っていたアマネ達3人は、今やグルーザの街の防衛戦力は一定数を超え、エルザもほくほく顔で街の警備や防衛を固めているんだとか。ユキもようやくやってきたみたいなので、ここ数日で集めた情報をみんなと共有する。


外仙魔教(がいせんまきょう)...」

ユキは険しい顔で記憶に刻むようにその名前を繰り返した。


その後、クロウはこれ以上グルーザの街に人が増えると、恐らく妖王はより多くのモンスターをグルーザに向かわせるだろうと予測した。既に数多くの村や町を襲撃した今、恐らくグルーザの街の人々を捕まえれば必要な生贄が事足りるのだろう。そこでクロウは逆にそれを利用するべきだと言った。


「お主、なかなか狂っているな」


クロウは逆に人をさらに多くグルーザの街に送りつけ、より妖王や魔教のやつらに全勢力を投入しててでも襲い掛かるほどの生贄的魅力を与えれば、妖王本人を守るモンスターの数は少なくなると踏んだ。そこで別動隊が妖王の本拠地へと攻撃するという、いわばグルーザの街をまるっと釣り餌にした作戦だ。


「もしグルーザの街が落ちたら、数万人が死ぬことになるぞ」

「大丈夫、俺はアマネ達、戦乙女達(ヴァルキリーズ)を信じてる」


そう言うと彼女らは顔を見合わせて「しょうがないわね」と言いながら、ポータルから彼女たちの本拠地へと戻った。クロウもユキに任せろと言い、ポータルを潜ってミナト領へ向かった。


「ふふふ、ホンマに面白い男でありんすなぁ...グルーザの街をまるまる餌食にし、数万人を餌食にして、別動隊で妖王と魔教を直接叩く。まっこと狂った魔王でありんす」


ユキもひとしきり笑った後、覚悟を決めたように己の屋敷へと戻っていった。ミナト領に戻った後、クロウはミナトに大量の魔術兵器と魔術強化外殻を注文した。ミナト達が現状生産できる魔術兵器はトライマジックスタッフ。3つの魔法を記憶し、詠唱や魔法陣無しで自由に使える魔杖だが、クラスはⅤまでだ。魔術強化外殻は魔法使いや魔術使いのためのコートで、常にクラスⅣ魔法であるの<物理魔法防壁>が発動している。クロウはこれらを数十万個発注し、賢者の石で大量の素材を生み出し、ミナトに武器工廠フル稼働で3日で全部作り出してくれと言った。ミナトはどう考えても無理だと言っていたが、ミナト領の年間税収3年分の金貨を押し付けると、2日で準備すると言い、ミナト本人も武器工廠へと飛び出していった。


次にクロウはセシリアの元へと向かい、大量の食料を買い付けると言った。グルーザの街がどれほど持つかわからないけど、腹が減っては戦うものも戦えない。セシリアにどれだけ欲しいと言われたので、20万人が1か月持つくらいと言った。セシリアはそれを聞いて、「どの国と開戦したの?」と聞かれたので、戦争ではなく自己防衛のためだと言ったら、不思議に思いながらも承諾してくれたようで、国庫から20万人が2か月もつくらいの食料を多めにくれた。ただでもらっては心もとないので、南国の未開拓地にスケルトン・ワーカーとビルダーを送り、ミナト領にあった武器工廠を一つ南国にも作っておいた。セシリアにはこの事を伝え、のちほどミナト領の技術者と武器食料交易条約でも技術交換でもその工廠は役に立つだろうと言っておいた。


2日後、ミナトから予定より多めの武器装備をもらい、予想外の良い出来事だったので、追加で2年分の税収相当の金貨を渡しておくと、ミナトは飛び上がりそうなほど喜んでいた。そしてそれらの装備を持って、ちゃちゃ丸にもグルーザの街の防衛戦の話をした。最初は疑心暗鬼だったが、新モンスター相手にしこたま魔導砲をぶっ放せると聞き、急いでかき集められるだけの魔法使いと魔術使いを連れてグルーザに向かうから明日また来てポータルを開いてくれと言われた。クロウも少しクロウ領に戻ってやる事があったので承諾だけすると、すぐにクロウ領へ転移した。


クロウの宝物庫、現状ゲームでオーバーパワーやバランスブレイカーと言われる武器装備、アイテムが所狭しと詰め込まれている。そんな中、クロウは一つの太刀を取り出した。寧々斬丸と言われる斬妖刀だ。妖怪しか斬れない変わった刀だが、妖怪を斬る事に関してはどんな武器よりも有効的だ。


翌日、ちゃちゃ丸と彼女のギルドメンバー7000人、アマネ達戦乙女達(ヴァルキリーズ)6000人、総勢13000人でグルーザの街へ向かった。ポータルを潜り、出てきた瞬間、彼らは轟音と衝撃に驚いた。そして全員がポータルから出てくると、全プレイヤーに<グルーザ防衛戦>の緊急クエストが出現し、全員素早く防衛位置に着いた。

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