新イベント予告です
ワールドボスの報酬は大量の経験値とゲーム内通貨、それと<銃剣格闘術>と言う特殊スキルだった。
確かにこういうスキルは貴重だが、そんな事よりも今回の魔導装甲兵器の戦闘データの方が貴重だった。
今回のデータでクロウは魔導装甲兵器達の仕上げに入れる。今までは試験機兼空飛べるヘリコプターくらいにしか使ってなかったが、これでついに完成した。
搭乗可能な魔導装甲式人型駆動兵器、名前を<エインへリアル>
ワールドボスとの戦闘で仕上げが終わり、さらなる量産の目途も経った。
とりあえず今持っているエインへリアル達を全て完成させ、女帝型エインへリアルをネックレスに加工したコラテラル・クリスタルに収納する。虹色のコラテラル・クリスタルのネックレスはベルアルの立場を考慮した結果、さまざまな会合などのイベントもあるだろうし、小さすぎず、大きすぎないサイズにした。ただ、この女帝型は唯一クロウの持つエインヘリアルと正面から戦えるほど強力な機体なので、日常的にこれを使っては良くないと思い、もう一つの魔法剣士型エインヘリアルを指輪の中にしまっておき、これもベルアルに渡しておいた。この二つを受け取ったベルアルは凄く嬉しそうにその場で身に着けてくれた。ベルアルにはただのアクセサリーだけではなく、これはエインヘリアルと言う新型の魔導兵器が入っており、別に他意はないし、それを...と説明していたら本気でベルアルが魔法で攻撃してきたので、早々に立ち去る事にした。
それから毎日、ベルアルとエインヘリアルの訓練をし、まずは魔法剣士型のエインヘリアルに慣れ、クロウもその間に他のエインヘリアルに慣れ、最後はクロウの専用機<冥府の支配者>とベルアルの専用機<北国の女帝>で何度も何度も試合をした。二人ともエインヘリアルを完全に乗りこなした頃、クロウはベルアルに一つの約束をしてくれと言った。
「ベルアル、いつか俺が死ぬ時は、お前が俺を殺してくれ」
ベルアルはそういわれて心の底からびっくりした。そうしてクロウを見る。エインヘリアル越しだが、クロウが本気なのは分かる。
「わかった」
その日の試合はそこでお終いだった。別にそんな約束をしたからって何かが起こるわけでもなく、クロウはいつも通りベルアルと試合をして、クロウ領で引き続きエインヘリアルの技術の応用を考えたりと、変わらない日常を送っていた。変わった事と言えば、エインヘリアルの技術革新とそれにより引き起こされた第二次技術革新により、魔力炉や魔導兵器、魔導設備なども新しい段階へ進化し、それに付随して北国ペトロデルも進化し、名前を北帝領ペトロデルになった。北帝領に改名した後、またもやできる事が増え、エインヘリアルにさらなる機能や増幅術式を刻んでいく。もはや汎用型エインヘリアル単騎で他の王国一つ滅ぼせるほど強くしたクロウは、満足した。だが魔導開発に終わりはなく、クロウは更に大陸横断魔導砲弾を作ったり、魔導衛星兵器と魔導衛星設備を追加したり強化したり、魔粒子エネルギーを北帝領の全てに届くようにし、完全な未来化を果たしたり、北帝領でやる事はもう全部できたと思う。そしてこれから何をしようかなっと考えていると、<機神>から神託が下りた。
(クロウ、貴方の実績、見届けた。本、書く。全知の書にアップロードするべき)
世話になった神様にそう言われては仕方ない。それからクロウは、今まで自分が開発、発展させた魔術、魔導について事細かに記した。膨大な情報をまとめるだけでも数か月かかったので、本を完成させるまでに半年かかった。そうして本を書き終えた時、機神の神託が再び下った。
(書物を確認、<魔導の全て><魔術理論と魔術術式の拡張性>を全知の書にアップロード、完了。おめでとう。貴方は人類で初めて全知の書に知恵と本をアップロードした人間)
「何かもらえるのか?」
(貴方は既に持っている。全知の書へのアクセス権、それだけじゃない)
それだけを言うと、機神は何も言わなくなった。
季節は変わり、秋の終わり、冬の始まりになった頃、新しいイベント、<ギルド戦争>の開催が決定した。
ギルド戦争、オーバーザホライゾンに存在する全てのギルドに参加権が与えられ、ギルド名と共に参加登録をすればイベントに参戦できる。登録をしたギルドはマップ上から消失し、そのギルドへ与えられていた一切の恩恵は消失する。ギルドの建物は破壊でき、アイテムは奪えるし、相手のメンバーも殺しても問題ない。文字通り、本当の戦争に参加する事になるイベントが終わった後でも壊れた建物は戻らないし、奪われたアイテムも帰ってこない。恐らくゲームが始まってから最も本格的なイベントの一つだろう。クロウも参加したいが、一つ大事な事に気が付いた。
「ギルド作ってねぇ!」
イベント戦で参加できるのはプレイヤーの作ったギルドだけ、NPC達が作ったクロウがお小遣い稼ぎのためのギルドではない。
「困った」
ギルド戦争に必要なのはギルドメンバーとギルド本部。両方共にクロウはまだ作っていなかった。ベルアルに、プレイヤー達の戦争が起こるから北帝領にギルドを作りたいと言ったらすんなり許可を出してくれた。イベント参加のためだけのギルドなのでまともに運営させるつもりもなく、冥帝領、もといクロウ領に小さなギルドを作った。ギルドメンバーも二人いればいいらしいので、ベルアルに興味あるかと言われたら、構わないと言われた。
「NPCもギルド入れるんだ...」
長くゲームしているけど、知らない事はまだまだあった。と言う事で、ギルド長はクロウ、副ギルドはベルアルになった。クロウは参加登録時のギルド名欄に<クロウ>とだけ書いて参加登録した。北帝領はあいかわらずクロウ以外プレイヤーがいないので、南部王国に入って情報収集をしながら顔を変えてイベント開始まで暫く活動する事にした。




