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勘違い魔王のVRMMO征服記  作者: 愛良夜
第一章 アズガルド大陸
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南部王国進化します

改政には穏健派や保守派と言われる反対勢力が付き物だ。未熟な現体制の問題点をいち早く見抜き、そこに付け込んで甘い蜜をすする彼ら彼女らに現状の国政を改良する理由はない。ベルアルは鉄血と言われていたので、理由をつけて処刑すればよかったが、セシリアはそうするわけにはいかず、クロウは色々と作戦を考えていたが、彼女自身の手腕により、平和的に反対勢力は瓦解した。


数か月後、まずは農業の現状から。

国外食料の輸入を一時的に減らした南部王国は、国内で食料値段が高騰、それにより一時的な飢饉に陥りそうだったが、人間の金銭への欲望は何よりも動力になり、すぐさま国内の農家はじゃがいもや米、麦や家畜などの食料生産にシフトした。おかげですぐに食料供給率は右肩上がりになり、値段も安定した値をキープするようになった。それにより、数億人を抱える南部王国も飢餓はほぼなくなり、国民の生活水準が上昇した。


次は財政及び貿易。

クロウの教えた帳簿のつけ方、通称クロウ式簿記が功を奏し、今ではかなり資金の流れが透明化している。そして南部蛮族とも和平し、彼らと友好を結び、南部王国からは食料など生活必需品を、彼らからは水と木の蛮術を学んだ。この蛮術はかなり有能で、あらゆる場所で聖水を作り出したり、木を大きく育て上げることも可能で、聖水で育て上げられた聖木は神父に加護を授かった純銀のロザリオには及ばないものの、一般市民にも買える数多くの商品を生み出すことになった。これにより、南部西方の荒れ地や南部東方に数多くの植林施設が増え、環境汚染も改善されることになった。また、聖木は西部王国では物凄い良い評判を受け、南部王国の恒常的な収入の一つとなった。


軍隊はと言うと、新兵の招集はかけているものの、幸先は難しかった。


最後は教育、貴族を除く多くの南部国民は三代農家が多く、識字率も低かった。そこでクロウは西部、東部それぞれから先生や教諭を招き、高い年俸でなんとか留まるように仕向けた。クロウも私財を使い、南部で巨大な学園を設立し、聖セシリア学園と名付けた。この学園には一部貴族学校のように法外な入学金ではなく、一般科と魔法科、魔術科を設置し、それぞれ離れたキャンパスにすることで、できるだけ争いを避けた。また西部国立魔法学園とコネで学校間交流や交換留学の手配をし、常に外から新鮮な知識や血液を入れる体制を整えた。


ここまで大きく改政、改良をした南部王国もいつぞやの北部王国と同じ、存在進化(クラスアップ)し、名前を新しく南国サウフォードとなった。それに伴い、北帝領とは違う王国バフが生じたようで、南国サウフォードは、人口増加率上昇と農業生産率上昇、その他資源生産率などが全て大幅に増加するバフのようだ。セシリアもその現象に気が付いたようで、彼女にはこの機会をどう活かすか彼女にかかっていると言っておいた。


春先、南国特有の大きな春の花が咲き乱れる季節。なぜかクロウは聖セシリア学園で再び先生になっていた。聖とついているが、セシリア当人は既に堕ちているので、クロウ本人も問題なく敷地内に入れる。入れるのはいいけど、


「えっ、じゃあ、セシリアさん、答えをどうぞ...」

「はい!この詠唱は、<荒れ狂う大地に怒りを>です!」

「正解です....」


仕事しろよ女王!


と言うのも、南部王国が南国に進化してからは、国王も廃人から立ち直り、セシリアに代わって国政の維持に努めることができるようになった。国王は既にセシリアにいつでも王位を譲る意思があるのだが、当のセシリアがまだ国を背負うには知恵も度胸も足りないといい、なぜかクロウが一時的に軌道に乗るまで勉強を教えているここ、聖セシリア学園に通っているのだ。クロウが今、担任しているクラスは冒険者クラス。このクラスには一般科や魔法科などの区切りがない独立したクラスで、将来冒険者としてダンジョン踏破に赴いたり、魔塔踏破したり、村や町をモンスターから守る辺境兵士志望などの学生が年齢制限なしに参加できる学び舎だ。


話は変わり、今の授業は<詠唱発動の基礎と応用>という、いわゆる<詠唱>して魔法、魔術を発動するタイプの魔法、魔術使いのためのものであり、セシリアは<詠唱>タイプの魔法使いだった。

<詠唱>タイプは<魔法陣>とは違い、言葉に魔力を乗せ、魔法、魔術を行使する、ある意味では精霊魔法がより独立した形になった感じに近い。クロウは詠唱タイプの魔法使いではないが、エインヘリアル開発時に協力してくれていた他の技術者が一定数詠唱タイプだったため、図書館で必死に勉強した。そのおかげで、詠唱タイプの魔法行使とその他もろもろについてもかなり理解している。詠唱も魔法陣と同じ、先人が開発した詠唱、その句や文一つ一つに意味があり、引き起こされる魔法、魔術現象が違う。よって魔法陣と同じように、その句文を理解すれば、自己流の魔法現象や句文も作り上げられる。また、詠唱タイプの高位スキルに<詠唱破棄>と言うものがある。これは心中で魔力を使って発動した魔法を想像するだけで発動できるという、クロウから見てもチートなスキルだ。魔法陣タイプも<魔法陣圧縮>というスキルがある。これは完成した魔法陣をそのままに圧縮して、さらに魔法陣を書き加えられるというスキルだが、魔法陣を書かずにそのまま発動なんていうスキルはない。ここばかりは、多くの貴族階級の生徒や人間が詠唱を至上とする意味が理解できる。


なおクロウもベルアルも両方の方法で行使できるので問題はない。


「今日の授業はここまでです。今日の宿題は今日習った方法を使って、<火炎球>を最小句文に区切ってきてください。では」


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