魔法祭4日目
その後も何度か対戦が行われ、名立たる有名人だったり名誉教授だったりが尽くクロウと対戦するが、ほとんどがクロウの強力な<ファイアボール>で片付く程度だった。
「最終決戦!まさかまさかの名誉教授同士の戦いとなりましたぁああ!決勝戦!<名誉教授>もとい、<魔壊砲>のちゃちゃ丸先生と.....えーと?あ、これ読めばいいの?わかった<名誉教授>もとい、<魔王>クロウ先生です!」
「魔王じゃねぇよ!」
久しぶりに魔王と呼ばれて、懐かしく思うクロウでもあった。
「何年ぶりかな?クロウ、こうして向かい合うのは...」
「いやぁ、本当に久しぶりだよな。今度食事でもどう?俺がログアウトしてた頃の話聞きたい」
「え!?それはその....」
「ちょっとちょっと!クロウ先生ナンパしないでください!決勝戦ですよ今!」
「ナンパって言うな!」
「クロウ、それはまた今度決めよう、今は、私の本気を見てくれ」
頬を赤らめていたちゃちゃ丸だったが、すぐに覚悟を決めたような真剣な顔つきになるちゃちゃ丸。
「分かった、よっしゃ来い!」
クロウは一体どんな攻撃が来るかと構えていたが、彼女は周囲の魔術炉や魔導杖をしまった。それ以外にも彼女は手に付けている指輪やネックレスをアイテムボックスへと仕舞っていく。
「私も普段は色々と制御をしていてな、こうでもしないと校舎の修理費がとんでもなく嵩んでしまう」
「分かるよその気持ち」
クロウは<スキャン>でちゃちゃ丸のステータスを確認する。以前とはまるで別人のようになっており、体中からあふれんばかりの魔素量は既に周囲に青い水滴として可視化できているほどだった。
「溜まった鬱憤と魔力、全て解き放ってしまうぞ!」
ちゃちゃ丸はそう言いながらチャージもしないで突如として極大の魔導砲を放った。
「<吸収>」
そんな容赦無しの魔導砲を、クロウは闇魔法の基本である<吸収>で全て自分のものにする。
「ふむふむ、まじで数年ぶりの魔素って感じがする」
「えぇ....なんで分かるよのそれ」
「やめろ、そんな目で見るな、変態ではない、違うぞ?」
ちゃちゃ丸から白い目で見られるクロウ。
「まだまだ行くよ!」
ちゃちゃ丸はまるでマシンガンのように次々と極太の魔導砲を放っていく。クロウはそんな魔導砲を躱すことなく次々と吸収する。ちゃちゃ丸は放っていくたびに嬉しそうな笑みを浮かべており、そんなちゃちゃ丸を見たクロウも懐かしさを覚えていた。
数分後、余波で容赦なく消し飛ばされた周囲に馴染むことなく、クロウはその場から動くことなく魔導砲を吸収した。
「はぁすっきり!」
満足げに笑みを浮かべたちゃちゃ丸はその場に座り込む。そのまま大の字に地面に仰向けになると、膨大な魔力を周囲に放出しだした。膨大な魔圧はまるで地面から吹き出る間欠泉のようにちゃちゃ丸を噴き上げ、クロウを数歩のけぞらせた。
「<リミットオーバー>!<マギアオーバーヒート>開始」
噴き上げられたちゃちゃ丸は、そのまま空中で暴力的な魔力を放出し続ける。そのままちゃちゃ丸は身体中から膨大な熱量を放ち始めた。
「蒼い太陽」
彼女がそう言うと同時に、彼女の左手にはいつしかクロウが生み出した、暴力的な熱量を持つ青白い色の太陽が出現した。既にちゃちゃ丸の周囲を融解しだしたその太陽は、容赦なくクロウに向かって投げつけられる。
「これが私の全力よ!」
クロウは何も言わずにただただゆっくりと、だがしっかりと飛んでくる青い太陽を見つめる。そのままじっとしていると、突如として直撃寸前に自らクロウは太陽へと走り出した。そしてそのままクロウは自分の右腕をちゃちゃ丸の生み出した太陽の中心へ突き入れる。
「<マギアデコード>」
クロウが突き入れた腕を捻ると、ちゃちゃ丸の青い太陽はポリゴンのようになってその場に散らばった。
「ちゃちゃ丸、お前もプレイヤーなら分かるだろ、今の主流であるマギア構文での魔法行使は確かにエコだが、その分解析されやすい、だからこそ失われた魔法でもある、俺達の昔ながらの魔法形態が一番対人では強いって」
ポリゴン化して無効化された太陽の中から、クロウの腕が現れる。
「なぜなら、魔術とは違って、理論では説明できないような、おとぎ話のような事をするのが魔法、そうだろ?」
クロウはそのまま沈んだ日を掴んだ。
実際は何もない空間を掴んでいるはずのクロウだが、誰もが彼の腕に合わせてゆっくりと太陽が昇っていくのを目撃する。
「さて、このままこの星を太陽にぶつける事も、太陽をこっちにぶつける事も出来るんだが、どうする?」
「負けました」
<握陽>
ベルアルの習得した<育星法>の真逆である、<破星法>の奥義。そんなとんでも魔法を、クロウは基本魔法とも言える<見えざる手>で実現させた。




