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勘違い魔王のVRMMO征服記  作者: 愛良夜
第一章 アズガルド大陸
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亜麻色乙女の特訓です

イベント終了後、クロウはそれぞれ押収したアイテムやスキルを全てベルアルに渡した。ベルアルも怪訝そうにどこからこんなにアイテムを持ってきたのかと尋ねられたが、内緒とだけ言って、クロウ領に戻った。


***


ラビットハウスのギルドハウスにて、ギルド長はクロウに言われたように、ギルドハウスの最奥に棚を準備し、その中に種を植えた。ホーンラビットの角と血は初級装備の材料になるため、数多く在庫があり、価値もないので奪われもしなかった。言われた通り血と粉をそれぞれ20個ほどアイテムとして投下すると、ギルド等は自分のステータス欄に<ギルドバフ>という欄が追加されている事に気が付いた。


<角兎の特徴LvⅠ>

効果:俊敏+20、体力+10


ギルド長は驚愕した。後で確認してみればラビットハウスに所属する全員がこのバフを持っており、再び20個ほど追加したらこのバフもLvⅡになった。そこからラビットハウスのメンバーはもう圧迫されることもなくなった。ギルド長を代表に各地の兎系モンスターを狩りまくり、ラビットハウスは新たな称号<兎狩り>も手に入れた。数年後、ラビットハウスは南部王国を代表するギルドの一つになった。


***


クロウはと言うと、南部王国で新しくできた喫茶店に来ていた。メイド喫茶とかそういうのではなく、純粋に自分の装備を見直したり、魔法構成と新たな増幅術式及び軽減術式を開発したいからだ。コーヒーとチョコケーキを頼んだクロウは、のんびりと脳内で術式を考えていた。


「すいませんお客様!ご相席よろしいでしょうか!?」


店員さんに言われて、はっと気が付いた。どうやら店内はそれなりに混んできたようで、クロウは立ち去ろうとすると、相席の人に「あら、立ち去るのですか?」と言われた。話しかけられた方を見てみると、見覚えのある顔のプレイヤーがいた。再び席に座りなおし、改めて話をすることにした。


「改めまして、クロウさん、ですよね?」

「えと、確か亜麻色乙女の...」

「ええ、ギルド長のアマネと申します」

「あっどうも」

さりげなくクロウは何か飲みますと聞き、アマネはクロウと同じコーヒーとケーキを頼んだ。

「えと、それでお話って?」

ベルアルとはいつも通り話せるのに、アマネとはうまく話せないシャイなクロウであった。

「良ければ、私たちを鍛えてはくれませんか?」

「えぇ...魔法なら西部王国の冒険者科に...」

「あなたがいいですわ」

「....」

クロウはどうしようか考えていた。正直教師紛いの事はもうお腹いっぱいだし、クロウ領の学園に送り込もうかなっと思ったけどギルド長のレベルが低すぎてそもそも入学試験すら受かりそうにない。他に何か断る理由を考えていたが、アマネの気迫に押し負け、毎週金曜日夜から数週間、魔法とダンジョン攻略について学ぶことにした。


訓練一日目。

魔法ギルドの一つとして、まずは基本的な事を色々聞いてみた。主力メンバーは3人。



名前:アマネ(ギルド長)

Lv:65

職業:元素系魔法使い

サブ職業:付与術士

魔法:<元素系属性魔法LvⅤ><元素系付与魔術LvⅣ>


名前:アカリ(副ギルド長)

Lv:63

職業:精霊系魔法使い

サブ職業:料理家

魔法:<精霊系属性魔法LvⅤ><料理LvⅦ>


名前:ホムラ(鍛冶担当)

Lv:48

職業:鍛冶師

サブ職業:裁縫師

魔法:<鍛冶LvⅢ><裁縫LvⅣ>


三人は大学で同じ学科の友達だそうだ。アマネは文字通り亜麻色の長い髪をポニーテールにした背の高い女性で、アカリはアマネよりは低いが、ツインテールの不思議っ子って感じだ。ホムラは赤髪の気の強い女性で、未だにイベントの時の恨みを持っているらしい。仕方ないのでまずはみんなと今後の特訓について話し合う前に、ホムラと決闘をすることになった。


「構えな!イベントではお前の護衛に負けたけど、お前自身ならぜってぇ負けねぇ!」


赤髪ショートカット褐色の美少女が言いそうな言葉その通りだった。相手の武器はLv40相当のファイヤリザードの装備に火炎石と言われる炎属性の石で作った巨大なハンマーだ。今回の決闘のルールは相手をHP1にした時点で終了。その他アイテム使用は許されるが、召喚獣は使用禁止だと言われた。


「決闘開始!」


アマネの声が響く。アイテムボックスから<寒鉄槌>を取り出して、ホムラと打ち合う。カンと大きな音がして、ホムラが弾かれた。


「まだまだぁあ!」


ホムラが負けじと再び打ち込んでくる。それから30分、ホムラが疲れてバテるまで延々と打ち合った。的確にホムラの腕が痺れるように、延々と正確に全ての攻撃と合致するようにあえてこちらからの攻撃で相打ちさせた。


「負けたぁ!全く攻撃を当てられる気がしねぇ!恐れ入ったぜ!」


それからホムラも特訓に大人しく参加してくれることになった。ようやく一人一人の実力を元にプランが立てられそうだ。一応言うと、訓練の間は便利のため、彼女たちのギルドハウスの開いた部屋に泊まる事にした。早速訓練のため、全員ギルドハウスの訓練場に集まる。まずはギルド長のアマネから。一番強い攻撃を訓練場の的に撃ってもらう事にした。


「<火炎槍雨>!」


火炎槍(フレイムランス)が雨のように的に降り注ぐ。恐らくゲームシステム頼りの魔法行使だろう。威力は400ちょっと。まあ普通だな。ふむ。魔杖はホムラが作った+4くらいの品質。悪くもないが強くもない。全員基本的な事から教える事が必要そうなので、まずは彼女たちの常識を打ち壊す事にした。


「アマネ、魔法をゲームとして発動するんじゃなくて、心で念じて発動してみてくれ」

「ん?んん??んんん?」


アマネは何とか魔法を発動する。ふむふむ、どうやらアマネは心の中で念じると、魔法陣が浮かび上がるタイプのようだ。ならばアマネには魔法陣の基礎を教える事にした。


「おっ、アマネは魔法陣タイプか、なら魔法陣について教えようかな」


クロウは<初級元素魔法発動陣>という本をアマネに渡した。中には元素系魔法が発動できる魔法陣が<クラスⅠ>から<クラスⅢ>まで記録されており、とりあえずこの魔法陣を脳内に覚えるように、いつでも脳内に思い浮かべられるように言った。アマネは不思議そうな顔でクロウを見る。なるほど、まあそうだよな。ゲーム内でも勉強しなければいけないとは思っていないだろう。クロウはアマネの目の前で、ひとまばたきの間にそれぞれ5属性の初級元素魔法陣を全て発動させた。そしてそれを全て的にぶつける。アマネはびっくりしたような、感心したような顔で本を持ってその場で読み込みだした。


次はアカリ、精霊系魔法は精霊に話しかける事により、彼ら彼女らの力を借りて魔法を発動する。精霊魔法を上手く使うには、精霊との交流、つまり精霊語を学ぶことが大事だ。<精霊語全集><日本語精霊語辞典>と言う本を二冊、アカリに渡した。アカリも嫌そうな顔をしたので、炎の精霊を呼び出しだ。アカリはびっくりした顔でクロウと炎の精霊が楽しそうに自分の分からない言葉で話しているのに驚いたし、炎の精霊がこんなにご機嫌なのも驚いた。それを見たアカリはアマネ同様、ものすごい勢いで本を読みだした。


最後はホムラ。ホムラとはギルドハウスの鍛冶部屋で特訓する事にした。鍛冶は専門ではないので、<鍛冶全集>と言う人間大陸にあるあらゆる武器装備の製造方法が記録された本を渡しておく。それに銅と鉄を大量にホムラに渡しておく。同時に、鍛冶部屋の炎を一段階強力なものにし、必要な食料も渡しておく。同時に鍛冶部屋に<時空間魔法>をかけ、100時間鉄を打っても外では1時間しか流れないようにした。


「ホムラ、ひたすら鉄を打て、ただひたすら、世界で一番良い武器と装備を作るために、あらゆる鉱石も素材も全部俺が渡す、鍛冶師なら、最強の装備を二人に打ってやれ」


ホムラはそういわれて、鍛冶炉の炎よりも熱いまなざしで武器を打ち出した。

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