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勘違い魔王のVRMMO征服記  作者: 愛良夜
第一章 アズガルド大陸
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西部王国大反乱

セシリアが豊穣の剣を手に入れ、再び宮殿に戻ると、彼女はそのまま数多くの大臣やメイドに拍手喝采で見守られ、そのまま流れるように王位継承式が始まった。彼女は初代と同じ、南部王国の始祖として、南国の偉大な女王して、その誰もが望んでやまない権力と責任の椅子に座った。クロウも西部の学園同様、無事に水魔の塔を踏破した生徒には<威力増加LvⅠ>と<消費MP軽減LvⅠ>を刻んだ魔杖や魔剣をプレゼントした。


そうして大陸中から経験のある先生やプレイヤーが聖セシリア学園に集まり、いつしか南国の軍隊も再編が完了し、再び訓練が始まる頃、クロウも北帝領に帰還していた。北帝領に戻ったクロウはのんびりと東部で釣りをしてはその場で捌いて食べていた。遠くからは海底資源採掘機や大きな漁船も数多く見える。クロウは平和を感じながらのんびりと再び釣り糸を垂らした。


横にはベルアルもいた。火炎属性を付与したコートで身を包み、凍えぬようにしながらクロウと同じように釣り糸を垂らしていた。ここ最近はずっとベルアルと行動を共にしている。久しく自分の領地にも帰ってないけど、どうなってるのやら。


「陛下!へぇええかぁあああ!」


どたどたと伝令兵が走ってくる。


「読め」


振り向きもせずにベルアルが後ろの伝令兵に向かって読み上げろと言う。


「は!西部王国の密偵より、西部王国で反乱が起きました!」


ベルアルとクロウは同時に振り返る。クロウはすぐさま転移魔法を使い、全員を連れて北帝宮殿に帰還した。その後、ベルアルとクロウはほぼ同時に、いっそ、まるっきり分断してしまおうという作戦を立てた。元より古式魔法派と新式魔法派など、派閥争いが多すぎて、むしろ今までどうやって一つになっていたのかよくよく考えてみると逆に不思議だった。ベルアルとクロウは、今回の反乱蜂起を起こした派閥でもある、新式魔法派に付くことにした。ベルアルの密偵部隊を派遣すれば安定して真っ二つにできるが、どうせ暇なのでクロウがいく事にした。悲しいかな、争いがなければ国も人も進化しないのだ。


クロウは今回は新しい身分を用意した。Lv90の魔法使い。特に理由がないが、以前の吟遊詩人のあれは身分が割れているので、他の身分にした方が都合がよかった。現在西部王国は反乱真っただ中、しょうがないので久しぶりにクリスティーナに乗っていこうかなと思った矢先、全プレイヤーに緊急クエストが発表された。


クエスト名は<西部王国大反乱>

プレイヤー達はそれぞれ反乱派、国王派に所属することができ、西部王国内で対抗勢力の拠点を奪い合うタイプのイベント戦だ。それぞれ反乱派と国王派の代表人物に会うことで、所属勢力を決めることができる。ただし一度決めたら変更はできないようだ。クロウは反乱派の代表人物であるミナトに会うことにした。


ミナト・ルーク

ミナトの父に当たる人物が先の北部魔王軍との戦いで準男爵を賜り、一代限りの貴族となったルーク家の次期当主。一代貴族のためミナトは平民に戻るはずだったが、ミナトには人を集める魅力と強い反骨心があった。それにより、彼は長い時間をかけて人を集め、敵を寝返らせ、今回の蜂起を計画した。臥薪嘗胆。言うのは簡単だが、それを成し遂げるのは難しい。だがミナトと言う男は、それを成し遂げた。


「助力感謝する、クロウ殿」

「いえいえ、魔法がぶっぱなせればそれでいいので」


クロウはミナト率いる反乱軍に加勢した。現状、まだミナト達は蜂起したばかりで、王国軍はまだ動き出したばかりだが、こちらもまだ拠点となる施設を何一つ抑えられていない。ミナトはクロウにとりあえず武器庫や防衛施設の破壊をして欲しいと言った。クロウは手短に了解とだけ言うと、<隠者の外套>を装備し、<なで猫の靴>を履いて、透明無音で反乱軍本拠地から近くの敵拠点へと向かった。


国王派にはまだ脅威となるプレイヤーが加勢したという知らせがなく、人数だけでいえば国王派が優位だが、クロウが反乱派にいるため、質では反乱派が優位と言える。国王は至急、精鋭兵を国内の要所に派遣し、重点的に守りを固めた。そして反乱派に多大な賞金と豪華アイテムを懸け、西部や南国、そして東部のプレイヤーを引き入れようとしている。クロウもどれほど豪華なのか見てみたが、おそらく数多くの中級、そして上級プレイヤーが集まるだろう報酬と金額だった。いかに強力なプレイヤーが国王派に着く前に、相手の拠点を制圧できるか、反乱派に所属するクロウの責任は重大であった。反乱派の拠点は西部王国の北部にあり、国王派は中央に位置している。できれば国王派を左右から挟みこみたいクロウは、とりあえず反乱派本拠地である北部の国王派重要拠点を襲撃した。幸いまだ日は出ておらず、今なら少数派の反乱軍も闇夜を生かして行動ができる。クロウは伝音水晶と言うアイテムをミナトにいくつか渡して、第一に武器庫を襲撃した。


「こちらアルファ(クロウ)、聞こえるか司令部ミナト

「こちら司令部、聞こえるぞアルファ」

「これより北部第4武器庫を襲撃する。目標を鎮圧後、速やかに増援を送ってほしい」

「了解したアルファ、こちらで至急増援を編成する」


手短にミナトとの通信を終え、クロウは第4武器庫の高い壁を乗り越えた。まだ常設守備隊しかおらず、敵の増援も向かっている最中のようなので、クロウは速やかに防衛隊を始末することにした。


「<ニードルミキサー>」


クロウは指先に小さな魔法陣を出現させ、そこから小さな針を2人の巡回兵士の頭めがけて同時に2本打ち出す。針はやすやすと頭蓋骨を貫通し、数秒後には巡回兵士はともにその場に倒れこんだ。<ニードルミキサー>はクラスⅡ魔法である<風槍(エアランス)>を極限まで圧縮し、先鋭化した魔法で、それ自体の威力はクラスⅡ程度だが、クロウが極限まで魔改造を施し、ほぼ目視不可能なまでに圧縮し、先鋭化したおかげで、ヘルメットや防具をやすやすと貫き、人間の体内に入り込んで圧縮した風を開放するという、敵を内部から破壊する魔法だ。風魔法のため、目立たず、証拠も残らない暗殺にはぴったりの魔法。クロウは奥へと侵入しながら、見張りの兵士たちの脳みそを次々と風のミキサーにかけていった。


第4武器庫最深部、見張りのゴーレム達も「<ニードルミキサー>」をコアに打ち込み、難なく破壊したクロウは、片っ端から武器となる魔術が刻まれた魔剣や、魔杖などをアイテムボックスに収納した。そしてその他の魔石や魔鉄も頂戴し、ミナトに連絡を入れた。


「こちらアルファ、聞こえるか司令」

「こちら司令、通信は良好だアルファ」

「第4武器庫の襲撃が完了した。保管されていた武器装備は全て持ち帰る」

「了解、直ちに守備隊を送る」


クロウは通信を切り、再び闇夜に隠れて反乱軍の本拠地へ戻った。

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