クロウの実戦授業
「さて、では1人ずつ始めようかな?まずはリリィ?と言いたいところだけど、残念ながら俺は神聖魔法はさっぱりなので、セシリアに聞いてくれ.....」
「分かりました」
「と言う事でアリアンナ、まずはお前からだ」
「分かった、何からやればいい?」
「脱げ」
「......」
全員の冷たい視線がクロウに刺さる。
「いや本当だよ、お前ら全員脱げ、魔力親和性と体内魔力循環度が見えない」
「何それは?」
「魔力親和性は生物が特定の魔力にどれだけ親しんでいるか、つまりどの属性の魔力を上手く使えるかを見つけるってこと、体内魔力循環度は自分の体内の魔素をどれだけ上手く魔力に変換できるか、それに加え、どれだけ無駄なく体内の魔素を自由自在に使えるか」
5人は不思議そうな顔でクロウを見ていた。
「これ見せた方が早いな」
そう言いながらクロウは自分の上着を脱ぎだす。
「わわわ!」
タタは顔を赤らめて他所を剥いているがシャルとフェリスはじっとクロウを見つめ、アリアンナはリリィの目を手で覆っている。
「いや見ろよお前ら」
流石に全裸になるわけではないので、クロウはタンクトップだけなったまま、体内でまずは魔力親和性について可視化できるレベルに自ら高めた。
「魔力親和性って難しく思うけど、人間みんな好き嫌いがあるように、生まれつき使いこなせる魔力属性も違ってくる」
クロウは体を6色に光らせながらそう言った。
「俺はご覧の通り、火、水、木、土、風、闇の親和性が物凄く良い、代わりに」
クロウは光の魔法を使おうとしたが、体内の魔素を光に傾けた瞬間、口から激しく吐血した。
「ぐはっ!」
5人は突如吐血したクロウを見て驚いた。
「光に多少の耐性はあるものの、今のままでは全くと言っていいほど使えない、だからリリィ、悪いけど本当にセシリアに聞いてくれ」
「分かりました」
「ついでにこのまま、体内魔力循環度について見せる」
クロウはそのまま空中の魔素が可視化できるように色付けしていく。
「流石にこればっかりは可視化できないから、空中で見せるよ」
そのまま色付けした魔力を空中で回転させていく。
「体内には色々は雑物があるからよっぽど訓練しない限りこう上手くは回らないけど、自身の血管の中で、血と共に魔素を体内で瞬間させるイメージって言えば分かるかな?」
「クロウ、体内循環させる意味は?」
「MP、魔素の毎秒回復量が上昇するのと、更に体内で高速高圧の条件を満たせられれば、魔導の究極スキルの1つである<魔力炉>が使えるようになるよ」
「<魔力炉>とは?」
「体内魔素上限と毎秒魔素回復量が指数関数的に無限増加するスキル、今回は最終的にそれを覚えてもらいたい」
そう言いながらクロウは実際に自ら魔力炉を起動する。敢えて目視できるよう今回も外部で展開する。青色で構築したトロフィーのような魔力炉は甲高い起動音と加速と共に、煌々と青白い火で燃えあがる。同時に、クロウから放たれる魔圧がどんどんと上昇していき、数分する頃にはアリアンナすら耐え切れず地面に手をついていた。
「そんな感じで、物凄い荒治療だけど、クラスⅠの魔法でも魔力炉の膨大な魔素をつぎ込めば...」
そう言いつつクロウはクラスⅠの<火球>を召喚する。通常はテニスボールほどの大きさしかないはずなのに、クロウの手に出現したのは青く燃えるスイカほどの球体が6つ出現した。
「クラスⅣの魔法の威力に匹敵することも可能だ」
クロウはその手の魔法を空に打ち上げる。小さな爆発を起こす程度のはずの<火球>は、5人の服を焦がし、のけぞらせるほどの威力を伴っていた。
「そういうわけだ、明日から全員ここに泊まり込みで修業してもらうからな」
***
彼の魔法使いとしての腕は申し分がないほど画期的だった。その腕前もさることながら、彼の即興で魔法を作り出すその腕前に、私達は手も足も出なかった。
「基本は教えた、俺を倒せればここから出してもいい」
最初の数週間はクロウの言っていた魔力親和性と体内魔力循環度を高める特訓を行っていた。私は光、アリアンアは土、フェリスは火、タタは木、シャルは珍しくどの属性にも親和性が無かった。
「無属性か、丁度いい、シャルは魔導適正がある」
クロウは全員に向き直って改めて言う。
「光と闇を含む七大属性への適性が無いと言う事は、魔法への適応性がないのではなく、魔法の元となる魔素への親和性が非常に高いと言う事だ。魔素への親和性が高いと言う事は、魔法の素を人並み以上に認識できると言う事だ。つまり、シャルは魔王になる素質がある」
クロウの口から放たれる衝撃的な言葉に、全員驚く。
「え?俺以前に見せなかった?魔法を奪う魔法」
***




