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勘違い魔王のVRMMO征服記  作者: 愛良夜
諸国動乱編
200/227

瑠果の復讐

「おい、お前、外を見てみろ」

「?どした?いつも通りだろ?」

「いや、見てみろって」

「??、いつも通りの、()()じゃないか?」

「いや、俺達、今日は()()だろ....」


黒い雲が明るい空を覆い尽くす。真っ黒なその黒雲は日の光を完全に遮り、稲妻と暴風を引き連れてきた。


「おい!見ろ!あそこ!人が!」


強力な酸性雨と致命的な轟雷が狭山家の人々を溶かし、焦がし、燃やしていく。黒い影に覆われたその酸雨と轟雷を司る仙人は、まるで塵芥のゴミを見下すように、大きな黒雲で狭山家の全てを覆いつくした。


「第四法則歪曲」


いつか見た尊愛する師匠のように彼女は右手を翳す。そうして彼と同じように彼女も口から世界の原理を捻じ曲げる言葉を発する。


「ごふっ!、魔、魔粒子集合体、出現」


世界のルールを湾曲させるその力の一端を振るうだけで、彼女は尋常じゃない反動を受ける。彼女は収集、生成した丹薬を食べ、無理矢理体を奮い立たせる。


「圧縮開始」


狭山家の人間にも何人か修仙者がいたようだが、瑠果には近づくことすら叶わず、飛び上がってもすぐにその轟雷に打ち落とされた。


(くっ!こんなの圧縮とか無理だろ!?)


あんなに師匠は軽々と圧縮していたのに、自分は20万オブリュウムまでの加圧で限界だ


「火風属性混合!弾け飛べ!<火炎暴風弾>!」


瑠果がそう言った瞬間、圧縮された魔力球は火と風の魔法の相乗効果も相まって、狭山家の広い敷地を全て吹き飛ばすほどの大爆発を引き起こした。空に飛んでいた修仙者も、家の中に隠れていた者も、何もかも1つも残らず吹き飛んだ。


そうして瑠果は狭山家が跡形もなく消し飛んだのを確認すると、空に手を振りかざし、その酸雨と轟雷を消滅させた。その後、遠くから騒動を見ていた他の民衆の目も気にせず、遠くへと飛んで行った。


<酸轟雷雨真君>


彼女の使った能力と同じ、彼女も他の人々からその名前で呼ばれるようになり、ある人は彼女を恐れ、ある人は彼女を恨むようになった。


***


「瑠果、元気かな~」

「静かになったねここも」


無明が現れてから、同じく涼もやってきた。そうして2人で無明と金の調査結果を聞いてみる。


「楓瑠果、この世界土着の薬師、楓製薬の楓家の次女にして、過去の大事件の1つである楓家謀反疑惑の件の生き残りでもある。外からやってきた狭山家本家が転住するために、土着の同社をいくつか濡れ衣で潰した。そのうち、最も悲惨だったのが楓家だ。こっちの国の国王に謀反の疑いを捏造され、一族諸共奴隷送りか打ち首、なんとか隠れていた瑠果だけが生き残れたようだ」

「そうか....」

「多分今、瑠果ちゃんは同じく外の世界にいた楓家の生き残りを招集して、復讐しようとしていると思うよ。ほら、早速狭山家の分家が一つ壊滅したし」


涼は今日の朝刊を持ってくる。一面全て狭山分家壊滅の記事で埋まっていた。


「おお、やるやん」

「嬉しそうだね師匠、良いの?狭山家は宇国本国にも伝手があるんだよ?」

「別に良いよ?」


クロウは特に怯える事も引き下がる事もなく、淡々とそう述べた。


「そうだった、師匠は....まあいいか」

「そうだ、お前ら、飯食っていくか?」

「ありがたいけど師匠、今日は渡劫の日だから戻るよ」

「同じく」

「マジかお前ら!大丈夫か?手伝うか?」

「いや、大丈夫、ここまで来たんだ、最後まで自力で頑張るよ」


無明も心なしか黒い影が頷いた気がする。


「そうか、じゃあ、お前らにこれやる」

「これは?」

「本劫避雷符、生半可な劫雷も受け止められるはず、一応な」

「感謝します、師匠」


クロウは2人を見送った後、傍にいる犬を撫でて遠くを見る。


「行っちゃったか」


一言だけそう漏らすと、クロウはいつものように、静かな自宅で1人前の食事を作り出した。


***


「ひれ伏せ!」

「こ、こと、わる!」


血塗れの瑠果が狭山家本家の広場で、己の折れた剣を支えに、必死に立ち上がろうとしている。周囲には彼女と同格の修仙者が様々な仙器(仙人の使うさまざまな武器)を彼女に向けている。


「ならば狭山家当主の名を持って命ずる!楓最後の生き残りを始末しろ!」


(楓家の生き残りも、何もかもつぎ込んだのに、ダメだったよ.....ごめん、みんな)


「招雷!」

「ぐわああああああ!」


晴天の霹靂のごとく、晴れた空から雷が瑠果を直撃する。それは彼女の残った最後の気力の力を奪った。


「し、しょ.....ご、ごめ....ん...なさ....い」


彼女はそのまま力なく倒れこむ。狭山家の当主もそれを見て、ふんっ!とだけ鼻を鳴らすと、部下に死体を豚に食わせるように言い、自分は奥の部屋へと戻っていった。狭山家の凡人達はそそくさと武器をしまい、残った楓家の死体を片付けようとしていたが、ぶるぶると震えだす他の修仙者や、何かに怯えて腰を抜かす修仙者を見て、動きを止めて彼ら彼女らと同じ方向を見た....



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