魔法祭2日目
「どうしようかな....」
儀式加速の魔法陣は破壊できたものの、儀式魔法自体は全くと言っていいほど隙が無い。まるで破壊する脆弱性が見つからない。
「丸ごと消し飛ばすか、それとも....」
クロウは数回儀式魔法陣自体に魔力弾を撃ち込んでいるが、実際的な攻撃を与えられず、全て魔法陣に傷を残す事なく貫通している。
「飛行」
クロウはそれからもさらに色々な方法を探したら、どれも機能せず、クロウは諦めて空高く飛び上がる事にした。
「魔導分析開始」
時間はかかるが、細部まで分析できるこの魔導魔法でクロウは空の儀式魔法陣を隅々まで解析する。
「魔導アイテム起動、<アイギスのリアクター>」
クロウは両目で分析を進めつつ、両手で空中に菱形の小型ユニットを展開する。足元でアマネと戦っている2人はたびたびクロウに攻撃を放ってくるため、防御アイテムを使って少なくとも分析の間、自分を守らなければいけない。
「分析....進行度70%到達、儀式魔法<異次元ゲート>と判明.....」
およそ10分が経過した頃、クロウの分析も70%を超え、ようやっと発動予定の魔法を分析できた。
「異次元ゲート、つまり扉を開けようとしてるってことか」
クロウのリアクターも今だに周囲を高速周回し、下から飛んでくる魔法を防いでいるが、そろそろ持たない。
「分析80%到達」
「<魔導分解>開始!」
空に浮かぶ魔法陣が端から少しずつ二重螺旋状の紐のように分解されていく。クロウは両手を前に突き出し、その紐解かれた魔法陣を吸収する。
「分析100%到達」
脳内システム音がそう鳴り響く頃、儀式魔法は完全に分解、クロウに吸収され、下ではアマネが邪教徒2名にトドメをさしている時だった。
邪教徒2名と空に浮かんだ巨大魔法陣の件の後始末はセシリア達がつつがなく済ませており、翌日にはまた予定通りに魔法祭を再開していた。一般観客の胆の太さに驚いたが、よくよく考えれば観客含め、ほぼ全員が高い精神力を持つ魔法使いである事を考えると、さほど違和感もなかった。
「魔法祭2日目!初日のごたごたも全てエキシビション!本日より予選開始です!」
所詮はいかにも魔女風の女性魔法使いと、魔法拳法家と言う近接魔法使いの勝負だ。正直魔法剣士やそれに類する魔法近接格闘職は本当に魔法使いなのかあやふやであるが、公式運営からは五大元素及び神聖、暗黒を使用していれば問題ないらしい。
(じゃあ暗黒属性のエインヘリアルも出場できるじゃん)
だがセシリア達にエインヘリアルの使用を禁止されているのでその考えも直ぐに振り払った。10分後、魔女のような魔法使いがいくつかのクリーンヒットを魔法拳法家に当て相手を気絶させた。その後の試合も特に問題なく進行し、また初日のようなアクシデントが起こらないと確信したのでクロウはアマネ達のいるバックヤードへと向かった。
「おっす、どう?」
「クロウ、今の所問題はない。今日は何も問題なく進行できそうだ」
「外神教の潜伏者は?」
「アカリが外で探っているが、反応はない。昨日の一件で、暫く大人しくなるだろう」
「そかそか、じゃあ問題はなさそうだな。所で俺って出場の予定はあるの?」
「ある、最終日の決勝戦からはベルアルさんの協力もあって特設外宇宙ステージで戦う事になっている」
「マジか、惑星破壊級の魔法を使える奴がいるんだ!」
アマネは何も言わずにクロウを見ている。
「あっ、俺のため」
「そう言うことになる」
クロウは恥ずかしそうに笑った後、少しアマネと談笑し、バックヤードから離れた。
「暇だ」
5日後の決勝戦にならないと出番がないとの事なので、クロウは久しぶりに1人の時間が出来た。シャル達も多くは運営として忙しくあちこちを走っている。学園内を散策しようかなと思ったけど、他の教授達に拉致されそうなので、ここは久しぶりに外を散策する予定だ。
「クロウ、久しぶり」
野外の目的も無くぼーと歩いていると、前方から見た事のある金髪ゴスロリドラキュラ娘がやってきた。
「メアリーか!久しぶり」
日傘を差した少女はいつも通りに右手を手刀の形にしてこちらに攻撃を仕掛けようとしているが、構えを取っただけで動けなくなっていた。
「本当に強力な<願望>、未だに動けないわ」
「おいおい、俺達友達だろ?」
「はぁ、そうよ、友達よ」
「今日は1人か?」
「ええ、あれから色々と勉強したの、特にあなたのベルアルからね」
「ベルアル?」
「ええ、あの後、彼女がやって来てね、ボコボコにされたわ」
「なんで?」
「さぁ、でも1つ言える事は、彼女は貴方に及ばなくても、貴方の次に強い人であることは変わらないわ」
クロウはメアリーに少し散歩しようと言って、今度は2人は野外フィールドをぶらぶらする事にした。
いつもご愛読ありがとうございます。また暫く誤字脱字チェックします。




