魔法祭の為の訓練
「ただいまセシリア」
「クロウ!お帰り」
「クロウ、帰ってきたか」
砂王宮からセシリアのいる中央王宮に戻り、早速セシリアに会いに行くと、珍しくベルアルも執務室にいた。
「ん?どうしたんだ2人共?」
「それがねクロウ」
セシリアの話曰く、クロウが居なくなってから、数多くの面倒事と危険組織達が活発になった。先の蛮族兵西部侵攻だけでなく、機甲大祭の件もそうだ。そのため、セシリアはクロウに並ぶほどの恒常的な抑止力が欲しいと思い、こうしてベルアルに頼めないか話をしているという。
「うーん、気分が良くない話かもしれないけど、効率の良い抑止力なら1つ案があるよ」
「それって?」
「衛星管理・監視システムかな」
今のクロウの技術力をもってすれば、3つほどの衛星管理監視兵器を打ち上げるだけで、王国全土の管理監視ができる。
「うーん、非常に効率的な提案だけど、それはそれで反発が凄そうだから、とりあえず保留しておきましょうか」
その後も3人はいくつか他の案を提案したが、やはり現在の情勢に合わず、やむなく保留する事にした。その結果、最終的に決定した案は、クロウを在校生兼名誉教授として永久に学園に在籍をする事にした。
「名誉教授.....授業はやらんぞ.....」
「あー、まあ何か言われるまで大丈夫だよ、その代わり何か論文かなんかがあれば発表してほしいんだけど」
「エインヘリアル関係の論文と本は全部俺が著者だ」
「そう言えばそうだったわ、いずれ教授の身分を使うとき、それを使いましょう」
話し合いもそろそろ終わりを告げる頃、セシリアは思い出したようにクロウに1つの行事を告げた。
「そうだクロウ、来月から魔法祭が始まるから、良ければ出場してくれる?」
クロウは耳を疑うようにセシリアに聞き返す。
「審判?」
「選手」
「正気?」
魔法祭は機甲大祭とは違い、一切のエインヘリアルの使用を禁じる王国中の魔法使い達のためのお祭り。あらゆる魔法と魔術、それから魔導を行使して競い合う、王国最強の魔王と魔女を決める競技祭でもある。学園に留まらず、一般参加も認められているため、膨大な参加数を誇るこの魔法祭で勝ち得る名誉も非常に価値のあるだと言える。
「五年連続ベルアルが<大魔女>の名称を勝ち取ってるから、彼女は名誉魔女としてもう参加できないけど、クロウはまだ参加したことないし、それはそれで面白そうだからよろしく」
「荒らし認定されないだろうな」
「それはあるわね」
「おい」
「でもクロウ、リリィ達も出場するし、今回の一件でまた危険組織達が動くかもしれないし、貴方にも出場してもらうのが一番良いわ」
「分かったよ、しょうがないな」
「ついでにリリィ達の魔法の指導もお願い。魔導領域の第一開拓者でもある貴方なら信頼できるわ」
「おま、本当の狙いはそれだろ」
セシリアは可愛げに舌を出してウィンクした。
「それと、今回の会場はベルアルの力を借りて魔術世界を構成するつもりだから、全力を出してもいいわよ?」
「魔術世界?<鏡の世界>のような魔法ってこと?」
「そうだ。だからクロウ、お前が全力を出しても問題ない。壊れるのはあくまで作り上げた世界だけで、現実世界には影響を及ぼさない。ただし、<次元切断>のような世界に干渉する魔法は使用しないでくれ」
「がんばる」
クロウは自信無さげにそう言った。
「丁度今日から魔法祭準備期間の1か月、授業も休みだし、リリィ達の魔法訓練よろしくね」
そんなわけで、クロウとリリィ、シャル、フェリス、アリアンナ、タタの魔法修行が始まった。
「第一回、チキチキ、クロウお帰りな魔法祭の為の魔法対戦を始めます!」
「無理矢理過ぎる....」
翌日、ベルアルとセシリアは魔法祭準備のために全国各所を走り回っているようなので、一足先にクロウが<鏡の世界>を構築して早速彼女達と魔法訓練を始めた。
「タイトルはいいんだよタイトルは、問題はみんなの魔法についてだ」
「クロウ、貴様の魔法の腕は知っているが、それはリリィ様を教えられるほどなのか?」
「そうだな....え、みんな俺をどんな奴だと思ってるの?」
「エインヘリアルの凄腕開発者」
「あっ、そうなんだ」
自分ですら忘れそうだったが、本職は魔法使い兼死霊使いである。
「本職は魔法使いだよ、てか前に魔法使いとして戦わなかった?」
「確かにそうだけど、あれはもっとエキシビション的な戦いだったから」
「むむむ....分かった。なら今日は魔法使いとしての腕を見せよう」
クロウは制服ではなく、魔法使いの服に着替える。だが以前のようなおとぎ話の魔法使いのような服ではなく、白銀色の軽鎧とティターニアのマントを羽織っていた。
「本当の魔法使いの恐ろしさをお見せしよう」




