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勘違い魔王のVRMMO征服記  作者: 愛良夜
学園都市ロゼⅡ
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花魁との戦い

クロセルべ繁華街裏、通称裏風俗街にて、派手な服を着て魅惑的に鉄扇を振るう美女と、恐ろしく斬れる刀を振るう女生徒、さらには遠距離から銃撃で援助する味方もいる。そんな2人を相手に、蠱惑的に扇で舞う花魁は一歩も譲らない強さを示していた。


「灼熱弾3連装!発射!」


エインヘリアルの装甲すら安々と溶かせるフェリスの弾丸が、3発連続で発射される。敵の未来軌道まで予測した3発だったが、そんな予測も無意味に、花魁は扇を仰いだ風圧でその弾丸をあらぬ方向へと飛ばした。


「桜花二刀流破鬼の型、兜割り」


地面が凹むほどの踏み込みと共に、上段の構えから一気に振り下ろす。鬼の頭蓋すら1撃で砕くほどの威力を持つ攻撃は、簡単に花魁の鉄扇に軌道を逸らされた。


「気持ち悪い!、まるで触れられない空気と戦ってるみたいだ」

「ほんまお酷い事、気持ち悪いだなんて、差別ですぇ?」

「うるさい!散々人を騙して金をむしり取ったくせに!」


少し離れた場所から、フェリスが言い返す。花魁兵達はさほど強くなく、あっと言う間にシャルとフェリスの2人が片付けたが、問題は筆頭の目の前の女である。鉄扇を振るう彼女は捕まえられない空中の葉っぱのような動きで、相手をしていて非常に厄介。


「全て相手の望んだことです。あっしは強要なんてしてません」

「ふざけた事を」

「ねぇ?お嬢さん?<動かないで>」


唐突にシャルの動きがピタリと止まる。まるで周囲の空間毎固定されたようだ。


「シャル?シャル!どうしたのシャル!」

「<お静かに>」


フェリスは急に声が出なくなった。


「あははは!ミューラン様のこの力、本当に便利!ただ問題は....」


彼女はシャルに近づくと、彼女の身体を弄りだした。


「体が火照ること」

「やめろ!触るな!離れろ!」

「火の精霊!二段階解放!豪火球!」

「おや?」


シャルを弄る手を止め、鉄扇の花魁は一旦距離を取った。


「外したの。光の精霊!四段階解放!聖光の癒し!」


温かい光が空からシャルとフェリスに降り注ぐ。その瞬間、動けないシャルと喋れないフェリスは再び問題なく行動できる事に気が付いた。


「プレイヤーなの」

「あら、そういう貴女もそのようですね」

「シャル、フェリス、ここは私が引き受ける。引いて」

「しかし!」

「大丈夫」


アカリの体内にどんどんと精霊が潜り込む。まるで彼女が精霊を取り込んでいるようだった。


「周囲の生存者の避難を急いで、私、手加減できないかも」


様々な精霊が更にアカリに取り込まれている。彼女が精霊を取り込むたびに、どんどんと彼女のMP量も増えていき、彼女から溢れ出る魔圧がどんどんと色を変えていった。


シャルとフェリスの2人はアカリの実力に驚愕したものの、直ぐに注意に逃げ遅れた人間がいないか確認しに行った。


「第四聖霊解放、シヴァ、凍らせて」


アカリの後ろから腕が6本生えた青肌の女性が優しく息を吹く。その白い吐息は触れた物を全て凍らせ、物陰に隠れた鉄扇の花魁もいつのまにか自分の右足を切り落としていた。


「改めて、私の名前は(だいだい)。花魁衆第(よん)号、<鉄惑の橙>です」

「聞いてない、第三聖霊解放、アグニ、燃やして」


今度は赤く燃え盛る二頭四腕の男が橙のいる方を向いて掌を叩く。その瞬間、橙のいた場所に小規模な爆発が発生した。


「お強い、まるで精霊の化身のようだ」

「そ」


アカリは目を瞑って魔力を練りだした。だが、彼女が練るの魔素ではない、強力な精霊達だ。


「第二獄霊開口、ヨルムンガンド、喰らい尽くせ」


地面を震わすほどの巨大な蛇のような生物がアカリの背後から現れる。アカリは精霊で練った精霊球をヨルムンガンドの口内に放り込むと、それは嬉しそうに飲み込んだ後、その大口を開けて橙の方へ向かって動き出した。


「や、ば」


橙はアカリの召喚した大蛇に飲み込まれる前に、なんとかアイテムを使って逃走したようで、口を閉じたヨルムンガンドはまるで空気を食べたようなそんな不思議そうな顔を浮かべていた。


***


危ない、死ぬところだった。なんとかミューラン様に貰ったこの帰還装置でこの野営地へ撤退できたからよかったものの、後少し遅ければあの蛇に丸呑みにされていた。<流浪の賢者><今代の精霊王><稀代の精霊使い>....まさかランキング上位10名のプレイヤーであるアカリがいるとは。だがまあ1位のアマネが居なかった事は幸いだ。


橙が転移した後、独りでに先ほどまでの戦闘の振り返りを行っていると、背後から巨大な悪魔に睨まれたような恐怖に襲われた。急いで振り返ったが、時すでに遅く、正面から自分の身体にぽっかりと大きな穴が開いた事に気が付いた。だが、時既に遅く、薄れゆく意識の中、霞んだ視線の端で、黒髪赤目の青年の姿を見た。


***


「よくわかんないけど、魔王の元へテレポートする奴は悪い奴なので〇ってしまった。条件反射だ」


クロウは抉り出した心臓握り、そのまま特殊な召喚魔法を使用する。


「生贄召喚:<冥夜叉>」


細身の、腕が4本、頭を2個持つ青い肌の剣士が現れる。上半身は何も纏っていないが、隙の無いその立ち姿からは恐ろしく彼が強い事が見て取れる。


「冥夜叉、周囲の残党処理をお願い、もしかしたら遠くに逃げているかも」


冥夜叉はクロウの言葉を聞くと、一度目を閉じて周囲の音を詳しく聞いた。その後、少し前に歩くと、直ぐに立ち止まって剣を2本抜いた。


「あれ、動かなくなった」


数分後、突如冥夜叉の前に身体の半分を機械に改造した男が現れ、冥夜叉はそんな男が現れたのを確認すると、直ぐに斬りかかった。

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